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#50 新たなる敵
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疾走する裸馬の背中から振り落とされないようにするのは思いのほか大変だ。
鹿の王様のお背中に乗せていただいたときも鞍なしだったけど、今よりももっとスピードが出ていたのに抜群の安定感だった。
こりゃ裸馬の背中から振り落とされないための魔法があってもいいんじゃないかってくらい。
情けないくらいに必死にルブルムの背中にしがみついているが、馬が揺れるたびに互いの革鎧同士がゴツゴツとぶつかり合い、その反動もまた俺の体を浮かそうとする。
ケティを連れ去った馬を追っているというのに――ケティ、足手まといはケティじゃない。俺だよ。
そんなんだから距離をなかなか詰められない。
「ありゃ馬の速度あげる何か使ってんなぁ!」
俺たちの先頭を走るメリアンが声を上げる。
ああ、そういうのもあるのか。
それだけじゃない。近づいてきたとき片方だけは『死んだふり』とは違うアプローチの寿命の渦を消す魔法を使っていたっぽいし、馬の速度の異常さもそうだし、だいいちルブルムに首を刺し貫かれて確実に死んでいたはずのあの爬虫種が今、ケティをさらって馬を駆っている事実。
敵には確実に魔術師が居る。
いや、だとしても、俺がケティから目を離したりしなければこんなことにはならなかった。
どうしてケティを一人きりにした?
死体の検分に付き合わせないにしても、マドハトを護衛につけるとか、せめて俺たちの視界の範囲で目を閉じていてもらうとか、いくらでもやりようはあっただろうに。
魔法がある世界で、起こり得る事態に対する俺の構えがまるでなっていない。
想定が甘すぎる。
「動物の速度を上げる魔法は知っているが、いきなり使ってはいけないとカエルレウム様に言われている」
ルブルムが突然、そんなことを言い出した。
「体の動きが突然変わると、その差異に思考がついていかず、かえって転んだりしてしまうと聞いた。信頼関係を結んだ動物と、まずは歩くところから徐々に慣らしていって、走るときに使用できるのはその後だと聞いた……私がその魔法を使わないのは、そういう理由からだ。リテルの大事なケティを追いかけたくないわけじゃないと知っていてほしい」
「わかった。ルブルム、ありがとう」
いつものルブルムらしくない言い方に引っかかりはしたが、言われてみれば身体強化系魔法の注意点には納得感がある。
そしてもう一つ。
後悔も反省も、少なくとも今することじゃない。
ダメだな、俺は。
優先順位も考えておかないとだ。
突発的に起きたことへ囚われて、思考が足踏みしてしまっていた。
理解していてもその通りにはできないこと、何度も失敗してしまうこと、そういうことを乗り越えて、糧にして、未来ではちゃんと想定しきって、対応もしきって、それでも想定外のことが起きると構えておいて、何か起きる度に優先順位を決め直して――俺はもっと柔軟にならないと。
「やっぱ魔法だったか! そんで時間切れだな!」
メリアンの声が聞こえる。
ルブルムの背中越しに前方を見ると、確かに目に見えて馬の速度が落ちている。
これなら追いつけそうだ。
「いや、警戒しろ。罠かもしれない」
メリアンの言葉の理由はすぐにわかった。
小道の先が開けているからだ。
ここからじゃまだ全容はつかめないが、広場のようになっているっぽい。
入った途端に四方八方から一斉射撃というオチだって考えられる。
メリアンが馬を近付けてきて小剣を抜く。
マドハトの乗っている馬とエルーシやノバディを縛り上げた塊とを繋ぐ部分を切り、小剣を鞘へ収めると、エルーシとノバディとを結びつけた部分をつかんでひょいと担いだ。
今気付いたけど、エルーシとノバディを繋いである場所は一箇所だけ。馬に繋いでいた場所も一箇所だけ。
いざってときにその一箇所を切れば簡単に分離できるようにしていたのか。
しかも今その繋いだ部分を肩にかけて、前面にノバディ、背面にエルーシをまるで盾代わりかのようにぶら下げている。
なんというか、すげぇ。
「まずあたしが突っ込む。あんたらは様子見てから来な」
「わかった」
その返事を聞かずにメリアンが馬を加速させる。
一方、ケティをさらった馬の方は、広場っぽい場所へと入ってゆく。さらに速度を落としたかと思うと、広場の中央で馬は止まり、くるっとこちら向きに反転した。
「ルブルム、マドハト、止まれ!」
ケティは馬の背に、荷物のように無造作に俯せに横たえられている。
さっきは会話できるくらいまでに回復していたのに、今は動く気配がない。
ブレドアが持っていたあの麻痺毒を爬虫種も隠し持っていたのか?
