39 / 44
休憩時間
しおりを挟む
「ところで、そろそろ決めました?」
「なにを?」
「召喚の対価です」
唐突に投げかけられた質問の主語を聞き返せば、そういえばそんな話もあったな、という懐かしささえ感じる答えが返ってきた。
召喚されたケンシローは己の生涯を語る。
召喚したロッテはその対価を払う。
ロッテが叶えられる範囲であるなら、対価の内容はケンシローの好きに決めていいという契約で、双方は了解していたのだった。
対価について考えていなかったな、とケンシローは思考を止める。
記憶を掘り返しつつ話をするということを長時間続けていたせいで、頭の奥がじんわりと疲労感を感じているのがわかった。
「うーん……」
「やはり思いつきにくいものですか?」
「というより、ロッテちゃんになにができるかを知らないからどんな対価にすれば了解がもらえるのかわからない」
腕を組んで首を傾げ、典型的な考えているポーズをとるケンシローの言い分に、ロッテはなるほどと相槌を打つ。
空になってしまった菓子入れに追加分を補充しながら、では、と人差し指を立てた。
「ひとまずケンシローさんが叶えたい願いを上げていってください。
それを私が実現可能か判断します」
「なるほど」
がらがらがら、と個包装された飴やチョコが菓子入れに満たされていく音をBGMに、ケンシローは目を閉じた。
己の願い。
熊様の家来となること。
熊様の『人でありたい』という願いを支えるべく、至国の人々の健康を保つこと。
それから、もっと個人的で、小さくて、あまりに傲慢な、願い。
膝に置かれた手が、きゅっと握られた。
「ごめんね、今のところ思いつかないや」
「……そうですか」
へらりと眉を下げた苦笑い。
明らかに誤魔化したそれを、ロッテは肯定するしかなかった。
「ああ、でも、今食べてるお菓子! これ美味しいよね、できたらもっと欲しいしお薦めの食べ物があったら食べたい」
「お望みならばいくらでも」
まだまだありますよ、とロッテはどっさどっさと菓子の袋をどこからか取り出していく。
『ファミリーパックお徳用』と印刷された文字の大きさと数にさしもの食欲旺盛なケンシローも若干怯んだ。
「ネデル国の美味しいものは他にもたくさんあります。
なんでしたら数日滞在して、グルメ観光していかれるのはいかがでしょう」
「なにそれ楽しそう」
グルメ旅行記を書いたことのある作家が食いついた。
過去ばかりを語っていた、小さな部屋の中。
なにが有名なの、シュニッツェルなどどうでしょう、と、しばし未来の展望を話し合う声が賑やかに響いたのだった。
「なにを?」
「召喚の対価です」
唐突に投げかけられた質問の主語を聞き返せば、そういえばそんな話もあったな、という懐かしささえ感じる答えが返ってきた。
召喚されたケンシローは己の生涯を語る。
召喚したロッテはその対価を払う。
ロッテが叶えられる範囲であるなら、対価の内容はケンシローの好きに決めていいという契約で、双方は了解していたのだった。
対価について考えていなかったな、とケンシローは思考を止める。
記憶を掘り返しつつ話をするということを長時間続けていたせいで、頭の奥がじんわりと疲労感を感じているのがわかった。
「うーん……」
「やはり思いつきにくいものですか?」
「というより、ロッテちゃんになにができるかを知らないからどんな対価にすれば了解がもらえるのかわからない」
腕を組んで首を傾げ、典型的な考えているポーズをとるケンシローの言い分に、ロッテはなるほどと相槌を打つ。
空になってしまった菓子入れに追加分を補充しながら、では、と人差し指を立てた。
「ひとまずケンシローさんが叶えたい願いを上げていってください。
それを私が実現可能か判断します」
「なるほど」
がらがらがら、と個包装された飴やチョコが菓子入れに満たされていく音をBGMに、ケンシローは目を閉じた。
己の願い。
熊様の家来となること。
熊様の『人でありたい』という願いを支えるべく、至国の人々の健康を保つこと。
それから、もっと個人的で、小さくて、あまりに傲慢な、願い。
膝に置かれた手が、きゅっと握られた。
「ごめんね、今のところ思いつかないや」
「……そうですか」
へらりと眉を下げた苦笑い。
明らかに誤魔化したそれを、ロッテは肯定するしかなかった。
「ああ、でも、今食べてるお菓子! これ美味しいよね、できたらもっと欲しいしお薦めの食べ物があったら食べたい」
「お望みならばいくらでも」
まだまだありますよ、とロッテはどっさどっさと菓子の袋をどこからか取り出していく。
『ファミリーパックお徳用』と印刷された文字の大きさと数にさしもの食欲旺盛なケンシローも若干怯んだ。
「ネデル国の美味しいものは他にもたくさんあります。
なんでしたら数日滞在して、グルメ観光していかれるのはいかがでしょう」
「なにそれ楽しそう」
グルメ旅行記を書いたことのある作家が食いついた。
過去ばかりを語っていた、小さな部屋の中。
なにが有名なの、シュニッツェルなどどうでしょう、と、しばし未来の展望を話し合う声が賑やかに響いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる