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第一章
第四十二話 七秒間の沈黙と国家機密
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「……三年前の件だが」
王はゆっくりと言葉を紡いだ。
「君は結局、何をしたのか教えてくれなかったよな」
「そりゃあ、風邪をちょっと治しただけなんですからね。別に説明する必要もないと思いまして」
「……君が去った後、この国の優秀な魔術師達を呼んで検討してみたんだが……。
「君は、魔力循環の基幹構造に干渉し、一定のリズムを刻み付けた――ってことでいいのか?」
「そうですね。他にも細々としたことはしましたけど、重要なのはそれですね」
「私からも質問をしていいかな」
「……どうぞ」
「君は基幹構造に干渉した――と言うが、それは口で言うほど簡単なことではないだろう?」
「そうですかね」
「うちの魔術師達は、先の結論を出した後、しかしそれは不可能だと言い立てたよ。で、また議論は紛糾した」
「…………」
「しかし実際にそれをやってのけられた訳だからな……認めないわけにはいかない」
「ですね」
「―――君は、基幹構造にどうやって干渉したんだ?」
王の目には尋常ならざる光が宿っているように見えた。
それは鋭く尖り、冷たく重いように感覚される。
「―――国家機密ですよ」
俺はそれに、軽い笑みで応じた。
「夢乃には教えてもいいですけど、陛下には教えられないな」
「……そうかい」
王は微かに笑った。瞳から、先の苛烈な光は姿を消していた。
「……して、さっきから気になっていたんだが」
王はことりとグラスを置いて、腕を組んだ。
「娘を呼び捨てで呼んでいるのは何故だ?」
「………何故って言われましても」
「お前、娘に手を出したりしてないよな?まだ十三歳なんだぞ……」
「いやいや、話が飛躍し過ぎってもんですよ。呼び捨てで呼んでいるからってそんなことがある訳――」
…………ある訳……。
呼び捨てとは全く関係ないけど、そう言えばさっき頭を撫でたよな……。
あれは『手を出した』に入らないよな?
入る?物理的に手を乗っけた訳だしな……。
――いや、頭を撫でることが『手を出す』に当たるとするのならば、俺は――えーと、彩希と時葉と悠可と佳那と夢乃の頭を撫でているわけだから、つまり――………………。
いや、何でもない。
『頭を撫でる』は、『手を出す』には当たらない。そう、定義しよう。
「――ないじゃないですか」
「その七秒間の沈黙は何を意味しているんだ?」
「いえいえ。ちょっと黙りたくなっただけですよ」
「黙りたくなっただけって……ひでぇ言い訳だな」
「事実にしか聞こえない言い訳の方がたちが悪いと思いませんか?」
「……は。そりゃそうだ」
王はそう言って、苦笑した。
…………それはそうと、どうなのかな。頭を撫でるってライン越え……かなぁ。
王はゆっくりと言葉を紡いだ。
「君は結局、何をしたのか教えてくれなかったよな」
「そりゃあ、風邪をちょっと治しただけなんですからね。別に説明する必要もないと思いまして」
「……君が去った後、この国の優秀な魔術師達を呼んで検討してみたんだが……。
「君は、魔力循環の基幹構造に干渉し、一定のリズムを刻み付けた――ってことでいいのか?」
「そうですね。他にも細々としたことはしましたけど、重要なのはそれですね」
「私からも質問をしていいかな」
「……どうぞ」
「君は基幹構造に干渉した――と言うが、それは口で言うほど簡単なことではないだろう?」
「そうですかね」
「うちの魔術師達は、先の結論を出した後、しかしそれは不可能だと言い立てたよ。で、また議論は紛糾した」
「…………」
「しかし実際にそれをやってのけられた訳だからな……認めないわけにはいかない」
「ですね」
「―――君は、基幹構造にどうやって干渉したんだ?」
王の目には尋常ならざる光が宿っているように見えた。
それは鋭く尖り、冷たく重いように感覚される。
「―――国家機密ですよ」
俺はそれに、軽い笑みで応じた。
「夢乃には教えてもいいですけど、陛下には教えられないな」
「……そうかい」
王は微かに笑った。瞳から、先の苛烈な光は姿を消していた。
「……して、さっきから気になっていたんだが」
王はことりとグラスを置いて、腕を組んだ。
「娘を呼び捨てで呼んでいるのは何故だ?」
「………何故って言われましても」
「お前、娘に手を出したりしてないよな?まだ十三歳なんだぞ……」
「いやいや、話が飛躍し過ぎってもんですよ。呼び捨てで呼んでいるからってそんなことがある訳――」
…………ある訳……。
呼び捨てとは全く関係ないけど、そう言えばさっき頭を撫でたよな……。
あれは『手を出した』に入らないよな?
入る?物理的に手を乗っけた訳だしな……。
――いや、頭を撫でることが『手を出す』に当たるとするのならば、俺は――えーと、彩希と時葉と悠可と佳那と夢乃の頭を撫でているわけだから、つまり――………………。
いや、何でもない。
『頭を撫でる』は、『手を出す』には当たらない。そう、定義しよう。
「――ないじゃないですか」
「その七秒間の沈黙は何を意味しているんだ?」
「いえいえ。ちょっと黙りたくなっただけですよ」
「黙りたくなっただけって……ひでぇ言い訳だな」
「事実にしか聞こえない言い訳の方がたちが悪いと思いませんか?」
「……は。そりゃそうだ」
王はそう言って、苦笑した。
…………それはそうと、どうなのかな。頭を撫でるってライン越え……かなぁ。
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