そして反転したということは、迎撃の準備ができたということか?
しかしメリアンは馬の速度を緩めずに宣言通り突っ込んでゆく。
そればかりかマドハトまで。
「リテルさま! 馬の止め方わからないです!」
マドハトの叫びを聞いたルブルムは、一度は緩めかけた馬の速度を再び早める。
ちょうどそのとき、馬上の爬虫種がゆっくりとケティの背中へと覆い被さった。
おい俺、ケティのことを忘れていたのか?
どうして俺は止まれなんて言ったんだ。
反撃を恐れて一瞬でもケティを見捨てようとしたのか?
「ケティィィッ!」
また――また俺はケティを。
全身に鳥肌が立つのを感じる。
冷たい。手が、冷たい。血の気が引いているのか。
なぜ俺は今ここにいて、あそこに居ないのか。
どうして俺はケティを二度も――思考が空回りする。
涙に滲みかけた俺の視界に赤い血飛沫が舞った。
血飛沫だけじゃなかった。
あの爬虫種の体も宙を――メリアンが、ケティたちの乗った馬のすぐ横を駆け抜けながら爬虫種にラリアットを炸裂させたのだった。
自分の未熟さがもどかしい。
俺はこの期に及んでまた思考を放棄していた――ほらこれだ。
この後悔は、今することじゃないだろ。
「ルブルム、ケティの居る馬のすぐ横に」
「わかった」
「マドハト、矢に注意!」
「はいです!」
俺は手斧を鞘から出し、右手でルブルムの頭部を覆うように構える。
せめてもの矢避けになればと。
『魔力探知機』で広場周囲の森に隠れていると思われる敵の数を確認する。
広場の向こう側へ小道が抜けているのだが、その両側、視界が通らない茂みの奥にバラけて二人居る――両方とも爬虫種。
それを伝えるまでもなく矢が二本、それぞれ探知した場所からメリアンめがけて飛んでゆくが、一本は盾で弾き、もう一本はノバディの死体で受け止めるメリアンの凄さよ。
メリアンは速度を緩めずそのうちの一人、左側の方へと突っ走る。
そのとき、ようやく俺たちも広場へと入った。
『魔力探知機』を『魔力感知』へと切り替え、寿命の渦だけじゃなく、『死んだふり』や「何もない反応を返す違和感」をも含め、念入りに探知――矢が来た――のを避けようとしたのか、ルブルムが馬を跳ねさせた。
必死にルブルムへとしがみつく。
右の方、野放しだからな――いや、移動もしている。場所を変えながら射ってくる気か。
だとしたら今のうちに。
ちょうどルブルムがケティの馬のすぐ近くへとつけてくれて、俺はケティの居る馬の鐙へと片足をかける。
一発で乗り移れる。
道具って偉大だ――また矢だ。
とっさにケティの体に覆いかぶさるが、矢はうまく反れてくれたようだった。
手斧は常に構えておこう。
その間にメリアンは馬を飛び降り、奥の茂みの中へ徒歩で突撃していた。
右の爬虫種がメリアン側に向かって走って移動するのがわかる。
加勢か、それとも奥の道へと撤退か?
となると俺たちが取るべき行動は――まずケティの様子を見る。
目は虚ろ――エルーシと同じ症状っぽい。
よく見れば二の腕に針のようなものが刺さっている。
慌てて抜いて――血を吸い出して吐く。
舌がピリつく。
針の持ち手部分が、鞍の装飾と形が似ていて、調べてみると鞍の一部に凹みがあった。
ちょうどその針と持ち手とがぴったりハマるくらいの――鞍に武器を隠されている想定が漏れていたのか――待てよ。
鞍の凹みがあるのは右側。それと真逆の左側、同じ辺り――やっぱり動く!
慎重にそれを引き抜くと――右側と同じ形状の針。
武器ばっかだな。解毒剤じゃないのかよ。
「トシテル!」
ルブルムの声に反射的に手斧で防御姿勢を取る――その手に、ぐっと強い衝撃を覚えた。
運が良かった。
飛んできた矢を運良く弾けたみたい。
ありがたい。
とにかくケティを助けるためにはこの麻痺毒の解毒剤が必要だ。
きっと野盗が持っているはず。
となると退く選択肢はない。
ルブルムは、マドハトの方へと馬を寄せている。
鞍にしがみついたままのマドハトを乗せている馬は広場の中を好き勝手に走り回っている。
この円形の広場はバスケットコートがすっぽり収まるくらいの広さ。
ここに控えている野盗は二人だけ?
