異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第一章

第六十四話 誤解されたからと言って取り乱すような真似はしない

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 彩希は弥生さんがこちらを見ていたことに気づかなかったらしい。

 ……誤解されたからと言って――そして誤解は時間が経つにつれてその名前を事実に近付けていくからと言って――授業を中断するわけにはいかない。

 魔剣の扱い方は全く問題なし。魔法の射程が伸びたことも素晴らしい。

 俺は彩希にそう告げて、知識として知っておくべき魔剣の作り方について解説をした。

「……理解はできましたけど……」

「……まあ、実際に作ることは滅多にないと思うから、構造について理解できてれば大丈夫」

 ……と、そんな感じで授業開始から二時間が経った。自室へと戻る彩希と別れ、俺は――途方に暮れる。

 いやまだ暮れてない。まだいける。多分。

 とりあえず弥生さんに会わない事には何も始まらないので、弥生さんが居そうな場所に行かねばならない。弥生さんが部屋に居る、もしくは外出していたらどうしようもないので、それらの選択肢を削って弥生さんに会える場所の候補を考えると……。

「まあ、図書室だよな……」

 呟いて、図書室へと向かった。

 ○

 案の定、弥生さんは図書室で本を読んでいた。

 弥生さんは俺が図書室に入ってくるのを見ると――先程の取り乱しようが嘘のように、夢だったっかのように大人びた笑みでもって俺を迎えた。

 おや?

 誤解なんてされていなかったのかもしれない。あれはただ授業を妨げたことに対しての言葉だった……のかな。

「由理君」

「はい」

「……そのね。そういうのも、素敵だと思う」

「……はい?」

「見識が狭かったというか……考えが固定されていたみたい」

「……え、いやちょっと」

「そうだよね。愛の形は千差万別だから、あなたたち兄妹の間にぴったり嵌まる形のものがあっても全く不思議じゃない……」

 駄目だまずい。完全に誤解されて一周回って理解されてるだけだ。弥生さんは小さく頷いて、応援してるから、と俺の目を見た。

 流れを変えないと……。

「……弥生さん」

「どうしたの?」

 と言ってもどう説明すればいいものやら……。

 頑張ったご褒美を要求されるから頭を撫でてるだけです、なんて言いぐさ(事実だけど)が通るとも思えないし……。

「え、えーと……極星国では挨拶代わりに頭を撫でるものなんですよ」

「…………」

「…………」

「…………」

「嘘ですすいません」

 プランいちは不発。

 ……そうだ。弥生さんからどう見えていたかを知らなければ対処ができない。

「……弥生さんが見た光景を教えてください。角度の問題で事実とは全く異なった見え方をしてるかもしれないので……」

「……えっと、君たちが――その、キスをしそうなくらい近付いて、彩希ちゃんが頭を撫でられてて……」

 ……うーん。

 ほぼ事実ですねこれ。

 どないしよ。
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