異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第一章

第六十二話 柔らかな陽光に包まれて

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 自室に戻ると、もう気力も体力も限界だった。今夜は小説も読まずに泥のように眠るしかないみたいだ。

 寝支度を済ませてからベッドに横たわる。天井をぼんやりと眺めてみる。

 何だか―――そう、春風家の屋敷の近くで『最古ノ魔術師』に遭遇してから、大いなる流れの中に否応なく巻き込まれ、のっぴきならない場所へと押し流されているような気がする。

 流れ。

 それは運命の持つ力なのか。

 それとも運命なんてものは存在しないのか。

 今の俺に分かる訳はなかったが、そんなことを考えたくなった。

 ……しかし一連の出来事を流れだと捉えるのだとしたら、その始点に居るのは……。

『最怪』か。それとも組織の人間か。或いは――俺なのか。

 どちらにしても、この流れの終点が決定的な瓦解を――破滅を抱えていることは、疑いようもなく明らかだった。

 ○

 目が覚める。眠い。ということは寝坊はしていないということだ。

 ……判定方法が微妙だな。

 今日からは普通に授業を行うので、寝坊なんかしていられない。どころか今から急いで準備をしても授業の十五分前くらいに支度が終わるかどうか。

 ……終わらせるけどね。頑張って。


 ――頑張って終わらせて、部屋を出る。

 いつもの通り、一日は彩希の授業から始まる。今日は――随分前のことに思えるが――最近彩希に渡した魔剣を、彼女がどれだけ使いこなせるようになっているかの確認をするつもりだ。もし相性が悪ければ他の魔剣にチェンジもあり得る。

 六階分の階段を下りて中庭へ出る。

 既に彩希は到着していた。

 陽光に包まれる中庭で、彩希の金色の髪は濡れたような美しい艶を纏っていた。

 すっと伸びた背筋。凛とした佇まい。

 そよ風がふわりと彼女のポニーテールを揺らす。太陽は彼女を照らすために存在しているのではないかとさえ思える。

 ある種の幻想――夢幻まで想起させるような美しさだった。この光景――空間に干渉することに躊躇いを抱きながらも、俺は彩希へと近付き、挨拶をする。

「……おはよう」

 彩希はくるりと優雅に振り向いて、蕾が綻ぶような可憐な笑みを見せる。

「おはようございます、兄様」

「ん。……じゃあ、早速授業を始めようか」

「はい。魔剣、結構練習したんですよ?」

「それは楽しみだな」

 足元に――地面に置くのではなく、少し浮遊した状態で――あった魔剣を持って、彩希は「見ててくださいね」と言った。

 ……練習期間は一週間もなかったけど、凄いことになってる気がするな……。
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