なら奥の小道の先が野盗のアジト?
そうこうしているうちに今、左側の野盗の寿命の渦が千切れて消えた。
もう一人はまた移動している――立ち止まったら弓を警戒しよう。
あとは――とりあえず馬の手綱を手に取る。
そのタイミングで鋭い口笛の音が響いた。
俺たちの乗っている馬が前足を高く上げていななく――手綱を握っていなければ今ので振り落とされていた。
いや、ケティの体がずるりと落ちかかる――もう二度と、ケティに傷をつけるわけには。
落ちかけたケティの体を両手でつかむとぎゅっと抱きしめ、鐙から足を放し、突然暴れだした馬から飛び降りた。
背中から地面へと落ちる。
体を丸めていたおかげで、後頭部は打たずに済んだようだし、ケティもなんとか――『脳内モルヒネ』。
背中の痛みを散らして起き上がり、寿命の渦を感じない茂みの方へと移動する。
思考と確認と回避とは交互に行おう。
ここは今、戦場だから。
寿命の渦が走り去ろうとしている――野盗の最後の一人の爬虫種が、奥の小道の方へ。
俺たちを振り落とした馬もそっちの方向へ走り出す。
そういや魔法をかけられていたんだっけこの馬は――ルブルムがさっき言ってたじゃないか。身体強化系の魔法がかかっていたということは、何度も魔法をかけて慣らされていた、信頼関係を結んだ馬だったということ。
「ト……リテル、大丈夫か」
ルブルムがこちらの方へ。
マドハトを乗せた馬はまだ勝手気ままに走り回っている。こっちを優先してくれたのか。
メリアンが爬虫種の死体を一つ抱えて茂みから出てきたときにはもう、俺たちを振り落とした馬は奥の小道へと走り込んでいた。
そしてすぐに道の脇から飛び出した爬虫種が馬に飛び乗る。
メリアンは今度は自分が倒したばかりの爬虫種を盾として持ち、さっき乗っていた馬へと再びまたがった。
その横を、マドハトが乗っていた馬が走り去る。
メリアンも即座に馬を走らせた。
「ルブルム、俺たちは馬車まで戻ってもう一頭の馬を外してから追いかける!」
「嫌だ!」
ルブルムの言葉に驚いた。
感情の乗った言葉が、新鮮だったから。
ルブルムは俺に向かって手を差し伸べる。
「一緒に、いたい」
そうだな。
俺だって、同じ気持ちだ――となれば迷っている暇はない。
手斧を鞘へと戻し、留具を留め――閃く。
まずはケティをルブルムの前へと乗せ、広場の端の方へと移動してもらう。
手頃な樹を見つけ、その樹を足がかりにルブルムの後ろへと座る。
かなり窮屈だがなんとか踏ん張るしかない。
体はさっきより密着していて――いけるかな。
手斧の鞘がついた革ベルトの前後を取り替えて。
「『磁気帯びプラス』、そして『磁気帯びマイナス』」
ルブルムの小剣と俺の手斧とにそれぞれ逆の磁力を帯びさせる。
お、うまくくっつく感じ。
「リテル、後でそれ教えて」
「もちろんだよ」
俺たちの馬もようやく出発した。
逃げる野盗へ追いつくのにはさほどかからなかった。
前を逃げる爬虫種の馬は、さっきと同じ馬だというのに明らかにスピードが落ちていたから。
だけど野盗は器用なことに、馬に乗りながらちょいちょい振り返り、時には射かけてくる。
さっきとは別の理由でなかなか近づけない。
もっともマドハトは馬が勝手に走っているだけなので、いつ何があってもおかしくないという気持ちでいなければだけど。
メリアンの方は完全に馬を従えていて、体力を温存させているようにも見える。
俺たちは三人乗りということもあるが、矢の危険性を考慮してそもそもあまり近づき過ぎないようにしている。
そうやって距離が離れていたからその違和感に気付いた。
あの腕なら、本当は当てられるんじゃないだろうかと――だとしたら、時間稼ぎ? それとも誘導か?
また似たような広場があったら。今度はそこに大勢隠れていたら。
いやそれならさっきの広場でやればいいことだよな。
だとしたら野盗の本体は別の仕事とかにかかっている?
今はそこへ合流しようとしている?
そのくらいのこと、メリアンも考えているよね?
