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第二章
第八十五話 或る魔法の探究
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● 久宮誓依
美味しい……。
高級な食材は用意できませんでしたけど……と佳那ちゃんは苦笑していたが、だからこそ料理の腕前の高さが際立つ。
細やかな味付けが食材本来の資質を十全に引き出している……と思う。
私はそこまで料理は詳しくないけど、これらの料理を作った人達が一流と称えられる腕を持っていることは理解できる。理解させられる。
「すごく美味しいですよね」
隣に座る夢乃ちゃんが笑みを零す。私はこくこくと頷いた。
「こんなに美味しい料理を食べるのは初めて……」
「沢山食べてくださいね。昨夜はちょっとしたものしか用意できませんでしたから」
私は(ちょっとしたもの?と思ったけど)再びこくこくと頷いた。
●
朝食が終わって、今日一日をどう過ごそうかと思いながら城内を歩いていると、中庭近くのテーブルで彩希ちゃんと悠可ちゃんが勉強しているのが見えた。
二人は時に微笑みを浮かべ、時に意見を交わしながら勉強を進めているようだった。
邪魔しないように退散しようかと思ったところで、彩希ちゃんがぱっと顔を上げ、私の方を見た。
「誓依さ―――んっ」
元気で綺麗な声だった。声に導かれるように悠可ちゃんも顔を上げて、彩希ちゃんに似た可憐な笑みを浮かべる。
近付いていって、「おはよう」と挨拶すると、上品なお辞儀と共に挨拶が返ってくる。緩やかに流れる川のような流麗な動きだった。
「……ちょっと教えてもらいたいことがあって……」
凄まじい引力を持つ上目遣いだった。こんな頼み方をされたら由理は絶対に拒めないだろう。私も拒めない。
「何でも聞いて」
「『夜明ケノ誓イ』の構成ってご存じですか?」
……あの魔法ねー。由理が格好つけて私の名前を組み込んだりするからちょっと恥ずかしいというかなんというか、いや今はそんなこと関係ない。
「……わからない、けど……ちょっと考えてみる」
「私たちもここまで考えてみたんですけど……」
悠可ちゃんがノートを向けてくれる。
……普通の魔法だったらこれが完成形なんじゃないかと思うような複雑な図形が描かれている。……でもあの魔法の効果は魔力の質を根本的に変容させるものだから……。
「……原初魔法だけで作ってるのよね……」
組み合わせであんな術式が出来るとは思えないんだけどなぁ。……立体魔法陣構造だろうから、重層的に魔法を組み合わせられるにしても……。
立体魔法陣構造……。
「……由理って、本書いてないの?」
「本……ですか?」
首を傾げる二人。可愛らしいことこの上ない。
「魔法の解説本みたいな……」
そこまで言ったところで、彩希ちゃんが「あ」と呟いた。
「時明祈利名義の、魔術大全っていう本があります」
「そこに載ってるんじゃないかしら」
完全に記憶を持ち越せる確証はなかっただろうし……。
「じゃあ、図書室へ行きましょう」
仲良く寄り添う二人の、その少し後ろを歩き始める。
美味しい……。
高級な食材は用意できませんでしたけど……と佳那ちゃんは苦笑していたが、だからこそ料理の腕前の高さが際立つ。
細やかな味付けが食材本来の資質を十全に引き出している……と思う。
私はそこまで料理は詳しくないけど、これらの料理を作った人達が一流と称えられる腕を持っていることは理解できる。理解させられる。
「すごく美味しいですよね」
隣に座る夢乃ちゃんが笑みを零す。私はこくこくと頷いた。
「こんなに美味しい料理を食べるのは初めて……」
「沢山食べてくださいね。昨夜はちょっとしたものしか用意できませんでしたから」
私は(ちょっとしたもの?と思ったけど)再びこくこくと頷いた。
●
朝食が終わって、今日一日をどう過ごそうかと思いながら城内を歩いていると、中庭近くのテーブルで彩希ちゃんと悠可ちゃんが勉強しているのが見えた。
二人は時に微笑みを浮かべ、時に意見を交わしながら勉強を進めているようだった。
邪魔しないように退散しようかと思ったところで、彩希ちゃんがぱっと顔を上げ、私の方を見た。
「誓依さ―――んっ」
元気で綺麗な声だった。声に導かれるように悠可ちゃんも顔を上げて、彩希ちゃんに似た可憐な笑みを浮かべる。
近付いていって、「おはよう」と挨拶すると、上品なお辞儀と共に挨拶が返ってくる。緩やかに流れる川のような流麗な動きだった。
「……ちょっと教えてもらいたいことがあって……」
凄まじい引力を持つ上目遣いだった。こんな頼み方をされたら由理は絶対に拒めないだろう。私も拒めない。
「何でも聞いて」
「『夜明ケノ誓イ』の構成ってご存じですか?」
……あの魔法ねー。由理が格好つけて私の名前を組み込んだりするからちょっと恥ずかしいというかなんというか、いや今はそんなこと関係ない。
「……わからない、けど……ちょっと考えてみる」
「私たちもここまで考えてみたんですけど……」
悠可ちゃんがノートを向けてくれる。
……普通の魔法だったらこれが完成形なんじゃないかと思うような複雑な図形が描かれている。……でもあの魔法の効果は魔力の質を根本的に変容させるものだから……。
「……原初魔法だけで作ってるのよね……」
組み合わせであんな術式が出来るとは思えないんだけどなぁ。……立体魔法陣構造だろうから、重層的に魔法を組み合わせられるにしても……。
立体魔法陣構造……。
「……由理って、本書いてないの?」
「本……ですか?」
首を傾げる二人。可愛らしいことこの上ない。
「魔法の解説本みたいな……」
そこまで言ったところで、彩希ちゃんが「あ」と呟いた。
「時明祈利名義の、魔術大全っていう本があります」
「そこに載ってるんじゃないかしら」
完全に記憶を持ち越せる確証はなかっただろうし……。
「じゃあ、図書室へ行きましょう」
仲良く寄り添う二人の、その少し後ろを歩き始める。
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