異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第一章

第五十三話 連れて行きたいと思うんですけど

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 翌日。

 昨夜の出来事について話し合うために、俺は国王の執務室へと赴いた。

 執務室に着くと、難しい顔をした国王と、同じく難しい顔をした仁さんが頬杖をついて座っていて――不謹慎だが、ちょっと吹きそうになってしまった。

 なってしまったが、実際にはそんなことの微細な欠片すらも感じさせずに俺は「どうも」と挨拶をした。

「おはよう由理」

「ういーす」

 ……適当な方が仁さんである。彼は相当疲れてしまっているらしい。

「俺はどこに座ればいいですか?」

「その辺」

「…………」

 おとなしく仁さんの隣に腰を下ろす。陛下は反対側のソファに座っている。

「……とりあえず、悪魔がここに来たって情報を持ってるのは……ここの三人だけ、って認識でいいんですか」

「ああ……。無意味に王宮内の人たちを混乱させたくないからな」

「……しかし、勿論このまま無かったことにすることは出来ない。早急に対応を決める必要がある」

「ですね……そこでちょっと、昨日考えてたんですけど」

「……何だ?」

 仁さんと陛下、二人の視線が俺に向く。

「夢乃、連れて帰ってもいいですか?」

 …………。

「……いやあの、すいませんちょっと説明が足りな過ぎましただからそんなに睨まないでください」

 仁さんは呆れたような目で俺を見ているし、陛下は射殺そうとしているのかと思うような視線で俺を貫いていた。

 ちょっと痛覚が刺激されたまである。

 と思うと、陛下は一つ溜息をついて眉間の皺を僅かに減少させた。

「……いや、お前が言おうとしていることは分からんでもない」

「……そうですか?今ので分かりました?」

「……由理お前、狙ってやったんだろそうなんだろ」

「いえいえそんなことは」

「……言いたいことは山程あるが、お前の傍に居させてやることが夢乃の安全を考えると一番良い……ということは理解している」

「まあ、味方である限りこいつの周囲が世界で一番安全でしょうね……」

 陛下が仁さんの言葉に小さく頷きを返す。

「傲岸不遜な物言いだとは理解してますけど――俺もそう思います。……だから、極星国に夢乃を招いて、城にいてもらうのがいいんじゃないかと思いまして」

「だが駄目だ」

「……………」

「娘はやらん」

「……………いやそういう話じゃないんですけど」

「じゃあどういう話だ?この不穏な動きがいつまで続くのかが分からない以上、夢乃がここに返ってくるのがいつになるかは判然としない……そうだろ?

「加えて王女が他国に渡り――しかも王城に住むとなれば、その国の王子との繋がりを想像しない者はいない」

 するとどうなる?と陛下は続けた。

「お前以外との婚姻なんか結べないだろうし、そもそも話が来ないだろうし……」

「分かりましたよ」

 俺がそう言うと、仁さんが「んぇ」と咳き込んだ。

「お、おま」

「この騒動は二年以内に終わらせます。遅くても」

「……え?そっち?」

 仁さんが小声で呟くが、気にしたら負け。

「もし万が一終わらなかったら……まあ、何とかしますよ。夢乃が望むとおりに俺は動きます」

「……………」

 長い沈黙のあと、陛下は本当に不本意そうに「…………わかった」と呟いた。

「ただし条件がある」
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