選択肢の多さと不安の大きさは正比例する。
あっ、爬虫種が道を外れた。
森の中へ。
メリアンも迷わず後を追う。
俺たちは、マドハトのしがみついている馬も一緒に森の中へ入ってくれたのを確認してから、その後へと続く。
樹々の隙間を縫うように走る馬。
『魔力感知』を広域の『魔力探知機』へと切り替えて周囲を調べると――なんだ?
地面よりも低い場所に一つ――今まで見たことのない寿命の渦。
それも獣種じゃないやつ。
まさか、魔物が居る場所へ誘導している?
しかも爬虫種の背中がだんだん視界の下へ――下っていっているのか?
メリアンが馬の速度を落とす。
しかしマドハトの乗った馬は爬虫種の降りていった坂をそのまま駆け下りてゆく。
ここから見える感じでは、森の中に大きく空いた竪穴の壁面に、板張りの下へと降りる道がなだらかな傾斜で設置されているっぽい。
マドハトが進んだからかメリアンも竪穴の中の道へと馬を進めた。
俺たちもその板張り通路のすぐ近くまで到着する。
「なんだ……ここ」
竪穴の広さはさっきの広場くらいはある。
深さはだいたいだけど二アブスくらいだろうか。
板張り通路を降りていくときに弓で狙われたら、いい的になる――だから。
だから立ち止まるのか?
今まで何回立ち止まった?
そしてその選択は正解だったか?
ケティがさらわれたとき、マドハトが降りていってしまったとき、メリアンはいつも真っ先に追いかけた。
ヒーローみたいに。
そしてこの竪穴の底には獣種じゃない寿命の渦を感じている――魔物かもしれない。
もしもそいつが魔法を使うのであれば、俺やルブルムがメリアンを助けることができるかもしれない。
第一もうマドハトは底に居る。
俺が無理やり連れてきたようなものなのに。
ケティの解毒剤だって進まなきゃ手に入らないのに。
「行こうルブルム」
行くか行かないかで迷うのはもう辞めよう。
俺が迷うのは「どう行くか」ただそれだけだ。
馬の蹄の音が変わる。
土から板へ。
マドハトとメリアンはもう底近くまで降りている。
そしてあの爬虫種は――竪穴の底に空いた横穴へと逃げ込むところ。
「追ってきた奴らは悪い奴らだ! 片付けろ!」
そう言い残して横穴の奥へ――そこへ一人残ったのが、さっきから感じている獣種ではない寿命の渦の――魔物?
いや違う。
一見して獣種の、凛々しく筋骨隆々な青年だ。
海外のファンタジー小説で表紙になるタイプのマッチョマン。
メリアンと同じくらいの身の丈で、それと同じくらいの長さがある大剣を軽々と構えた。
「おいら、悪いやつは許さないぜ!」
獣種の言葉をしゃべるのか――もしかして魔法も使うのか?
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染している。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけ、今は麻痺毒を入れられたようだ。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ケティがリテルへキスをしたのを見てから微妙によそよそしい。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・ノバディ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの用意してくれた馬車の御者。尻に野盗の入れ墨がある。
ちょっと訛っていたが、野盗仲間に対しては普通に喋っていた疑惑がある。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に野盗に入団しようとしたが、現在は野盗の毒で麻痺中。
・ブレドア
横転させた馬車で街道を封鎖し、襲撃してきた牛種。
メリアンに返り討ちに合い、死亡。左脇腹に野盗の入れ墨がある。
・小道の襲撃者たち
二人組の爬虫種。馬に乗り、片方は寿命の渦を見えなくしていた。魔法も用いる。
野盗の入れ墨はなかった。ルブルムの活躍により、二人とも死亡した……はずだったのだが。
・広場の襲撃者たち。
爬虫種が二人。一人はメリアンに殺されたが、もう一人は馬に乗って逃走中。
■ はみ出しコラム【誕生日】
ホルトゥスにおいては誕生日を祝う習慣がある。
ただし祝われるのは子供ではなく、子供を産んだ母である。
基本的には物質的な贈り物の習慣はなく、家族がそれぞれ言葉や歌、踊りなどを贈る、というものである。
母が亡くなった場合でも、子供が生きている間は、誕生日の度に亡き母へ言葉や歌や踊りを贈る。
・子供が死んでいる場合の誕生日
子供が亡くなった場合でもその死んだ子供の誕生日には、その母が祝われる。
ただし、母子そのどちらもが死んだ場合、誕生日のお祝いは行われなくなる。
・誕生日に食べるもの
誕生日にはいつもの食事に加えて何か一つ、贅沢なものが加わる――という習慣が、都市部の一部に存在する。
それは大抵は「甘いもの」である。もちろん、家族皆で分け合って食べる。
その「甘いもの」へロウソクを立てる風習はない。
鹿の王様のお背中に乗せていただいたときも鞍なしだったけど、今よりももっとスピードが出ていたのに抜群の安定感だった。
こりゃ裸馬の背中から振り落とされないための魔法があってもいいんじゃないかってくらい。
情けないくらいに必死にルブルムの背中にしがみついているが、馬が揺れるたびに互いの革鎧同士がゴツゴツとぶつかり合い、その反動もまた俺の体を浮かそうとする。
ケティを連れ去った馬を追っているというのに――ケティ、足手まといはケティじゃない。俺だよ。
そんなんだから距離をなかなか詰められない。
「ありゃ馬の速度あげる何か使ってんなぁ!」
俺たちの先頭を走るメリアンが声を上げる。
ああ、そういうのもあるのか。
それだけじゃない。近づいてきたとき片方だけは『死んだふり』とは違うアプローチの寿命の渦を消す魔法を使っていたっぽいし、馬の速度の異常さもそうだし、だいいちルブルムに首を刺し貫かれて確実に死んでいたはずのあの爬虫種が今、ケティをさらって馬を駆っている事実。
敵には確実に魔術師が居る。
いや、だとしても、俺がケティから目を離したりしなければこんなことにはならなかった。
どうしてケティを一人きりにした?
