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【第2章】下から大好きって言われたい
4.落ちてきたのは、照明と……本音
side 純
移動中、俺と直人は一言も話さなかった。
車窓を流れていく景色を、意味もなく目で追いながら沈黙を保ってる。
――こんなの、ユニットを組んでから初めてかもしれねぇ。
気まずいのは嫌だ。
だけど、じゃあどんな顔でどんな言葉を投げればいいのかが分からない。
直人は隣で、ずっとスマホの画面見てる。
でも、全然スクロールしてねぇし。
……なんか、考えてんのかな。
沈黙って、時間が経つほど重くなるんだな。
空気が固まっていくみたいで息苦しい。
気づけば、当たり前だった距離感が少しずつズレていて、じわじわと居心地の悪さに変わってく。
次の現場に着き、スタジオの入口で直人が足を止める。
振り返ったその視線は、何かを言いかけているみたいで。
「何してんだよ、行くぞ」
そう言った瞬間、直人が俺の手首を掴んだ。
思わず息を呑むほど、強い。
「純」
低く抑えた声。
そこに滲んだ感情を、見ないふりはできなかった。
「収録中は普通に接して」
「あぁ、当たり前だろ。俺だって何も考えてないわけじゃねぇから」
自分で放った言葉の棘に、胸がチクリとした。
……もう少し、優しく言えたよな。
そう思ったものの、“ごめん”が口から出てこない。
直人の顔を見る勇気も、なんかなくて。
「直人さん!」
その時、不意に明るい声が響いた。
若手の男性タレントが駆け寄り、その隣には、以前直人がドラマで共演してた俳優がいる。
「SNSに写真あげてもいいですか?」
無邪気な笑顔に、俺は反射的に頷いてしまった。
「直人さんをお借りしますね」
そう言って、二人は直人を真ん中に挟み込む。
「直人さん、前のドラマ最高でした!」
「あ、俺もです。あのシーン、めっちゃ泣いちゃって」
「ありがとう。楽しい現場だったからね」
直人は仕事用の柔らかい笑顔を向けてる。
若手タレントが、少し照れたように笑った。
「直人さんって、すごく優しいですよね。また共演したいです」
「こちらこそ。機会があればぜひ」
俳優の方も嬉しそうに頷いて、直人の肩に手を置く。
「俺、直人さんのファンなんですよ。ずっと応援してます」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
ふうん。なんだよ、それ。
俺が元メンバーに「大好き」って言っただけで拗ねるくせに、他の奴らにはそんな顔するのかよ。
……いや、ちょっとまて。
拗ねてんのはどっちだよ。
別に直人が誰と話そうが、誰に笑おうが関係ねぇし。
それに、仕事なんだから当たり前だろうが。
そう分かってるのに、なぜか胸の奥の靄は消えなかった。
「はぁ……」
小さく息を吐いて、腕時計を見る。
明日は朝九時集合。今日は早く終わってくれればいいんだけどな。
気を紛らわせるように、少し離れてセットを眺める。
収録前の様子をSNSに上げようと、スマホを取り出しかけた、その時だった。
ギシ……
ミシミシ……
天井の方から、不穏な音。
……なんだ?
嫌な予感が背中を走った。
「純!」
鋭い叫び声が耳を突き刺す。
次の瞬間、視界が横に流れた。
直人が俺を抱きしめるように倒れ込んでくる。
ドンッ――
背中に衝撃。
床に倒れた俺の上に、直人が完全に覆い被さってきた。
その直後、頭上から凄まじい音。
ガシャン!
ガラガラッ!
