二度目の語りはどうあれ花よ

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7語り

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そうして、ケンシローは熊様と数年ぶりの再会を果たした。
修行僧用の無地の作務衣ではなく、上等と一目で分かる着物に男らしい茶筅の髪型。
背筋を伸ばしてどしりと座る姿は安定感があって、大人になられたのだなとしみじみ実感したものだった。

「熊様の元服にはお目通りできなかったからね、お祝いの言葉の一つも贈れなかったけど……」
「ケンシローさん……」
「まさかあれから更に成長するとは思ってなかったんだけど……」
「ケンシローさん……」

当時は齢十三から十五に行うとされていた成人の儀式である元服の後も、成長を続けるのは生物として当然のこと。
更に子供の頃は華奢だと陰口を叩かれていたとはいえ、向こうは鬼の一族である。
最終的に鬼松 千熊は百九十センチを超える偉丈夫であったと伝わるまでになる。

「寺では私と剣術の稽古して負けて泣いたり、城の模型作ろうとして持ち込んだ土で寝床をぐしゃぐしゃにして怒られたり、戦の練習をしようとしてお堂の壁に穴開けたりそれを誤魔化そうとして悪化させて柱折ったりしてた熊様があんなに立派になって……」
「ケンシローさん、背丈超されたの根に持ってるのですか」

昔を懐かしむふりをして主人を貶めているケンシローはといえば、百八十センチ足らずといったところか。

そういえば、とロッテは思いついたことを口に出して熊様の情報流出を止めた。

「褒賞というのは、臣下の方全員に渡されたのですか」
「いや、ある程度の武功が確認できた者にだけだったかな。
首実検っていう……うん、まあこの話は止めとこう」
「? 他の方も屋敷を所望されたのですか」
「いいや? 普通は治められる土地だったり、刀や茶器の物だったり、あとは氏名をもらったりかな」
「氏名」
「檜山家みたいに実績のある家柄じゃない人は、跡継ぎのいない別の家に養子に行ったりすることがあったんだよね。
氏名を賜るってのは、その仲介をしてもらう、ってことかな。
お父様が亡くなられたばっかりで、まだ守護代の跡を継いでない熊様が好きにできることは少なかったけど、全員の希望に誠実に対応してくれたよ」

なるほど、と一つ頷いたロッテは、言いにくそうにそろりと視線を上げた。

「アントニアちゃんが言っていたのですが」
「うん」
「その褒賞で氏名をもらって、檜山家の四男ではなく別の家の長男、のような立ち位置になれば熊様のお側に仕えることは可能だったのでは、と……」
「……」
「あの、もちろんケンシローさんのご家族は健在でしたでしょうし、それでややこしくなったかも、でしょうし!」

部外者が口を出してすみません、さすがに考えてましたよね!
と、言いかけたロッテは口を閉じる。

目の前の男は逆に口をポカンと開けて、目の瞳孔すら開き気味。
ぶわぶわと逆立った毛は、いつぞや流行った宇宙を背負う獣のようであった。
顔には『その発想はなかった』とでかでかと書かれている。

「考えて……なかったんですね」

ロッテは提案を口に出したことをちょっぴり後悔した。
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