死体の検分に付き合わせないにしても、マドハトを護衛につけるとか、せめて俺たちの視界の範囲で目を閉じていてもらうとか、いくらでもやりようはあっただろうに。
魔法がある世界で、起こり得る事態に対する俺の構えがまるでなっていない。
想定が甘すぎる。
「動物の速度を上げる魔法は知っているが、いきなり使ってはいけないとカエルレウム様に言われている」
ルブルムが突然、そんなことを言い出した。
「体の動きが突然変わると、その差異に思考がついていかず、かえって転んだりしてしまうと聞いた。信頼関係を結んだ動物と、まずは歩くところから徐々に慣らしていって、走るときに使用できるのはその後だと聞いた……私がその魔法を使わないのは、そういう理由からだ。リテルの大事なケティを追いかけたくないわけじゃないと知っていてほしい」
「わかった。ルブルム、ありがとう」
いつものルブルムらしくない言い方に引っかかりはしたが、言われてみれば身体強化系魔法の注意点には納得感がある。
そしてもう一つ。
後悔も反省も、少なくとも今することじゃない。
ダメだな、俺は。
優先順位も考えておかないとだ。
突発的に起きたことへ囚われて、思考が足踏みしてしまっていた。
理解していてもその通りにはできないこと、何度も失敗してしまうこと、そういうことを乗り越えて、糧にして、未来ではちゃんと想定しきって、対応もしきって、それでも想定外のことが起きると構えておいて、何か起きる度に優先順位を決め直して――俺はもっと柔軟にならないと。
「やっぱ魔法だったか! そんで時間切れだな!」
メリアンの声が聞こえる。
ルブルムの背中越しに前方を見ると、確かに目に見えて馬の速度が落ちている。
これなら追いつけそうだ。
「いや、警戒しろ。罠かもしれない」
メリアンの言葉の理由はすぐにわかった。
小道の先が開けているからだ。
ここからじゃまだ全容はつかめないが、広場のようになっているっぽい。
入った途端に四方八方から一斉射撃というオチだって考えられる。
メリアンが馬を近付けてきて小剣を抜く。
マドハトの乗っている馬とエルーシやノバディを縛り上げた塊とを繋ぐ部分を切り、小剣を鞘へ収めると、エルーシとノバディとを結びつけた部分をつかんでひょいと担いだ。
今気付いたけど、エルーシとノバディを繋いである場所は一箇所だけ。馬に繋いでいた場所も一箇所だけ。
いざってときにその一箇所を切れば簡単に分離できるようにしていたのか。
しかも今その繋いだ部分を肩にかけて、前面にノバディ、背面にエルーシをまるで盾代わりかのようにぶら下げている。
なんというか、すげぇ。
「まずあたしが突っ込む。あんたらは様子見てから来な」
「わかった」
その返事を聞かずにメリアンが馬を加速させる。
一方、ケティをさらった馬の方は、広場っぽい場所へと入ってゆく。さらに速度を落としたかと思うと、広場の中央で馬は止まり、くるっとこちら向きに反転した。
「ルブルム、マドハト、止まれ!」
ケティは馬の背に、荷物のように無造作に俯せに横たえられている。
さっきは会話できるくらいまでに回復していたのに、今は動く気配がない。
ブレドアが持っていたあの麻痺毒を爬虫種も隠し持っていたのか?
