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第37話「アルガス考える」
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「あー、だりぃ……」
シーリンと会話しているとドッと疲れた。
それにリズの無事が確認できたことも、かなり心にズシンときた。
安心からくる虚脱感だ。
「………………リズ」
そのまま、防具を脱ぐとパンイチになりベッドに身を投げる。
ドサリと、身体がベッドに沈みこむ。
清掃が入ったのか、シーツが新品に交換されており気持ちいい香りがする。
よっこらせ。
「ふぅ…………」
枕元の水差しを手に、よく冷えた水を一杯飲むと思考が少しクリアになった。
───まず冷静に考えよう。
色々一度に起こりすぎて、情報過多だ。
一つ一つ整理する。
まずは、
一つ……。
リズの手紙の違和感。
冒険者のイロハとして、教えたはずの手紙の書き方ではない。
あれは、ほとんど目的しか書いていない。
紙の余白がないというなら、わからなくもないが、いくらでも書くスペースはある。
ならば手紙で連絡をする以上、もっと必要事項は書けるはずだ。
だがそれをしていない。
筆跡にも乱れはないので、急いで書き殴ったわけでもなさそうだ。
つまり……………………。あれは、リズの物ではない可能性がある。
例えば、手先の器用なものなら筆跡を真似することも可能だろう。
一つ……。
シーリンを雇ったのが、ジェイスだという事。
ジェイスの野郎が、アルガスを気にして手紙を届けるために、ワザワザ金を出して人を雇う?
………………………………絶対あり得ないだろう?!
むしろ、ジェイスの野郎なら、リズを我がものとするために是が非でもアルガスの存在を秘匿するに違いない。
リズだって、そのことを知られなければアルガスの後を追いようがない。
ゆえに無茶苦茶あやしい。
一つ……。
何が目的でそんなことをするのか。
ジェイスがアルガスの生存を知るのは、そう難しくないだろう。
どこかのギルドに着いて、ベームスの話を収集すればすぐにわかることだ。
軍団の殲滅なんて、珍事以外の何物でもない。
そこに、わざわざ居場所を知るシーリンが来たのはなぜか。
ジェイスが、アルガスとリズを引き離したいと考えているなら、そもそもコンタクトをする意味がない。
知らぬ存ぜぬで、遠くに行き、密かに刺客を送り込めばいいだけのこと。
もちろん、シーリンが嘘をついている可能性もある。
彼女の言う、リリムダの街で出会ったというのは嘘かもしれない。
だが、それにしては違和感もある。
筆跡は間違いなくリズのものだ。
本当に手紙を受け取るにしても、あるいは偽造するなりにしても、どこかでジェイス達と合流しなければ、あの手紙の存在はないのだ。
「うーむ…………。───ならばなんのためだ? まるでこの街に拘束したいような雰囲気でも感じるが……それだけにしては、うーむ?」
この街に足留めさせたいなら、わざわざ接触する必要はない。
情報がない以上、アルガスは動けないのだ。その事情を知らなかったにしても、自分から声をかける必要はないだろう。
「シーリンに確かめるしかないな……」
シーリンを雇ったのがジェイスならば、ある程度の事情をシーリンは知っているはずだ。
「それにしても、ミィナの奴───シーリンに自分と似た空気を感じたのだろうか……?
