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【第2章】下から大好きって言われたい
5.相方の距離じゃ、足りない
気がつくと、視界いっぱいに白い天井が広がっている。
……ああ。ここ、病院か。
どうやらベッドの上らしい。
頭を打ったせいで検査やら何やらに時間はかかったけど、結果は打撲と擦過傷だけ。
大事には至らず、帰宅していいと言われた。
点滴を外され、簡単な説明を受けて処置室を出る。
……直人は。
あいつは、無事なのか?
心臓がバクバクなって、手のひらが汗ばむ。
嫌な予感ばかりが頭の中を占領してくる。
気づけば俺は、ロビーのベンチに腰を下ろしてスマホを握りしめていた。
落ち着け、と思いながら画面を操作する。
……でも、真っ先に目に飛び込んできたのは、さっきの事故のニュースだった。
天井近くに設置されていた照明が落下。
ワイヤーで繋がれ、スタンドも固定されていたはずなのに、支えごと崩れたらしい。
俺が元いた場所の写真も載っている。
照明器具がぐちゃぐちゃに散乱していて、正直、目を逸らしたくなるほどだ。
……あの状況で無事だったのは、ほんと奇跡だ。
いや――
あいつが、咄嗟に庇ってくれたからか。
「直人……」
まだ診察中なんだろうか。
怪我は? ……酷いのか?
さっきの光景が、頭の中で何度も再生される。
倒れ込んできた直人の重さ。
落ちてくる照明。
耳元で聞こえた、掠れた声。
全部が、ぐるぐる回って止まらない。
「……はぁ」
落ち着かねぇな……。
スマホの画面だって、さっきから同じところを眺めてるだけだ。
――どれくらい経った?
「純」
名前を呼ばれて、弾かれたように顔を上げる。
マネージャーと一緒に、直人が歩いてきた。
腕には包帯が巻かれている。
……痛々しい。
でも、ちゃんと立ってる。歩いてる。自分の足で。
……よかった。無事だ。
胸の奥で張り詰めていたものが、ふっと緩む。
「車取ってくるから、ちょっと待ってて」
マネージャーがそう言って離れた、その瞬間。
俺はもう、考えるより先に体を動かしていた。
立ち上がって、直人に抱きつく。
「直人……ごめん。ありがとうな」
「うん。純が元気そうで何より」
何より、じゃねぇだろ。
「いや、すげぇ心配したんだからな!」
「俺の方がだよ。上から照明降ってきた時、心臓止まるかと思った」
言い返して、言い返されて。
譲らないまま、気づけば苦笑がこぼれている。
……笑ってるのに、胸の奥が苦しい。
「俺のこと庇うとか、直人はバカだよな」
「純のためなら何でもするよ。バカは褒め言葉として受け取っとくね」
「……何言ってんだよ」
俺は、もう一度ぎゅっと直人を抱きしめる。
「でも、マジでありがと」
「純……」
「ん?」
「俺、お前がいなくなったら、多分おかしくなる」
直人がぽつりと呟いた。
いつもの明るい声じゃない。重くて、真剣で。
「だから……もう、俺の目の届かないところに行かないで」
「お前、何言って――」
「本気だよ」
真っ直ぐな視線が、逃げ場を塞ぐ。
心臓が、ドクンと跳ねた。
やばい、なんだこれ。
顔が熱い。耳まで熱くなってきてる。
「……あのさ」
唾を飲み込んで、言葉を絞り出す。
「俺も……お前が他の奴に笑いかけてるの、面白くねぇ」
直人の目が、はっきりと見開かれた。
「今日だって、タレントに囲まれてヘラヘラして……正直、イライラした」
「……純」
「だから、お互い様なんだよ。バカ」
こんなこと言うの、恥ずかしすぎる。
でも――もう、止められない。
「嫉妬してんのは、お前だけじゃねぇし」
言い切ったその瞬間。
直人の腕に、ぎゅっと力がこもる。
「……やっと言ってくれた」
耳元で落とされる声がやけに近い。
嬉しそうで、くすぐったくて、余計に心臓に悪い。
「じゃあさ、純」
「……なんだよ」
「お前、俺のこと好き?」
病院のロビーで聞くことかよ。
そう思うのに、否定する気はもう起きなかった。
――直人が好き。
自分の気持ちは、もうはっきりしてる。
今さら、誤魔化せない。
「……好きだよ」
小さく答えると、直人が嬉しそうに笑った。
「俺も、純が大好き」
その言葉に、胸が熱くなる。
ぎゅっと締め付けられるみたいに苦しい。
「……もう、帰るぞ」
誤魔化すみたいに顔を背ける。
「うん」
直人が、そっと俺の手を握ってくる。
握り返した指先が少しだけ震えているのは――気づかれてない。
……たぶん。
……ああ。ここ、病院か。
どうやらベッドの上らしい。
頭を打ったせいで検査やら何やらに時間はかかったけど、結果は打撲と擦過傷だけ。
大事には至らず、帰宅していいと言われた。
点滴を外され、簡単な説明を受けて処置室を出る。
……直人は。
あいつは、無事なのか?