そして反転したということは、迎撃の準備ができたということか?
しかしメリアンは馬の速度を緩めずに宣言通り突っ込んでゆく。
そればかりかマドハトまで。
「リテルさま! 馬の止め方わからないです!」
マドハトの叫びを聞いたルブルムは、一度は緩めかけた馬の速度を再び早める。
ちょうどそのとき、馬上の爬虫種がゆっくりとケティの背中へと覆い被さった。
おい俺、ケティのことを忘れていたのか?
どうして俺は止まれなんて言ったんだ。
反撃を恐れて一瞬でもケティを見捨てようとしたのか?
「ケティィィッ!」
また――また俺はケティを。
全身に鳥肌が立つのを感じる。
冷たい。手が、冷たい。血の気が引いているのか。
なぜ俺は今ここにいて、あそこに居ないのか。
どうして俺はケティを二度も――思考が空回りする。
涙に滲みかけた俺の視界に赤い血飛沫が舞った。
血飛沫だけじゃなかった。
あの爬虫種の体も宙を――メリアンが、ケティたちの乗った馬のすぐ横を駆け抜けながら爬虫種にラリアットを炸裂させたのだった。
自分の未熟さがもどかしい。
俺はこの期に及んでまた思考を放棄していた――ほらこれだ。
この後悔は、今することじゃないだろ。
「ルブルム、ケティの居る馬のすぐ横に」
「わかった」
「マドハト、矢に注意!」
「はいです!」
俺は手斧を鞘から出し、右手でルブルムの頭部を覆うように構える。
せめてもの矢避けになればと。
『魔力探知機』で広場周囲の森に隠れていると思われる敵の数を確認する。
広場の向こう側へ小道が抜けているのだが、その両側、視界が通らない茂みの奥にバラけて二人居る――両方とも爬虫種。
それを伝えるまでもなく矢が二本、それぞれ探知した場所からメリアンめがけて飛んでゆくが、一本は盾で弾き、もう一本はノバディの死体で受け止めるメリアンの凄さよ。
メリアンは速度を緩めずそのうちの一人、左側の方へと突っ走る。
そのとき、ようやく俺たちも広場へと入った。
『魔力探知機』を『魔力感知』へと切り替え、寿命の渦だけじゃなく、『死んだふり』や「何もない反応を返す違和感」をも含め、念入りに探知――矢が来た――のを避けようとしたのか、ルブルムが馬を跳ねさせた。
必死にルブルムへとしがみつく。
右の方、野放しだからな――いや、移動もしている。場所を変えながら射ってくる気か。
だとしたら今のうちに。
ちょうどルブルムがケティの馬のすぐ近くへとつけてくれて、俺はケティの居る馬の鐙へと片足をかける。
一発で乗り移れる。
道具って偉大だ――また矢だ。
とっさにケティの体に覆いかぶさるが、矢はうまく反れてくれたようだった。
手斧は常に構えておこう。
その間にメリアンは馬を飛び降り、奥の茂みの中へ徒歩で突撃していた。
右の爬虫種がメリアン側に向かって走って移動するのがわかる。
加勢か、それとも奥の道へと撤退か?
となると俺たちが取るべき行動は――まずケティの様子を見る。
目は虚ろ――エルーシと同じ症状っぽい。
よく見れば二の腕に針のようなものが刺さっている。
慌てて抜いて――血を吸い出して吐く。
舌がピリつく。
針の持ち手部分が、鞍の装飾と形が似ていて、調べてみると鞍の一部に凹みがあった。
ちょうどその針と持ち手とがぴったりハマるくらいの――鞍に武器を隠されている想定が漏れていたのか――待てよ。
鞍の凹みがあるのは右側。それと真逆の左側、同じ辺り――やっぱり動く!
慎重にそれを引き抜くと――右側と同じ形状の針。
武器ばっかだな。解毒剤じゃないのかよ。
「トシテル!」
ルブルムの声に反射的に手斧で防御姿勢を取る――その手に、ぐっと強い衝撃を覚えた。
運が良かった。
飛んできた矢を運良く弾けたみたい。
ありがたい。
とにかくケティを助けるためにはこの麻痺毒の解毒剤が必要だ。
きっと野盗が持っているはず。
となると退く選択肢はない。
ルブルムは、マドハトの方へと馬を寄せている。
鞍にしがみついたままのマドハトを乗せている馬は広場の中を好き勝手に走り回っている。
この円形の広場はバスケットコートがすっぽり収まるくらいの広さ。
ここに控えている野盗は二人だけ?