照明や機材が、雨のように降ってきた。
ほんの数秒前まで、俺が立っていた場所に容赦なく――。
直人に助けられなかったら、確実に直撃してた。
「っ……」
恐怖と衝撃で、息が詰まる。
「……純……だい……じょうぶ……?」
耳元で、掠れた声が聞こえた。
頭を打ったせいか、視界が滲んでいく。
「直人……俺は……」
“大丈夫”
“ごめん”
“お前こそ、大丈夫かよ”
言いたいことは、いくつもあった。
なのに、どれも喉の奥で絡まって、言葉にならない。
――ああ、やっぱり。
俺、直人のことが好きなんだ。
そんな当たり前みたいな答えが、今さらになって、静かに胸の奥に落ちてきた。
「純……」
呼ばれて、腕に込められる力がほんの少しだけ強くなる。
その温もりに縋るように、かろうじて息を整えながら――
俺は、そのまま意識を手放した。
移動中、俺と直人は一言も話さなかった。
車窓を流れていく景色を、意味もなく目で追いながら沈黙を保ってる。
――こんなの、ユニットを組んでから初めてかもしれねぇ。
気まずいのは嫌だ。
だけど、じゃあどんな顔でどんな言葉を投げればいいのかが分からない。
直人は隣で、ずっとスマホの画面見てる。
でも、全然スクロールしてねぇし。
……なんか、考えてんのかな。
沈黙って、時間が経つほど重くなるんだな。
空気が固まっていくみたいで息苦しい。
気づけば、当たり前だった距離感が少しずつズレていて、じわじわと居心地の悪さに変わってく。
次の現場に着き、スタジオの入口で直人が足を止める。
振り返ったその視線は、何かを言いかけているみたいで。
「何してんだよ、行くぞ」
そう言った瞬間、直人が俺の手首を掴んだ。
思わず息を呑むほど、強い。
「純」
低く抑えた声。
そこに滲んだ感情を、見ないふりはできなかった。
「収録中は普通に接して」
「あぁ、当たり前だろ。俺だって何も考えてないわけじゃねぇから」
自分で放った言葉の棘に、胸がチクリとした。
……もう少し、優しく言えたよな。
そう思ったものの、“ごめん”が口から出てこない。
直人の顔を見る勇気も、なんかなくて。
「直人さん!」
その時、不意に明るい声が響いた。
若手の男性タレントが駆け寄り、その隣には、以前直人がドラマで共演してた俳優がいる。
「SNSに写真あげてもいいですか?」
無邪気な笑顔に、俺は反射的に頷いてしまった。
「直人さんをお借りしますね」
そう言って、二人は直人を真ん中に挟み込む。
「直人さん、前のドラマ最高でした!」
「あ、俺もです。あのシーン、めっちゃ泣いちゃって」
「ありがとう。楽しい現場だったからね」
直人は仕事用の柔らかい笑顔を向けてる。
若手タレントが、少し照れたように笑った。
「直人さんって、すごく優しいですよね。また共演したいです」
「こちらこそ。機会があればぜひ」
俳優の方も嬉しそうに頷いて、直人の肩に手を置く。
「俺、直人さんのファンなんですよ。ずっと応援してます」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
ふうん。なんだよ、それ。
俺が元メンバーに「大好き」って言っただけで拗ねるくせに、他の奴らにはそんな顔するのかよ。
……いや、ちょっとまて。
拗ねてんのはどっちだよ。
別に直人が誰と話そうが、誰に笑おうが関係ねぇし。
それに、仕事なんだから当たり前だろうが。
そう分かってるのに、なぜか胸の奥の靄は消えなかった。
「はぁ……」
小さく息を吐いて、腕時計を見る。
明日は朝九時集合。今日は早く終わってくれればいいんだけどな。
気を紛らわせるように、少し離れてセットを眺める。
収録前の様子をSNSに上げようと、スマホを取り出しかけた、その時だった。
ギシ……
ミシミシ……
天井の方から、不穏な音。
……なんだ?
嫌な予感が背中を走った。
「純!」
鋭い叫び声が耳を突き刺す。
次の瞬間、視界が横に流れた。
直人が俺を抱きしめるように倒れ込んでくる。
ドンッ――
背中に衝撃。
床に倒れた俺の上に、直人が完全に覆い被さってきた。
その直後、頭上から凄まじい音。
ガシャン!
ガラガラッ!
照明や機材が、雨のように降ってきた。
ほんの数秒前まで、俺が立っていた場所に容赦なく――。
直人に助けられなかったら、確実に直撃してた。
「っ……」
恐怖と衝撃で、息が詰まる。
「……純……だい……じょうぶ……?」
耳元で、掠れた声が聞こえた。
頭を打ったせいか、視界が滲んでいく。
「直人……俺は……」
“大丈夫”
“ごめん”
“お前こそ、大丈夫かよ”
言いたいことは、いくつもあった。
なのに、どれも喉の奥で絡まって、言葉にならない。
――ああ、やっぱり。
俺、直人のことが好きなんだ。
そんな当たり前みたいな答えが、今さらになって、静かに胸の奥に落ちてきた。
「純……」
呼ばれて、腕に込められる力がほんの少しだけ強くなる。
その温もりに縋るように、かろうじて息を整えながら――
俺は、そのまま意識を手放した。
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