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第十二話~社長の暴走3~
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あれだけ社員を失ってもまだまだ馬鹿社長の暴走が続いた。
哲が入社して8年目を迎えようとしていた新年に突如、大阪に事務所を作るという話になった。
作ることは良いが、問題となったのは誰かが転勤してもらうという話もあったからだ。
転勤は半年で終わりにするという話らしいが、哲は半年で終わるわけがないと確信していた。
というのも、馬鹿社長が東京へ会社を作ったとき、一緒に連れて行った社員が何年経っても戻らず、最後は社長と仲が悪くなって独立したからだった。
その人も勤続年数18年は経っていて、2代目馬鹿社長と同年代だか、社歴ははるかに長い。
そんな人を東京でずっと課長にして、自分がどっかから引き抜いてきた人を部長だの課長だの重要なポジションにどんどん置いていったのだから、相当仲が悪かったのだろうと思う。
他にも社員が東京へ主張して、帰ってくるのが予定より遅れるなんてことがしばしばあった。
さて、誰が大阪へ転勤になるかという話題になるのだが、哲はほぼ間違いなく自分になるだろうと分かっていた。
去年も一昨年も昇進させず、転勤という形で昇進させるという考えなら、管理職など経営者側の人間なら哲が理解してくれるだろうという甘い考えを持つだろうと。
さらには当時、独身で仕事に関していろいろなことを知っているという点では哲しか適任者がいなかったからだ。
だが、哲は行こうと思わなかった。
なぜなら、付き合っていた彼女と結婚する話になっていて彼女の親が障害者であったため、遠方に行くことは彼女の親を捨てるような行動になってしまうことになることがひとつ。
半年で帰ってこれるなんてこれっぽっちも思わなかったのがふたつ。
これまで散々いろいろ仕事を任せてきて、転勤までさせないと昇進させないという考えにかなり怒っていたことがみっつ。
最後に、社長に仕返しをしたかったのがよっつめ。
というのも、馬鹿社長が社長に就任した年の始めの忘年会で終わり際に社長に真顔で、
「哲の結婚式には呼ばなくていいから」
と言ったことだった。
最初は何のことか分からなかった。当時の哲はまだ彼女と結婚するなんて話はなかったし、周りにも結婚するなんて一言も言っていない。
後でよくよく考えたら、あの馬鹿社長は哲のことが嫌いだったのだ。
理由はよく分からないが、哲が独学で1級建築士を取得できたことに嫉妬していると思われたこと、哲が飲み会ではあまりベラベラしゃべる人間ではなく、盛り上げることがなかったのが馬鹿社長は気にくわなかったのだろう。
それしか、考えられる理由はない。
そして、予想通り、仕事の最中に部長に会議室に来るよう呼ばれた。
そこで、転勤してほしいという話を受けたが哲は当然断った。
数日後、常務に呼ばれて転勤の話を再度受けたが、当然断った。
そして、もう1人あの靖が候補に入っていたらしく、靖も断ったという話を聞いた。
結局、別の社員が大阪転勤の話を受けたようだが、本編はこれからだ。
6月になり、昇進試験の話になるのだが、哲には今年も話が来なかった。
靖にも来なかったようだが、驚いたのは他の社員への優遇だった。
主任だった社員はほとんど昇進して、係長や課長補佐になった。
哲よりも仕事をこなしてないにもかかわらずだ!!!
しかも、転勤できるかどうかは聞かれていないという。
ということは、哲はたまたま最初に転勤の話を受けて断ったから昇進できず、話がなかったら昇進できたということか。
だが、昇進できたといっても大阪転勤になった社員は主任から課長補佐に2段階昇進したが、転勤しない人も2段階昇進した人もいるし、係長から課長補佐になった人もいるから、結局は転勤損になり得なかったこと。
その現実を目の当たりにして、哲はやる気がゼロ%になった。
哲は心の中で3本の糸のイメージがあった。石の上でも3年ということになるだろうか。
馬鹿社長の数々の暴走に一本ずつ切れていった心の糸がここで、最後の一本をとうとう切られてしまったようだった。
それからすぐに哲は部長に退職の旨を伝えた。
最初は仕方がないという返事だったので、部長もそんなに哲を引き留めなくてもいいと思ったのだろうと考えた哲は猛烈に転職活動を始めた。
「もうこんな会社価値がない。」
本気で思った哲はすぐに転職先が決まった。
最後に部長に引き留めにあうも、もはや信じられなかった。部長はホントに引き留めたいと思っているのだろうか。
管理職がやることなすことに疑念しか沸かなかった。
「転職先がきまったので…。」
哲の意思は固かった。
もう思い残すことはないくらい仕事をしてきた哲は、新年の転勤の話から昇進できなかったら辞めようと考えていたのだ。