なら奥の小道の先が野盗のアジト?
そうこうしているうちに今、左側の野盗の寿命の渦が千切れて消えた。
もう一人はまた移動している――立ち止まったら弓を警戒しよう。
あとは――とりあえず馬の手綱を手に取る。
そのタイミングで鋭い口笛の音が響いた。
俺たちの乗っている馬が前足を高く上げていななく――手綱を握っていなければ今ので振り落とされていた。
いや、ケティの体がずるりと落ちかかる――もう二度と、ケティに傷をつけるわけには。
落ちかけたケティの体を両手でつかむとぎゅっと抱きしめ、鐙から足を放し、突然暴れだした馬から飛び降りた。
背中から地面へと落ちる。
体を丸めていたおかげで、後頭部は打たずに済んだようだし、ケティもなんとか――『脳内モルヒネ』。
背中の痛みを散らして起き上がり、寿命の渦を感じない茂みの方へと移動する。
思考と確認と回避とは交互に行おう。
ここは今、戦場だから。
寿命の渦が走り去ろうとしている――野盗の最後の一人の爬虫種が、奥の小道の方へ。
俺たちを振り落とした馬もそっちの方向へ走り出す。
そういや魔法をかけられていたんだっけこの馬は――ルブルムがさっき言ってたじゃないか。身体強化系の魔法がかかっていたということは、何度も魔法をかけて慣らされていた、信頼関係を結んだ馬だったということ。
「ト……リテル、大丈夫か」
ルブルムがこちらの方へ。
マドハトを乗せた馬はまだ勝手気ままに走り回っている。こっちを優先してくれたのか。
メリアンが爬虫種の死体を一つ抱えて茂みから出てきたときにはもう、俺たちを振り落とした馬は奥の小道へと走り込んでいた。
そしてすぐに道の脇から飛び出した爬虫種が馬に飛び乗る。
メリアンは今度は自分が倒したばかりの爬虫種を盾として持ち、さっき乗っていた馬へと再びまたがった。
その横を、マドハトが乗っていた馬が走り去る。
メリアンも即座に馬を走らせた。
「ルブルム、俺たちは馬車まで戻ってもう一頭の馬を外してから追いかける!」
「嫌だ!」
ルブルムの言葉に驚いた。
感情の乗った言葉が、新鮮だったから。
ルブルムは俺に向かって手を差し伸べる。
「一緒に、いたい」
そうだな。
俺だって、同じ気持ちだ――となれば迷っている暇はない。
手斧を鞘へと戻し、留具を留め――閃く。
まずはケティをルブルムの前へと乗せ、広場の端の方へと移動してもらう。
手頃な樹を見つけ、その樹を足がかりにルブルムの後ろへと座る。
かなり窮屈だがなんとか踏ん張るしかない。
体はさっきより密着していて――いけるかな。
手斧の鞘がついた革ベルトの前後を取り替えて。
「『磁気帯びプラス』、そして『磁気帯びマイナス』」
ルブルムの小剣と俺の手斧とにそれぞれ逆の磁力を帯びさせる。
お、うまくくっつく感じ。
「リテル、後でそれ教えて」
「もちろんだよ」
俺たちの馬もようやく出発した。
逃げる野盗へ追いつくのにはさほどかからなかった。
前を逃げる爬虫種の馬は、さっきと同じ馬だというのに明らかにスピードが落ちていたから。
だけど野盗は器用なことに、馬に乗りながらちょいちょい振り返り、時には射かけてくる。
さっきとは別の理由でなかなか近づけない。
もっともマドハトは馬が勝手に走っているだけなので、いつ何があってもおかしくないという気持ちでいなければだけど。
メリアンの方は完全に馬を従えていて、体力を温存させているようにも見える。
俺たちは三人乗りということもあるが、矢の危険性を考慮してそもそもあまり近づき過ぎないようにしている。
そうやって距離が離れていたからその違和感に気付いた。
あの腕なら、本当は当てられるんじゃないだろうかと――だとしたら、時間稼ぎ? それとも誘導か?
また似たような広場があったら。今度はそこに大勢隠れていたら。
いやそれならさっきの広場でやればいいことだよな。
だとしたら野盗の本体は別の仕事とかにかかっている?
今はそこへ合流しようとしている?
そのくらいのこと、メリアンも考えているよね?
選択肢の多さと不安の大きさは正比例する。
あっ、爬虫種が道を外れた。
森の中へ。
メリアンも迷わず後を追う。
俺たちは、マドハトのしがみついている馬も一緒に森の中へ入ってくれたのを確認してから、その後へと続く。
樹々の隙間を縫うように走る馬。
『魔力感知』を広域の『魔力探知機』へと切り替えて周囲を調べると――なんだ?
