23 / 39

第22話「ジャンピング土下座」

しおりを挟む
 おうおうおうおう……!
 忘れてんじゃねーぞぉぉぉお……。

「……言ったよな、ジャンプして、フライング土下座するって──」
「ちょ! な、なにを?!」

 Sランクのボフォートは賢者王という魔法準拠の冒険者であるが、ランクからしてDランクに力で負けるはずがない。

 ましてや、痛みを感じるほど、筋力も耐久力も負けるはずがないのに──。
(……なんでぇ?! なんで、カスのレイルごときにぃぃい!!)

「──報酬がどうのとか、宿がどうのとか、以前によぉぉぉぉおおおおおお!!」

 ギリギリギリ……!!

「ちょっと、イタイイタイ! 離せッッ、離せ……って、なんでテーブルに私を引っ張り上げるんです? ちょ、ちょっとぉぉお」

 呆気にとられるロード達の目の前で、ボフォートを引きずり回すと、テーブルに上にドカッと飛び上がるレイル!
 その腕にはボフォートが吊り下げられており、先日のレベルアップの結果をいかんとも発揮!!

(なんでテーブルの上に引っ張り上げるのかって?)
 そんなもんなぁぁぁぁ……。

「───決まってるだろうがぁぁぁああああ!!」
 ぐわし────!

「あべべッ! 痛い痛い! か、かかか、顔を掴まないでくださいッ」

 抗議を完全に無視して、顔面をグワシをひっつかむとテーブルの上から華麗にジャンプ!!

 すぅぅぅ……!

「テメェらはよぉぉぉおおお!───つべこべ言ってないで、まずは、謝・罪・を・し・ろ・や、このくそボケどもがぁっぁあああああああ!!」


 あ、そーーーーれ、ハイジャンプ!!

 かーーらーーーのぉぉぉおおお!!


「ちょぉぉおおおおおおお! 何でジャンプしてるんですかーーーーー!」

 あ?
 お前が言ったんだろ??

「………………フライング土下座で謝るって言ったのは、」
 テメェえええええだろうがぁぁあああああ!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」

 Sランク。
 極大魔法を使いこなす賢者王の絶叫!!

 そいつを聞き流しながら、テーブルの上から華麗なジャンプを決めつつ、レイルは叫ぶッッ!!

「────フライング土下座ってのはよぉぉぉぉおおおおおおお!!」
「ちょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお???!!!」

 フワリと浮遊感を覚えたボフォートの困惑の声などどこ吹く風。

「こーーーーーーーーーーーーやるんだぁぁぁああああああああ!!」

 や、
「やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 クルン、と空中で反転し、レイルとボフォースの上下が変わる。
 その向かう先はと言えば……。

「ひぃ! ボフォートぉ!?」
「や、やべぇ、顔面からいくぞ、あれは──」
「み、見てないで助けなさいよ!!」

 ごもっとも……。
 だけど────。

「あーこれは、無理。因果応報…………」

 げんなりした顔のフラウ。
 彼女だけはロード達と一線を引いているだけに、助ける素振りすらない。

 そして、
 Sランクパーティの目の前かつ、ギルド中が見守る中で、

「───顔面を床こすり付けりて謝罪しろボケぇっぇええええええええええええええ!!」
「やめぇぇぇえあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、べしぃぃい!!」


 ブッふぅぅうううううう! と、呼気の抜ける音。


 そして、ドッカーーーーーーン!! とギルドの床が抜けて、ボフォートのそこそこ高い耐久力が床板を貫く。

 メリメリと念入りに顔面を埋没。
 さらに、後頭部を掴んでグリグリと。

「おらぁ!!」

 ──パラパラ……。

 木くず舞う中、ボフォートの顔面がレイルによって引き出される。

「ひぃひぃ……あぶぶぶぶぶぶ……」
 血の泡を吹くボフォート。

 だが、これで終わりではない。
 終わりなものかよ──……。

 さらに、

「次は、ジャンプして、ヘッドスライングで土下座つったよな!!」

 だったら、わ

 ───ヘッドスライディングじゃぁぁああ!

