のろま『タンク』と言われ馬鹿にされた「重戦士」───防御力をMAXにしたら「重戦車」(ティーガーⅠ)に進化した

LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定

文字の大きさ
52 / 53

第44話「俺に突っ込めぇぇええ!」

しおりを挟む
 ドゥン………………!!

 ここで初めて、九七式中戦車の主砲が火を噴いた!
 ティーガーの様な、長大な砲身が突き出し敵を睨み付けているわけではないが、それでも57mm!!
 砲塔から、申し訳程度に突き出した砲身かれ飛び出た榴弾が男爵軍をぶっ飛ばす!

「ぎゃあああ!!」
「ひ、火を噴きやがった!!」

 ドカーーーン!! と隊列中央で爆発する砲弾!

「「「ぎゃあああああ!!」」」

 爆発に巻き上がる男爵軍!

『行けるぞッ! ミィナ、再装填だ! 急げッ!』

「う、うん! えっと、うーーーんと、」

 あ、そ、そうか!
 ミィナはこの戦車自体初めてだ。
 そのままでは勝手がわからないのだろう。

『───予備の弾は砲塔後部と足元に砲弾が積載されている。取り出しやすい奴を選べ───あ、榴弾だぞ?! 先端が盛り上がって金色のやつだ!』

「あうあう…………こ、これかな?」

 ギッシリと詰め込まれた砲弾の装填は容易ではないらしい。
 およそ人間の使い勝手を考慮されていないそれは、ミィナには大変作業だったようす。
 砲弾は軽いはずなのに、彼女は汗でびっしょりになっている。

 車内にはミィナの匂いがムワリと充満していた。

「ふぅふぅ…………、そ、装填はどうやるの?!」

『閉塞器の傍にレバーがある! それを勢いよく倒せ! 薬莢が転がり落ちるから、触るなよ!』

 発射直後の薬莢は、無茶苦茶熱いのだ。

「う。うん!!」

 ───カシンッッ!!

 小さなで一生懸命閉塞器開放レバーを下げると、砲塔後部から撃ち殻薬莢が転がり落ち、車内に落ちる。

 カランカラーーン!

 コイツの整頓はあとだ。

『よし、砲塔後部のガイドレールに砲弾を乗せろ! そう、そこだ───』

 ミィナが慎重に57mm榴弾を装填している。
 こいつは250gの炸薬を装填した九〇式榴弾。
 爆発に特化した砲弾で、男爵軍のあらゆる兵科を撃ち砕けるだろう。

「中にいれるよッ!!」
『入れろぉぉぉおお!!』

 俺の穴に突っ込むんだ!!

「えーーーい!!」

 ガシャン!!

『ミィナ!! しっかり奥まで入っていないぞ! コイツは締まりが悪くなるぞ?!』
 ───閉塞器のね?!
「ええ? あ、締まりが悪いよぉぉおお!」

 発砲直後のため、煤がこびりついているのだろう。

 本来なら腕力で押し込めるのだが、ミィナにそれを望むのは酷だ。

 チハは、ティーガーⅠと違ってこの辺の作りが甘い……甘すぎる!!

『もっと、押し込め!! ガンガンに突けぇぇぇえ』

 俺の穴にねじ込めぇぇぇええ!
 グリグリとかき回せぇぇえ!!

「えーーーーーーい!!」

 グリグリとミィナにかき回される感覚!

 ようやく、砲弾が全て装填しきると、
『これで締まるはずだ!! 締まり具合を確かめろ、ミィナ!』

「了解♪」

 ガキン!! と閉塞器のレバーを押し上げると、今度はしっかりと閉塞できた!

「締まった! 締まりがいいよ、アルガスさん!」
『よくやった!! 今の感覚を覚えておけ──────ここからは、連射するぞ!!』

 ドゥン!!

 ドカーーーーーーン!!
「「「ぎゃあああ!!」」」

『再装填ッ』
「はーい♪」

 ドゥン!!

 ドカーーーーーーン!!
「「あぎゃぁぁぁあ!!」」

『再装填ッ!』
「うん♪」

 ドゥン!!

 ドカーーーーーーン!!
「あーーーれーーーー!!」



 ん……?

 男爵軍の様子が……!?

「魔法使いめ……! 総員、対魔法戦闘容易ッ!! 固まるな、散れッ!」

 先ほどまで、いい様に撃たれまくっていた男爵軍だが、ここで隊形変換。
 アルガスの砲撃を魔法と認識して、対魔法戦に移るらしい。

 こ、これは、まずい!!

「密集するな! 良い的だぞ! 奴は正面にしか攻撃できんらしい」

 ち……!

 さすがに、主砲だけではこけおどしにしかならんか!

『ならば機銃で───!』

 男爵はそれなりに優秀なのだろう。
 多数の遺棄死体の中、騎馬を巧みに操りアルガスの射線から逃れつつ兵を指揮していた。
 
 練度の高い男爵軍は、すぐに男爵の意を酌んで密集隊形から散兵戦術に切り替える。
 個々の動きが重視され、衝撃力と防御力に欠けるが、被害を局限できる陣形だ。

 もしアルガスに兵力があれば、その隙に蹂躙できるのだが、アルガスにあるのは中戦車一両のみ!!

 しかも────……。

『な?! ち、チハの機銃は、ど、同軸機銃じゃないのか? な、なんでこの戦車、機関銃が砲塔の後についているんだよ?!』

 主砲発射の遅れを補うため機関銃で薙ぎ払ってやろうと思ったが、なぜか九七式中戦車の機関銃は後方についている。

 これでは前方が狙えない!
 やばい、主砲の代わり足りえないぞ?!

『く、くそ!!』

 だが、男爵軍はアルガスを包囲している。
 後方に撃っても当たるはず!!

 ダラララララ!
 ダララララララララララ!!

 主砲で男爵軍を蹴散らしつつも、後部の車載機関銃を撃ちまくる。

 しかし、意識が前と後ろに分散され、タダでさえ悪くなっている命中率がドンドン下がる、その上────!!

 ダラララ…………カシャン!!!

『た、弾切れ?! こ、この機関銃どうなってんだよ?!』
しおりを挟む
感想 184

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...