地面よりも低い場所に一つ――今まで見たことのない寿命の渦。
それも獣種じゃないやつ。
まさか、魔物が居る場所へ誘導している?
しかも爬虫種の背中がだんだん視界の下へ――下っていっているのか?
メリアンが馬の速度を落とす。
しかしマドハトの乗った馬は爬虫種の降りていった坂をそのまま駆け下りてゆく。
ここから見える感じでは、森の中に大きく空いた竪穴の壁面に、板張りの下へと降りる道がなだらかな傾斜で設置されているっぽい。
マドハトが進んだからかメリアンも竪穴の中の道へと馬を進めた。
俺たちもその板張り通路のすぐ近くまで到着する。
「なんだ……ここ」
竪穴の広さはさっきの広場くらいはある。
深さはだいたいだけど二アブスくらいだろうか。
板張り通路を降りていくときに弓で狙われたら、いい的になる――だから。
だから立ち止まるのか?
今まで何回立ち止まった?
そしてその選択は正解だったか?
ケティがさらわれたとき、マドハトが降りていってしまったとき、メリアンはいつも真っ先に追いかけた。
ヒーローみたいに。
そしてこの竪穴の底には獣種じゃない寿命の渦を感じている――魔物かもしれない。
もしもそいつが魔法を使うのであれば、俺やルブルムがメリアンを助けることができるかもしれない。
第一もうマドハトは底に居る。
俺が無理やり連れてきたようなものなのに。
ケティの解毒剤だって進まなきゃ手に入らないのに。
「行こうルブルム」
行くか行かないかで迷うのはもう辞めよう。
俺が迷うのは「どう行くか」ただそれだけだ。
馬の蹄の音が変わる。
土から板へ。
マドハトとメリアンはもう底近くまで降りている。
そしてあの爬虫種は――竪穴の底に空いた横穴へと逃げ込むところ。
「追ってきた奴らは悪い奴らだ! 片付けろ!」
そう言い残して横穴の奥へ――そこへ一人残ったのが、さっきから感じている獣種ではない寿命の渦の――魔物?
いや違う。
一見して獣種の、凛々しく筋骨隆々な青年だ。
海外のファンタジー小説で表紙になるタイプのマッチョマン。
メリアンと同じくらいの身の丈で、それと同じくらいの長さがある大剣を軽々と構えた。
「おいら、悪いやつは許さないぜ!」
獣種の言葉をしゃべるのか――もしかして魔法も使うのか?
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染している。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけ、今は麻痺毒を入れられたようだ。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ケティがリテルへキスをしたのを見てから微妙によそよそしい。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・ノバディ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの用意してくれた馬車の御者。尻に野盗の入れ墨がある。
ちょっと訛っていたが、野盗仲間に対しては普通に喋っていた疑惑がある。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に野盗に入団しようとしたが、現在は野盗の毒で麻痺中。
・ブレドア
横転させた馬車で街道を封鎖し、襲撃してきた牛種。
メリアンに返り討ちに合い、死亡。左脇腹に野盗の入れ墨がある。
・小道の襲撃者たち
二人組の爬虫種。馬に乗り、片方は寿命の渦を見えなくしていた。魔法も用いる。
野盗の入れ墨はなかった。ルブルムの活躍により、二人とも死亡した……はずだったのだが。
・広場の襲撃者たち。
爬虫種が二人。一人はメリアンに殺されたが、もう一人は馬に乗って逃走中。
■ はみ出しコラム【誕生日】
ホルトゥスにおいては誕生日を祝う習慣がある。
ただし祝われるのは子供ではなく、子供を産んだ母である。
基本的には物質的な贈り物の習慣はなく、家族がそれぞれ言葉や歌、踊りなどを贈る、というものである。
母が亡くなった場合でも、子供が生きている間は、誕生日の度に亡き母へ言葉や歌や踊りを贈る。
・子供が死んでいる場合の誕生日
子供が亡くなった場合でもその死んだ子供の誕生日には、その母が祝われる。
ただし、母子そのどちらもが死んだ場合、誕生日のお祝いは行われなくなる。
・誕生日に食べるもの
誕生日にはいつもの食事に加えて何か一つ、贅沢なものが加わる――という習慣が、都市部の一部に存在する。
それは大抵は「甘いもの」である。もちろん、家族皆で分け合って食べる。
その「甘いもの」へロウソクを立てる風習はない。
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