【完結】クズ御曹司に嵌められた俺が、スパダリ社長に拾われて溺愛されてます

砂原紗藍

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【第二章】拾われ男子、スパダリ社長に囲われ中

7.俺のだから、と抱きしめられて

「颯太、お腹空いてない?」
「え……?」
「このまま帰るのも味気ないし、外で食べようか」

外食?
涼と、二人で。

「え、いいの……? ハウスキーパーが雇い主と外食なんて」

俺は本気でそう聞いたのに、涼はくすっと笑って、少し首を傾げる。

「うん。たまには颯太に楽しんでもらおうと思って」

……なんでこの人、こうなんだろ。

頭も良くて、仕事もできて。
人を見る目も鋭いくせに、偉そうじゃなくて。
それでいて、さらっと優しい。

「ありがとう、涼。なんか本当にデートっぽいね」

半分冗談のつもりで言ったのに。
涼は一瞬きょとんとしてから、満面の笑みが返ってきた。

「そう思ってくれたらいいよ。よし、じゃあ行こう」
「うん」

……そう思ってくれたらいいよ、かぁ。
本気で言ってるのかな。

連れてこられたレストランは落ち着いた雰囲気だった。
個室に案内されて、向かい合って座る。

「何が好き?」
「えっと……」

メニューを見ても、値段が高すぎて選べない。

ついこの間まで、スーパーの割引シールとにらめっこしてたのに。
自分の置かれてる境遇があまりにも違いすぎるのが、そもそもの問題だと思うんだけど。

「颯太、遠慮しないで」
「でも……」
「俺が誘ったんだから」

そう言われると、もう何も言えない。

結局、涼に勧められるまま頼む。
料理が運ばれてきて、一口食べる。

「わ、美味しい」
「よかった。でもさ、俺は正直言うと、颯太のご飯が一番好きだよ」
「え……?」
「颯太の料理、全部俺の好みだしね」

真っ直ぐ見られて逃げ場がない。
外食も美味しいけど、と前置きしてから、

「颯太の作るご飯には敵わない」

……もう。
こういうこと、平気で言うよね。

嬉しいのに、照れるし、落ち着かない。

「……俺も、涼のために作るの好きだよ」

そう答えると、涼が一瞬驚いた後、柔らかく笑った。

「そっか、ありがとう」

食事を終えて、店を出る。

涼の隣を歩きながら、少しだけ不思議な気持ちになる。

楽しかった。
ちゃんと楽しかったんだけど。

……でも。

涼の様子が、ずっと気になってる。

マンションに戻って、玄関のドアを開ける。

「ただいま」
「ただいま」

リビングに入ったその瞬間。
ぎゅっと、後ろから抱きしめられた。

「え……?」

突然すぎて、頭が真っ白になる。

「涼……?」

振り返ろうとすると、腕に力が入って動けない。

「ちょっと、このままで」

低い声がすぐそばで聞こえて、心臓がうるさいくらいに鳴る。

「どうしたの……?」

何があったんだろう。
ずっと、涼の様子が変だと思ってたけど。

「……颯太」
「ん……」

腕の力が、少しだけ強くなる。

「颯太は、俺のだからね」
「え? あ、うん」

……急になに?

まさか、俺が他の人のところに行くとか思ってる……?

「俺、どこにも行かないよ? 涼のハウスキーパーだし。ここが俺の居場所だから」

自分でも、必死だなって思う。

「……そっか。なら、いい」

それだけ言って、涼が静かに笑った声がした。

しばらく、そのまま抱きしめられていた。
涼の体温が背中から伝わってくる。
心臓の音が、聞こえる気がした。

風呂を済ませて、パジャマに着替える。
リビングに戻ると、涼はソファに座っていた。

「もう寝ようか」
「うん」

ベッドに入るといつも通り、抱き寄せられる。

……涼の気持ちが、なんとなくわかった気がする。

誰かが側にいてくれて、寝る時もぎゅって抱きしめあったら心地良い。

何かを抱いて寝たいだけなら抱き枕でもいいじゃんって話だけど、それじゃダメなんだよね。

ただ、その相手が誰でもいいってわけではない。

涼の腕の中は温かいのに――
ふと、今日のことが頭をよぎる。

あの男たちの声。
健人の顔。

「……っ」

胸がぎゅっと締め付けられて、気づいたら涼のシャツを掴んでいた。

「颯太?」

すぐそばで聞こえる声。

「どうしたの?」

優しい問いかけに、言葉が出てこない。
代わりに、涼の腕にもっと強くしがみついた。

「……颯太」

背中をゆっくり撫でられる。
それだけなのに、涙が出そうになる。

「俺は……じゃない」
「ん?」

声が震える。

「人形なんかじゃない。なんでも言うこと聞くロボットじゃない……」

つい、口から出た。
すると、涼の腕が少しだけ強くなった。

「うん。颯太は颯太だよ」

俺、この人に何度助けられたのかな。
何度、生きる理由をもらったんだろう。

今もこうして、俺の存在そのものを抱きしめてくれてる。

「俺は、」

続きが出てこない。

涼の言葉に少しだけ安心したのに、健人のことが頭から離れない。

触られた感覚。
逆らえなかった記憶。

消えない。
消したい。

忘れたい。

「……涼、俺…」
「ん?」

顔を上げて、涼を見る。

「嫌なこと、忘れたい……」

涼の目が少し丸くなって、それから――少しだけ熱を帯びた。

「忘れたい、か」
「うん……」

軽い気持ちで言ったはずなのに、涼の視線が変わる。

「わかった」

そう言って――涼の唇が、おでこに触れた。

「え……」

温かくて、柔らかい。
心臓がどきんと跳ねる。

「颯太」

低い声がすぐそばで響く。

「今は俺のことだけ考えて」

その言葉と同時に、涼の唇が俺の唇に重なった。

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