アイドルのマネージャーなんてしませんからっ!

夕紅

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休日

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結局その日は何事も無く過ごせた。
海斗にも一線を超えない理性は有るようだ。
しかし懸念は有る。
明日は土曜日。
だけれど私は決して流されない。
アイドルのマネージャーなんてしませんからっ!



翌日。
はい、無駄でした。
私の決意は簡単に崩れ去りましたとさ。
帽子を被っただけの海斗がリムジンで家の前に到着した時、私には乗りに行く以外の選択肢が無かった。
もしも海斗が私の家の前でリムジンから降りて姿を現わせば、想像したくもないような混乱が訪れることだろう。
それにしても、リムジンは広い。車内特有の悪臭もしない。
悪びれる様子など欠片もない海斗の隣で、私は車に揺られている。
確かに海斗の容姿は優れている。
しかしそれが一体なんだと言うのだろうか。
私はソシャゲをして奪われた時間を取り返していた。

「可奈、何してんの?」

海斗が私に近付き、スマホの画面を覗こうとする。

「ソシャゲですけど。。。。。。」

「へえ、タイトルは?」

「世界樹の盆栽って名前です」

「ふふっ、変わった名前だね」

海斗は笑った。
自然な笑顔だった。
私に見せた意地悪な笑顔や、街中の巨大広告で見かける作り物のような笑顔ではなくて、屈託の無い優しい笑顔。
こんな顔もするんだ、と私は思う。

「世界樹の盆栽かあ。世界樹って、北欧神話に登場するユグドラシルの事だよね」

「はい。北欧神話で、世界を構築する巨大な樹木です」

「なんでユグドラシルって言うんだろう?意味は有るのかな?」

「ユグドラシルは、北欧神話の主神、『オーディーンの馬』と言う意味みたいですよ。
『オーディーン』の別名が『ユッグ』で、『ドラシル』は馬と言う意味だそうです」

「へえ、そうなんだ。オーディーンの馬かあ。樹を馬って呼ぶのも変な感じ」

海斗はそう言うと、天井を見上げた。
リムジンの天井の向こうに、天上の星々を見ているのかも知れない。
スターとしての海斗は知らないが、こうして話していると好きになりそうだ。



しばらくすると、リムジンは現場に到着した。

「今から歌番組の収録だから、しっかり聞くんだよ」

海斗は私に近付き指示(?)を出す。

「聞かなかったら、どうなるんですか?」

クビだろうか。それならそれで良いんだけど。

「お仕置き」

海斗は私にキスをして、リムジンから降りた。

この後、私は柳生海斗と言う人間の圧倒的なスター性を目の当たりにする事になる。

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