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【第1章】相方との距離
8.“受け”認定? 逃げ場なし
side 純
帰りの車の中、直人はやけに機嫌がいい。
……けど、わざとらしく俺の顔を覗き込むみたいな視線が鬱陶しい。
「純さ」
「……なんだよ」
「俺のこと、好きだよね?」
「は?」
一拍遅れて心臓がドキンと跳ねる。
……直人のこと。
そりゃ、まあ、好きだけどさ。
だって悪い奴じゃねえし。いや、悪いどころか良い奴だと思う。
仕事に対して真面目だし、優しいとこあるし、ルックスもいいし。
でも、それをそのまんま素直に言えるほど器用じゃない。
「……まあ、好きなんじゃねえの」
自分でも嫌になるくらい、ぶっきらぼうな声が出た。
絶対今、顔が赤い。
直人は案の定、楽しそうに笑う。
「じゃあ例えばさ、俺と純が付き合ったとして……」
「なんでそうなるんだよ」
「だから例えばって言ってるじゃん」
「……で、何」
「純は俺と、Hできる?」
「はぁっ!? いきなり何言ってんだよ!」
いや、おかしいだろ。
ていうか、動揺してるのはバレバレだと思う。
「ちょっと、静かにしなよ。運転手さんびっくりするじゃん」
「いや、お前が変なこと言うからだろ」
「で? どうなの」
「そんなこと……お前をどうしたいとか、考えたことねぇし」
「ふーん。俺を、って言い方するってことは……純が攻めるつもりなんだ?」
「そうなるだろ!」
即答した俺に、直人は小さく肩をすくめた。
「無理でしょ」
「なんでだよ!」
「だってさ。純、完全に受けの顔してたもん」
「はぁ?!」
「照れた顔とか、押し倒されたときの反応とか。全部」
からかうような声。
ムカつくのに、言い返せない。
「ほら、これ見てみなよ」
直人がスマホを差し出す。
画面に映っていたのは、今日撮影されたばかりの雑誌サイト。
トップページに、あのシーン――俺と直人のキスカットが載っている。
……最悪。
ベッドに押し倒され、直人にキスされてる。
その一瞬を切り取った写真なのに、妙にリアルで、まるで本物のカップルみたいに見える。
コメント欄は、もっと最悪だった。
“純くん、完全に受けだよね”
“直人くんの攻め顔がやばい”
“公式で攻め受け確定ありがとう”
「なんでだよっ!」
裏返った声は思ったより大きくて、直人は横で笑いをこらえてる。
「ほら、公式認定。ファンも喜んでるし」
「笑うな! 俺は攻めのつもりでやってんだよ!」
「あの顔で?」
直人が目を細める。
その表情がやけに色っぽくて、余計に腹が立つ。
「つか、お前……本気でキスしてただろ」
「演技だよ、演技」
「……舌入れてたよな」
「リアルさ重視だから」
悪びれない声にむかついた。
……なのに、ほんの一瞬、あのキスの感触が頭をよぎる。
「っ……」
あんなふうに心臓を掴まれるなんて。
言葉を失うほど、揺さぶられるなんて。
きっと、こいつだから……。
慌てて頭を振ったら、「顔真っ赤」って頬に触られた。
「……触んな」
「いいじゃん別に」
「直人」
「ん?」
「次の撮影はキスシーンなしな」
「え、残念。俺、結構気に入ってたのに」
「気に入るな!」
思わず強く言い返す。
それが面白かったのか、直人はくすっと笑って、何事もなかったみたいにスマホを開いた。
表示されたのは、さっき見たばかりのサイト。
コメント欄が、また視界に入る。
“純くん受けっぽい”
“直人くんに抱かれてる純くんが見たい”
――結構ぐさぐさ、痛いとこ突いてくるよな。
画面を見つめたまま、ゆっくり息を吐いた。
……俺は、攻めだ。
それは事務所が決めた設定で、俺自身もそう思ってきた。
それなのに、ベッドに押し倒された瞬間の感覚が、まだ身体のどこかに残っている。
「純」
「……なんだよ」
「嫌じゃなかったでしょ」
その一言で喉が詰まる。