「盛大に滑ってみせろやぁぁぁああ!!!」
「ちょぉぉおおおお!! あべべべべべべべべべべべべべ!!」

 ──ガリガリガリガリ!!!

 まずは、ヘッドからぁ!!!

「うッッらぁっぁあ!!」
 がっつん!!

 両足を掴んで箒で地面をはくようにボフォートを!
「うべらぁッ?!」

 その後で、顔面を床にぶち当てながらボフォートを鼻血におぼれさせつつ、

「ひででででででででででででででででででででででで! し、し、しむぅ……」

 これくらいで死ぬかボケ!!

 ジャンプおーけー
 土下座おーけー
 ヘッドおーけー
 
「じゃあ、あとはぁぁぁああああ!」

 残るはヘッドでスライング!!

 だから、トドメに勢いをてけてのぉぉぉおお……!
「あだだだだだ! やめろぉぉぉおおおおお!!」

 やるっつったのはテメェらだろうが!
 あ、そーーーーれぇぇええええ!

「────スライディングで、フィニィィィイイイシュ!!」

 おらぁぁぁああ!

「ひぎゃあああああ!────あべらばればぁぁぁああああ!!」

 まるで大根おろし。
 そのまま、ゴリゴリゴリ!! と───。



「ぎゃあああああああああああああ!! 禿げる禿げる禿げるぅぅうううううううう!!!」

 地面に血痕を残して壁際までぶっ飛ばされるボフォート。
 何度も何度もバウンドしながら、物凄い悲鳴を上げる!

 はっはっは!
 地面と熱いワルツでも踊れ、賢者ボフォーーーーーーーート!!

 そのまま、ボール玉のように転がり、

 ──バッコォッォォォオオオオオン!!
「あべしッッッッ」

 グワンゴワン……!
 ギルド中が小揺るぎするかのような勢いで壁と床にめり込んだボフォート。

 パンパンと手を払いつつ、
「ほぉら、これでジャンピング土下座完成だ。残りは誰がやる?」

 ギロリと、ロード達を睨むレイル。
 その足元ではボフォートが完全に目を回している。

 鼻血まみれで、若干が剥げているが、まぁ……命に別状はないはず。 

「て、てめぇ……」
 しかし、さすがにこれには気色ばむロード。

 ただでさえギルド中の視線に耐え切れず逃げ去ろうとしたところに、これだ。

 Dランクのレイルに、Sランクがいいようにやられたのでは沽券にかかわること──。
 そうでなくとも、レイルのおかげで犯罪者の汚名を着せられそうになっている。

「おい、ロード。俺ぁ、キレそうだぜぇ」
「おう、ラ・タンク奇遇だな──俺も同感だ」

 『放浪者』の前衛二人がユラリと態勢を変える。
 雰囲気も余所よそ行きのそれではなく、戦闘時の野蛮な雰囲気。

 急激にレベルが上がったとはいえ、所詮Dランクに過ぎないレイルにこの二人の相手は分が悪いだろう。
 レイルには何か考えがあるというのか──……。

「ふん。いいぜ掛かって来いよ。策は一昨日・・・考えてくるさ」
「はぁ? 何を言ってんだこの野郎」
「構うな、殺さなければ何とでも言い訳が付く──行くぞ!」

 サッと抜刀の構えを見せる二人に、レイルも腰を落として身構える。
 だが、舐めるなよ──……。何の策もなくノコノコ顔を出したと思っているのか?

 レイルには特殊なスキルがあり、
 それを使えば────……。


「……スキル『一昨──」




「おい! 何の騒ぎだこれは────!!」




 バァン!! と、ギルドの正面扉を大きく開けて闖入者がこの場に割り込んだ──……。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...