心臓がバクバクなって、手のひらが汗ばむ。
嫌な予感ばかりが頭の中を占領してくる。
気づけば俺は、ロビーのベンチに腰を下ろしてスマホを握りしめていた。
落ち着け、と思いながら画面を操作する。
……でも、真っ先に目に飛び込んできたのは、さっきの事故のニュースだった。
天井近くに設置されていた照明が落下。
ワイヤーで繋がれ、スタンドも固定されていたはずなのに、支えごと崩れたらしい。
俺が元いた場所の写真も載っている。
照明器具がぐちゃぐちゃに散乱していて、正直、目を逸らしたくなるほどだ。
……あの状況で無事だったのは、ほんと奇跡だ。
いや――
あいつが、咄嗟に庇ってくれたからか。
「直人……」
まだ診察中なんだろうか。
怪我は? ……酷いのか?
さっきの光景が、頭の中で何度も再生される。
倒れ込んできた直人の重さ。
落ちてくる照明。
耳元で聞こえた、掠れた声。
全部が、ぐるぐる回って止まらない。
「……はぁ」
落ち着かねぇな……。
スマホの画面だって、さっきから同じところを眺めてるだけだ。
――どれくらい経った?
「純」
名前を呼ばれて、弾かれたように顔を上げる。
マネージャーと一緒に、直人が歩いてきた。
腕には包帯が巻かれている。
……痛々しい。
でも、ちゃんと立ってる。歩いてる。自分の足で。
……よかった。無事だ。
胸の奥で張り詰めていたものが、ふっと緩む。
「車取ってくるから、ちょっと待ってて」
マネージャーがそう言って離れた、その瞬間。
俺はもう、考えるより先に体を動かしていた。
立ち上がって、直人に抱きつく。
「直人……ごめん。ありがとうな」
「うん。純が元気そうで何より」
何より、じゃねぇだろ。
「いや、すげぇ心配したんだからな!」
「俺の方がだよ。上から照明降ってきた時、心臓止まるかと思った」
言い返して、言い返されて。
譲らないまま、気づけば苦笑がこぼれている。
……笑ってるのに、胸の奥が苦しい。
「俺のこと庇うとか、直人はバカだよな」
「純のためなら何でもするよ。バカは褒め言葉として受け取っとくね」
「……何言ってんだよ」
俺は、もう一度ぎゅっと直人を抱きしめる。
「でも、マジでありがと」
「純……」
「ん?」
「俺、お前がいなくなったら、多分おかしくなる」
直人がぽつりと呟いた。
いつもの明るい声じゃない。重くて、真剣で。
「だから……もう、俺の目の届かないところに行かないで」
「お前、何言って――」
「本気だよ」
真っ直ぐな視線が、逃げ場を塞ぐ。
心臓が、ドクンと跳ねた。
やばい、なんだこれ。
顔が熱い。耳まで熱くなってきてる。
「……あのさ」
唾を飲み込んで、言葉を絞り出す。
「俺も……お前が他の奴に笑いかけてるの、面白くねぇ」
直人の目が、はっきりと見開かれた。
「今日だって、タレントに囲まれてヘラヘラして……正直、イライラした」
「……純」
「だから、お互い様なんだよ。バカ」
こんなこと言うの、恥ずかしすぎる。
でも――もう、止められない。
「嫉妬してんのは、お前だけじゃねぇし」
言い切ったその瞬間。
直人の腕に、ぎゅっと力がこもる。
「……やっと言ってくれた」
耳元で落とされる声がやけに近い。
嬉しそうで、くすぐったくて、余計に心臓に悪い。
「じゃあさ、純」
「……なんだよ」
「お前、俺のこと好き?」
病院のロビーで聞くことかよ。
そう思うのに、否定する気はもう起きなかった。
――直人が好き。
自分の気持ちは、もうはっきりしてる。
今さら、誤魔化せない。
「……好きだよ」
小さく答えると、直人が嬉しそうに笑った。
「俺も、純が大好き」
その言葉に、胸が熱くなる。
ぎゅっと締め付けられるみたいに苦しい。
「……もう、帰るぞ」
誤魔化すみたいに顔を背ける。
「うん」
直人が、そっと俺の手を握ってくる。
握り返した指先が少しだけ震えているのは――気づかれてない。
……たぶん。
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