2015年、勤続年数8年目、哲は新たな旅に出るべく、自分の荷物を整理した。
新しい生きがいを見つけに。
哲が入社して8年目を迎えようとしていた新年に突如、大阪に事務所を作るという話になった。
作ることは良いが、問題となったのは誰かが転勤してもらうという話もあったからだ。
転勤は半年で終わりにするという話らしいが、哲は半年で終わるわけがないと確信していた。
というのも、馬鹿社長が東京へ会社を作ったとき、一緒に連れて行った社員が何年経っても戻らず、最後は社長と仲が悪くなって独立したからだった。
その人も勤続年数18年は経っていて、2代目馬鹿社長と同年代だか、社歴ははるかに長い。
そんな人を東京でずっと課長にして、自分がどっかから引き抜いてきた人を部長だの課長だの重要なポジションにどんどん置いていったのだから、相当仲が悪かったのだろうと思う。
他にも社員が東京へ主張して、帰ってくるのが予定より遅れるなんてことがしばしばあった。
さて、誰が大阪へ転勤になるかという話題になるのだが、哲はほぼ間違いなく自分になるだろうと分かっていた。
去年も一昨年も昇進させず、転勤という形で昇進させるという考えなら、管理職など経営者側の人間なら哲が理解してくれるだろうという甘い考えを持つだろうと。
さらには当時、独身で仕事に関していろいろなことを知っているという点では哲しか適任者がいなかったからだ。
だが、哲は行こうと思わなかった。
なぜなら、付き合っていた彼女と結婚する話になっていて彼女の親が障害者であったため、遠方に行くことは彼女の親を捨てるような行動になってしまうことになることがひとつ。
半年で帰ってこれるなんてこれっぽっちも思わなかったのがふたつ。
これまで散々いろいろ仕事を任せてきて、転勤までさせないと昇進させないという考えにかなり怒っていたことがみっつ。
最後に、社長に仕返しをしたかったのがよっつめ。
というのも、馬鹿社長が社長に就任した年の始めの忘年会で終わり際に社長に真顔で、
「哲の結婚式には呼ばなくていいから」
と言ったことだった。
最初は何のことか分からなかった。当時の哲はまだ彼女と結婚するなんて話はなかったし、周りにも結婚するなんて一言も言っていない。
後でよくよく考えたら、あの馬鹿社長は哲のことが嫌いだったのだ。
理由はよく分からないが、哲が独学で1級建築士を取得できたことに嫉妬していると思われたこと、哲が飲み会ではあまりベラベラしゃべる人間ではなく、盛り上げることがなかったのが馬鹿社長は気にくわなかったのだろう。
それしか、考えられる理由はない。
そして、予想通り、仕事の最中に部長に会議室に来るよう呼ばれた。
そこで、転勤してほしいという話を受けたが哲は当然断った。
数日後、常務に呼ばれて転勤の話を再度受けたが、当然断った。
そして、もう1人あの靖が候補に入っていたらしく、靖も断ったという話を聞いた。
結局、別の社員が大阪転勤の話を受けたようだが、本編はこれからだ。
6月になり、昇進試験の話になるのだが、哲には今年も話が来なかった。
靖にも来なかったようだが、驚いたのは他の社員への優遇だった。
主任だった社員はほとんど昇進して、係長や課長補佐になった。
哲よりも仕事をこなしてないにもかかわらずだ!!!
しかも、転勤できるかどうかは聞かれていないという。
ということは、哲はたまたま最初に転勤の話を受けて断ったから昇進できず、話がなかったら昇進できたということか。
だが、昇進できたといっても大阪転勤になった社員は主任から課長補佐に2段階昇進したが、転勤しない人も2段階昇進した人もいるし、係長から課長補佐になった人もいるから、結局は転勤損になり得なかったこと。
その現実を目の当たりにして、哲はやる気がゼロ%になった。
哲は心の中で3本の糸のイメージがあった。石の上でも3年ということになるだろうか。
馬鹿社長の数々の暴走に一本ずつ切れていった心の糸がここで、最後の一本をとうとう切られてしまったようだった。
それからすぐに哲は部長に退職の旨を伝えた。
最初は仕方がないという返事だったので、部長もそんなに哲を引き留めなくてもいいと思ったのだろうと考えた哲は猛烈に転職活動を始めた。
「もうこんな会社価値がない。」
本気で思った哲はすぐに転職先が決まった。
最後に部長に引き留めにあうも、もはや信じられなかった。部長はホントに引き留めたいと思っているのだろうか。
管理職がやることなすことに疑念しか沸かなかった。
「転職先がきまったので…。」
哲の意思は固かった。
もう思い残すことはないくらい仕事をしてきた哲は、新年の転勤の話から昇進できなかったら辞めようと考えていたのだ。
2015年、勤続年数8年目、哲は新たな旅に出るべく、自分の荷物を整理した。
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