草稿集

藤堂Máquina

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迷路

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 人は生まれながらにして迷うことが定められている。

 その証拠に迷いのない人間など殆どいない。

 迷いのない人間に当てはまるのは少なからずの欠陥を抱えている人間であり、動物に近い立場の存在なのだ。

 人生とは生まれた時に始まり、そして複数の終着地を抱えた迷路なのだ。

 欠陥を抱えた人間はそこですれ違う人々を無視し、終着地へ向かって一直線に歩み続ける。

 壁があろうとなかろうと、方向だけを予測して疑いもせずに進もうとするのだ。

 人との関わりというのは行き止まりやほかの道の情報を得るための最も基本的な手段である。

 哲学者や心理学者というのは終着地へと向かうのではなく、迷路の構造や迷い込んだ人々の心理状態の探求をしているのである。

 こうした迷路に迷い込んだ人の中には「天才」と呼ばれる他の人から情報を与えられなくても、自ら終着地への道筋を辿ることができる。

彼らが他の人と接するのは彼らの直感の確証を得るというそれだけの場合も多い。

 もちろん中には他の人に協力したりするが、本来は必要のないことなのだ。

 そして彼ら「天才」というものの元々の能力というのは他の人々から見ると規則に反するもののように見えるようで、凡人たちは凡人たちの決めたルールを民主主義という身勝手な正当化で肯定しては天才を縛り付けようとする。

 この迷路で一番問題となるのは「ミノタウルス」である。
 
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