【完結】俺の相方、実は甘々執着系でした~BLアイドルの溺愛日常~

砂原紗藍

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【第3章】俺だけを見ていればいい

5.理想のタイプが隣にいる

直人と喧嘩してから、あいつは約束を守っている。
俺が仕事で誰かと話していても、以前みたいに露骨に機嫌を悪くすることはなくなった。

……けど、ちらちらとこっちを見てくるのは変わらない。

どこにいても直人の目が俺を追っている。
まるで、ちゃんとここにいるか、他の人との距離が近過ぎないかを確認するみたいに。

その日は、ラジオのゲスト出演も入っていた。
パーソナリティは人気DJのタクヤさん。

「今日のゲストは、話題沸騰中のBLユニット、純さんと直人さんです!」

拍手の中、二人で頭を下げる。

「よろしくお願いします」
「お願いします」
「いやぁ、お二人SNSでもずっとトレンドですよね」

タクヤさんの言葉に、直人が笑顔で頷く。

「ありがとうございます」

俺も軽く会釈する。
こういうのは、全部お決まりの流れだ。

メールコーナーに入って、タクヤさんが一通読み上げた。

「『純さんの理想のタイプは?』だそうです」

……理想のタイプ?
あー……来るよな、こういうの。

「えっと、そうですね……優しくて、自分をしっかり持ってて、気が利いて……」

頭の中で条件を並べながら答えていると、

「それ、俺だよね」

直人が即座に被せてきた。
一瞬、思考が止まる。

「純さん、今ドキッとしましたよね?」

タクヤさんが、楽しそうに突っ込んでくる。

「いや、まぁ、その……」
「あはは。俺たち、愛し合ってますから」

BL設定だから、否定はできない。
それにしても……直人の奴、完全に楽しんでるよな。

「じゃあ、次の質問行きましょう。『直人くんは、純さんのどこが好きなんですか?』」
「全部です」

間髪入れず、即答。

……全部?

「強がりなとこも、照れ屋なとこも、寝起き悪いとこも」
「いやぁ、本当に仲いいですね」
「まぁ、直人は相方ですから」

そう返した俺に、直人が即座に重ねる。

「相方以上の存在ですけどね」

……は?
今さらっと爆弾投げたよな?

「相方以上って?」

タクヤさんがすぐ拾う。

「それは秘密です」

意味深に笑う直人。

「おい!」

止めようとするけど、もう遅い。
流れは完全に直人のペースだ。

……ほんと、こういうとこ。

「お前、またわざとだろ」

睨むと、直人は平然としている。

「本当のことだよ。純の理想のタイプ、俺じゃん」

ドキッとする。
確かに優しい。気も利く。世話焼きで、執着強くて。
……重いくらいに。

悔しいけど否定できないのが、余計に腹立つ。

「うるせぇ」
「照れてる?」
「照れてねぇ」
「可愛い」
「……もう知らね」

窓の外に視線を逃がすと、直人の楽しそうな笑い声が聞こえた。



ラジオが終わったら、即座に移動して写真集の撮影。とにかく大忙し。

「じゃあ次、二人並びで距離近め、いきましょう」

カメラマンの指示に思わず肩が強張る。

距離近め、って軽く言うけどさ。
相手が直人なのが問題なんだって。

「自然体で大丈夫ですよ」

そう言われても無理だろ。

フラッシュが焚かれて、シャッター音が続く。

「はい、そのまま寄ってください!」

直人の肩が触れて、腕が当たる。
それだけで心臓がうるさくなる。

「直人さん、純さんの後ろに回ってください」

言われた通り、直人が背後に立つ。
腕が軽く俺の腰に添えられる。

「いいですね! そのまま!」

背中越しに直人の体温が伝わってくる。
近い。近すぎる。

「純、力抜いて」

耳元で囁かれて、思わず肩が跳ねた。
こいつ相手に平常心保てるわけないだろ。

何カットか撮って、ようやく終了。

「お疲れさまでした!」

スタッフの声に、心底ほっとした。

「純、今日俺の家に泊まりに来る?」

周りの視線を避けるように、直人が小声で聞いてくる。

「……また?」

そう言えば、直人は一瞬何とも言えない表情を浮かべて、すぐ不機嫌そうな声を出した。

「もう三日も会ってないし」
「いや、今日も昨日も収録で会ってるだろ」
「仕事で会うのは違うよ」

直人が俺の腕を軽く掴んで、そっとキスをしてきた。
ちゃんと、誰にも見えない位置で。

……ほんと、こういうとこ抜け目ねぇな。

「ちょ、現場だぞ」
「大丈夫」

大丈夫じゃねぇ。

「ねぇ、今日来てよ」
「……わかったよ」

溜息まじりに答えると、直人の表情が一気に緩んだ。

「ありがとう、純」

その笑顔を見てしまうと、もう何も言えない。

そのまま直人の家へ向かう。
シャワーを借りて、リビングのソファに座ると、直人が隣に腰を下ろした。

「今日の撮影どうだった?」
「……まぁ、普通」
「俺は楽しかった」
「どこが」
「純がずっと緊張してたとこ」
「してねぇし」
「してたよ。わかりやすい」

ぐっと距離を詰められて、息が止まりそうになる。

「純、カメラの前と俺の前、表情違いすぎ」
「……知らねぇ」

視線を逸らすと、顎に指をかけられて顔を上げられた。

「ずっと我慢してた」
「何を」
「俺だけの純を、他人に見せるの嫌だった」

ほんと、さらっと言うな。

「……めんどくせぇ男」
「知ってる」

額に軽くキスを落とされて、そのまま腕の中に引き寄せられる。

「今日はゆっくり一緒にいよう」
「……好きにしろよ」

小さく呟くと、直人が嬉しそうに笑う。

「うん。そうする」

ソファに並んで座ったまま、肩を抱かれる。

直人の鼓動がすぐそば。
この距離、この体温、全部。

静かな部屋で、直人にもたれながら目を閉じた。

――翌朝。

スマホを見ると、トレンドに「#直×純」。

『理想のタイプ確定じゃん』
『相方以上って何!?』
『絶対付き合ってる』

……やば。

胃の奥がひゅっと縮む。
案の定、すぐマネージャーから電話。

『ちょっと二人とも、本当に付き合ってる噂が出るから気をつけて』
「すみません……」
「……直人、お前のせいだからな」
「ごめん。でも本当のことだし」

スマホを握ったままベッドに倒れ込む。
天井を見上げて、深く息を吐く。

……恥ずかしすぎる。

なのに。
胸の奥が、じんわり温かいのも事実で。

それが一番、困る。


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