言い返そうとしたけど、できなかった。
帰りの車の中、直人はやけに機嫌がいい。
……けど、わざとらしく俺の顔を覗き込むみたいな視線が鬱陶しい。
「純さ」
「……なんだよ」
「俺のこと、好きだよね?」
「は?」
一拍遅れて心臓がドキンと跳ねる。
……直人のこと。
そりゃ、まあ、好きだけどさ。
だって悪い奴じゃねえし。いや、悪いどころか良い奴だと思う。
仕事に対して真面目だし、優しいとこあるし、ルックスもいいし。
でも、それをそのまんま素直に言えるほど器用じゃない。
「……まあ、好きなんじゃねえの」
自分でも嫌になるくらい、ぶっきらぼうな声が出た。
絶対今、顔が赤い。
直人は案の定、楽しそうに笑う。
「じゃあ例えばさ、俺と純が付き合ったとして……」
「なんでそうなるんだよ」
「だから例えばって言ってるじゃん」
「……で、何」
「純は俺と、Hできる?」
「はぁっ!? いきなり何言ってんだよ!」
いや、おかしいだろ。
ていうか、動揺してるのはバレバレだと思う。
「ちょっと、静かにしなよ。運転手さんびっくりするじゃん」
「いや、お前が変なこと言うからだろ」
「で? どうなの」
「そんなこと……お前をどうしたいとか、考えたことねぇし」
「ふーん。俺を、って言い方するってことは……純が攻めるつもりなんだ?」
「そうなるだろ!」
即答した俺に、直人は小さく肩をすくめた。
「無理でしょ」
「なんでだよ!」
「だってさ。純、完全に受けの顔してたもん」
「はぁ?!」
「照れた顔とか、押し倒されたときの反応とか。全部」
からかうような声。
ムカつくのに、言い返せない。
「ほら、これ見てみなよ」
直人がスマホを差し出す。
画面に映っていたのは、今日撮影されたばかりの雑誌サイト。
トップページに、あのシーン――俺と直人のキスカットが載っている。
……最悪。
ベッドに押し倒され、直人にキスされてる。
その一瞬を切り取った写真なのに、妙にリアルで、まるで本物のカップルみたいに見える。
コメント欄は、もっと最悪だった。
“純くん、完全に受けだよね”
“直人くんの攻め顔がやばい”
“公式で攻め受け確定ありがとう”
「なんでだよっ!」
裏返った声は思ったより大きくて、直人は横で笑いをこらえてる。
「ほら、公式認定。ファンも喜んでるし」
「笑うな! 俺は攻めのつもりでやってんだよ!」
「あの顔で?」
直人が目を細める。
その表情がやけに色っぽくて、余計に腹が立つ。
「つか、お前……本気でキスしてただろ」
「演技だよ、演技」
「……舌入れてたよな」
「リアルさ重視だから」
悪びれない声にむかついた。
……なのに、ほんの一瞬、あのキスの感触が頭をよぎる。
「っ……」
あんなふうに心臓を掴まれるなんて。
言葉を失うほど、揺さぶられるなんて。
きっと、こいつだから……。
慌てて頭を振ったら、「顔真っ赤」って頬に触られた。
「……触んな」
「いいじゃん別に」
「直人」
「ん?」
「次の撮影はキスシーンなしな」
「え、残念。俺、結構気に入ってたのに」
「気に入るな!」
思わず強く言い返す。
それが面白かったのか、直人はくすっと笑って、何事もなかったみたいにスマホを開いた。
表示されたのは、さっき見たばかりのサイト。
コメント欄が、また視界に入る。
“純くん受けっぽい”
“直人くんに抱かれてる純くんが見たい”
――結構ぐさぐさ、痛いとこ突いてくるよな。
画面を見つめたまま、ゆっくり息を吐いた。
……俺は、攻めだ。
それは事務所が決めた設定で、俺自身もそう思ってきた。
それなのに、ベッドに押し倒された瞬間の感覚が、まだ身体のどこかに残っている。
「純」
「……なんだよ」
「嫌じゃなかったでしょ」
その一言で喉が詰まる。
言い返そうとしたけど、できなかった。
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