子どもの感性は分からん」
やたらと気が合うらしい、ミィナとシーリン。
食いしん坊なとこや、調子のりなとこがそっくりだ。
何事もなければ、ミィナの友達として付き合えばいいのだろうが……。
どこか怪しいのだ、あのシーリンは。
いずれにしても、彼女は何かを知っている。
そして、それに絡んでジェイスの野郎が何かを企んでいる──それだけは間違いない。
「市長の件といい、シーリンといい。……やっぱり、この街を離れた方がいいかもしれんな」
どうも、キナ臭い。
厄介ごとの匂いがプンプンとするのだ。
こうした気配には敏感になるべきだ。
住民とは違い、アルガスにはこの街にこだわる理由がそれほどない。
むしろ、リズの居場所が分かった以上、一刻も早く離れ彼女の元に向かうべきだろう。
市長に頼る理由もなくなった。
そして、シーリンはジェイスの息がかかっているのは間違いないわけで、そのジェイスがここにアルガスを足留めさせたいと考えている以上───……それに、まんまと乗ってやる理由はなかった。
リズとの一刻もはやい合流。
これが、一番大事なこと。いまさら、市長の提案に乗る義理もない。
───男爵と喧嘩なんて真っ平ごめんだ。
アルガスは冷静に考えに考えて、やはり街を離れようと決意した。
ミィナが戻ってきて一人であやとりをしているのを見ながら、その晩にはシーリンに勘付かれないように、コッソリと荷造りをした。
念のため、ミィナにも言わないようにする。子供の口に門は立てられないからな。
明日はギルドに顔を出して、その足で街を出ようと考えた。万が一リズと入れ違いになることも考えて、伝言くらいは引き受けて貰うつもりだ。
そうと決心すれば、ベテラン冒険者アルガスのこと。
行動は、実に早い。
その後のアルガスはミィナを連れ、飯を食った後は風呂に入って深酒をせずにゆっくりと眠った。
飯と睡眠、これ大事!
「ミィナ、そろそろ寝ろよ」
「はーい♪」
素直に返事をするミィナの頭を撫で、ほっこりとしつつ、アルガスもベッドに潜り込んだ。
フゥ、と蝋燭の火を落とせば、部屋は漆黒の闇に閉ざされ、休息に眠気が訪れた。
「ふぁぁぁふ……むにゃ、アルガスさぁん」
モゾモゾ……。
相変わらず寝静まった後に、ミィナが猫のようにアルガスの上で丸くなって眠るものだから、寝苦しかったものの夢も見ることなく深い眠りに落ちた。
「うぐぐ…………腹が───重い」
むにゃむにゃ。
リズ、必ず迎えに行くからな……。
おやすみ、ぐー……──────。
グッスリと眠る二人──────……。
その様子を、耳をすませて窺う者がいるとも知らずに……。
シーリンと会話しているとドッと疲れた。
それにリズの無事が確認できたことも、かなり心にズシンときた。
安心からくる虚脱感だ。
「………………リズ」
そのまま、防具を脱ぐとパンイチになりベッドに身を投げる。
ドサリと、身体がベッドに沈みこむ。
清掃が入ったのか、シーツが新品に交換されており気持ちいい香りがする。
よっこらせ。
「ふぅ…………」
枕元の水差しを手に、よく冷えた水を一杯飲むと思考が少しクリアになった。
───まず冷静に考えよう。
色々一度に起こりすぎて、情報過多だ。
一つ一つ整理する。
まずは、
一つ……。
リズの手紙の違和感。
冒険者のイロハとして、教えたはずの手紙の書き方ではない。
あれは、ほとんど目的しか書いていない。
紙の余白がないというなら、わからなくもないが、いくらでも書くスペースはある。
ならば手紙で連絡をする以上、もっと必要事項は書けるはずだ。
だがそれをしていない。
筆跡にも乱れはないので、急いで書き殴ったわけでもなさそうだ。
つまり……………………。あれは、リズの物ではない可能性がある。
例えば、手先の器用なものなら筆跡を真似することも可能だろう。
一つ……。
シーリンを雇ったのが、ジェイスだという事。
ジェイスの野郎が、アルガスを気にして手紙を届けるために、ワザワザ金を出して人を雇う?
………………………………絶対あり得ないだろう?!
むしろ、ジェイスの野郎なら、リズを我がものとするために是が非でもアルガスの存在を秘匿するに違いない。
リズだって、そのことを知られなければアルガスの後を追いようがない。
ゆえに無茶苦茶あやしい。
一つ……。
何が目的でそんなことをするのか。
ジェイスがアルガスの生存を知るのは、そう難しくないだろう。
どこかのギルドに着いて、ベームスの話を収集すればすぐにわかることだ。
軍団の殲滅なんて、珍事以外の何物でもない。
そこに、わざわざ居場所を知るシーリンが来たのはなぜか。
ジェイスが、アルガスとリズを引き離したいと考えているなら、そもそもコンタクトをする意味がない。
知らぬ存ぜぬで、遠くに行き、密かに刺客を送り込めばいいだけのこと。
もちろん、シーリンが嘘をついている可能性もある。
彼女の言う、リリムダの街で出会ったというのは嘘かもしれない。
だが、それにしては違和感もある。
筆跡は間違いなくリズのものだ。
本当に手紙を受け取るにしても、あるいは偽造するなりにしても、どこかでジェイス達と合流しなければ、あの手紙の存在はないのだ。
「うーむ…………。───ならばなんのためだ? まるでこの街に拘束したいような雰囲気でも感じるが……それだけにしては、うーむ?」
この街に足留めさせたいなら、わざわざ接触する必要はない。
情報がない以上、アルガスは動けないのだ。その事情を知らなかったにしても、自分から声をかける必要はないだろう。
「シーリンに確かめるしかないな……」
シーリンを雇ったのがジェイスならば、ある程度の事情をシーリンは知っているはずだ。
「それにしても、ミィナの奴───シーリンに自分と似た空気を感じたのだろうか……?
子どもの感性は分からん」
やたらと気が合うらしい、ミィナとシーリン。
食いしん坊なとこや、調子のりなとこがそっくりだ。
何事もなければ、ミィナの友達として付き合えばいいのだろうが……。
どこか怪しいのだ、あのシーリンは。
いずれにしても、彼女は何かを知っている。
そして、それに絡んでジェイスの野郎が何かを企んでいる──それだけは間違いない。
「市長の件といい、シーリンといい。……やっぱり、この街を離れた方がいいかもしれんな」
どうも、キナ臭い。
厄介ごとの匂いがプンプンとするのだ。
こうした気配には敏感になるべきだ。
住民とは違い、アルガスにはこの街にこだわる理由がそれほどない。
むしろ、リズの居場所が分かった以上、一刻も早く離れ彼女の元に向かうべきだろう。
市長に頼る理由もなくなった。
そして、シーリンはジェイスの息がかかっているのは間違いないわけで、そのジェイスがここにアルガスを足留めさせたいと考えている以上───……それに、まんまと乗ってやる理由はなかった。
リズとの一刻もはやい合流。
これが、一番大事なこと。いまさら、市長の提案に乗る義理もない。
───男爵と喧嘩なんて真っ平ごめんだ。
アルガスは冷静に考えに考えて、やはり街を離れようと決意した。
ミィナが戻ってきて一人であやとりをしているのを見ながら、その晩にはシーリンに勘付かれないように、コッソリと荷造りをした。
念のため、ミィナにも言わないようにする。子供の口に門は立てられないからな。
明日はギルドに顔を出して、その足で街を出ようと考えた。万が一リズと入れ違いになることも考えて、伝言くらいは引き受けて貰うつもりだ。
そうと決心すれば、ベテラン冒険者アルガスのこと。
行動は、実に早い。
その後のアルガスはミィナを連れ、飯を食った後は風呂に入って深酒をせずにゆっくりと眠った。
飯と睡眠、これ大事!
「ミィナ、そろそろ寝ろよ」
「はーい♪」
素直に返事をするミィナの頭を撫で、ほっこりとしつつ、アルガスもベッドに潜り込んだ。
フゥ、と蝋燭の火を落とせば、部屋は漆黒の闇に閉ざされ、休息に眠気が訪れた。
「ふぁぁぁふ……むにゃ、アルガスさぁん」
モゾモゾ……。
相変わらず寝静まった後に、ミィナが猫のようにアルガスの上で丸くなって眠るものだから、寝苦しかったものの夢も見ることなく深い眠りに落ちた。
「うぐぐ…………腹が───重い」
むにゃむにゃ。
リズ、必ず迎えに行くからな……。
おやすみ、ぐー……──────。
グッスリと眠る二人──────……。
その様子を、耳をすませて窺う者がいるとも知らずに……。
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