【完結】俺の相方、実は甘々執着系でした~BLアイドルの溺愛日常~

砂原紗藍

文字の大きさ
13 / 23
【第2章】下から大好きって言われたい

4.落ちてきたのは、照明と……本音

side 純

移動中、俺と直人は一言も話さなかった。
車窓を流れていく景色を、意味もなく目で追いながら沈黙を保ってる。

――こんなの、ユニットを組んでから初めてかもしれねぇ。

気まずいのは嫌だ。
だけど、じゃあどんな顔でどんな言葉を投げればいいのかが分からない。

直人は隣で、ずっとスマホの画面見てる。

でも、全然スクロールしてねぇし。
……なんか、考えてんのかな。

沈黙って、時間が経つほど重くなるんだな。
空気が固まっていくみたいで息苦しい。

気づけば、当たり前だった距離感が少しずつズレていて、じわじわと居心地の悪さに変わってく。

次の現場に着き、スタジオの入口で直人が足を止める。
振り返ったその視線は、何かを言いかけているみたいで。

「何してんだよ、行くぞ」

そう言った瞬間、直人が俺の手首を掴んだ。
思わず息を呑むほど、強い。

「純」

低く抑えた声。
そこに滲んだ感情を、見ないふりはできなかった。

「収録中は普通に接して」
「あぁ、当たり前だろ。俺だって何も考えてないわけじゃねぇから」

自分で放った言葉の棘に、胸がチクリとした。

……もう少し、優しく言えたよな。

そう思ったものの、“ごめん”が口から出てこない。
直人の顔を見る勇気も、なんかなくて。

「直人さん!」

その時、不意に明るい声が響いた。

若手の男性タレントが駆け寄り、その隣には、以前直人がドラマで共演してた俳優がいる。

「SNSに写真あげてもいいですか?」

無邪気な笑顔に、俺は反射的に頷いてしまった。

「直人さんをお借りしますね」

そう言って、二人は直人を真ん中に挟み込む。

「直人さん、前のドラマ最高でした!」
「あ、俺もです。あのシーン、めっちゃ泣いちゃって」
「ありがとう。楽しい現場だったからね」

直人は仕事用の柔らかい笑顔を向けてる。
若手タレントが、少し照れたように笑った。

「直人さんって、すごく優しいですよね。また共演したいです」
「こちらこそ。機会があればぜひ」

俳優の方も嬉しそうに頷いて、直人の肩に手を置く。

「俺、直人さんのファンなんですよ。ずっと応援してます」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」

ふうん。なんだよ、それ。
俺が元メンバーに「大好き」って言っただけで拗ねるくせに、他の奴らにはそんな顔するのかよ。

……いや、ちょっとまて。

拗ねてんのはどっちだよ。
別に直人が誰と話そうが、誰に笑おうが関係ねぇし。
それに、仕事なんだから当たり前だろうが。

そう分かってるのに、なぜか胸の奥の靄は消えなかった。

「はぁ……」

小さく息を吐いて、腕時計を見る。

明日は朝九時集合。今日は早く終わってくれればいいんだけどな。

気を紛らわせるように、少し離れてセットを眺める。
収録前の様子をSNSに上げようと、スマホを取り出しかけた、その時だった。

ギシ……
ミシミシ……

天井の方から、不穏な音。

……なんだ?

嫌な予感が背中を走った。

「純!」

鋭い叫び声が耳を突き刺す。

次の瞬間、視界が横に流れた。
直人が俺を抱きしめるように倒れ込んでくる。

ドンッ――

背中に衝撃。
床に倒れた俺の上に、直人が完全に覆い被さってきた。

その直後、頭上から凄まじい音。

ガシャン!
ガラガラッ!

照明や機材が、雨のように降ってきた。
ほんの数秒前まで、俺が立っていた場所に容赦なく――。

直人に助けられなかったら、確実に直撃してた。

「っ……」

恐怖と衝撃で、息が詰まる。

「……純……だい……じょうぶ……?」

耳元で、掠れた声が聞こえた。
頭を打ったせいか、視界が滲んでいく。

「直人……俺は……」

“大丈夫”
“ごめん”
“お前こそ、大丈夫かよ”

言いたいことは、いくつもあった。
なのに、どれも喉の奥で絡まって、言葉にならない。

――ああ、やっぱり。

俺、直人のことが好きなんだ。

そんな当たり前みたいな答えが、今さらになって、静かに胸の奥に落ちてきた。

「純……」

呼ばれて、腕に込められる力がほんの少しだけ強くなる。
その温もりに縋るように、かろうじて息を整えながら――
俺は、そのまま意識を手放した。


あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり