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イケメン社長の独占欲、毎日発動中
4.理不尽なクライアントと俺の癒し係
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side 神谷 拓実
机の上には、クライアントから送られてきた資料のプリントが山のように積まれている。
これは入院前から始まっていた案件で、もう三度目の確認だ。
「……またか」
このクライアントは毎回、無理難題を押し付け、資料の小さなズレまで指摘してくる。
思い浮かべるだけで、あの男……“斎藤”の薄笑いにイラっとくる。
……それでも社長として、目の前の現実から逃げるわけにはいかない。
会議室に入ると、クライアントの斎藤はすでに席に座り、腕組みでこちらを見下す。
資料には目を落とさず、口元にはあざ笑う影がちらつく。
「神谷社長。御社はこの規模で本当にいけますか? 正直、前回も……期待はずれでしたね」
動揺は見せられない。俺は資料を広げ、落ち着いた声で答える。
「問題ありません。こちらの資料をご確認ください」
斎藤は鼻で軽く笑い、書類を机に叩きつける。
「いやあ、前回と今回で条件が食い違ってますね。本当に確認してますか?」
「はい、確認済みです」
「ふうん……確認済みねえ……」
資料をめくる仕草ひとつひとつが、威圧的でじわじわ神経を削る。
「誤りがあれば、即座に修正できます」
淡々と答え、視線をしっかり向ける。
背後にいる部下の緊張も伝わり、会議室の空気は張り詰める。
「……この条件で本当に成果を出せると思ってますか? 正直、期待できませんけど」
指摘は短く冷徹で、笑みを崩さない斎藤の態度にイラつきが溢れそうになる。
それでも俺は拳を握りしめ、次の一手を模索しながら応えるしかなかった。
*
玄関のドアを開けると、やっと静かな自宅の空気が広がる。
長引くクライアント戦で、身体の痛みもまだじんわり残っている。
「ただいま」
「おかえり、拓実」
「うん」
先に帰っていた遥が、シャワーを浴び終えた髪をタオルで拭きながら振り返る。
「ん? 顔、疲れてるじゃん」
「まあ、少しな。クライアントにやられてんだよ」
「朝、言いかけてたのはそれか?」
「ああ。でも帰ってお前の顔見たらちょっと救われた」
「ふーん、じゃあ今夜はもっと癒してやんなきゃな」
ソファーに腰を下ろし、遥は俺の肩に頭を預けてくる。
「ん……こういうの、落ち着く」
「そうだな。俺もお前の匂いと温度で落ち着ける」
髪をかき上げ、軽く頭を撫でてやる。
「なあ、拓実。そのクライアントってどんな奴?」
「簡単に言うと……理不尽で威圧的」
「へー……そんな奴に押されてたんだな」
肩越しに手を握り、距離を詰めて小さく笑いあう。
「まあ、遥がいるからなんとかやれてるけどな」
ソファーで軽くじゃれ合い、頭をぽんと叩いたり肩をくすぐったり。
外で溜め込んだ苛立ちが、少しずつ和らいでいく。
その時、ふと遥のスマホが光るのに気づいた。
画面を見ると、メッセージが届いたようで、遥は軽く微笑みながら確認している。
「……誰から?」と、思わず口をついて出る。
「え? ああ、今日取材した相手からだよ。たまたま仲良くなって。なんか相談があるらしくてね」
「そ、そうか……」
言葉を濁しつつ、心のどこかで小さな嫉妬とモヤモヤを感じる。
相手が誰かは知らない。ただ、遥が信頼されて、プライベートでも相談されている……それだけで、胸がざわつく。
遥の表情は自然で柔らかいのに、画面は俺からは見えない角度で操作されている。
内容も教えてはくれず、ただやり取りが続いていることだけが伝わってくる。
「まあ、拓実は心配しなくていいけどね」
軽く笑ったその顔に、少し救われつつも、モヤモヤはくすぶり続けた。
ため息が自然と漏れる。言葉にするのも難しいほど、胸が重い。
遥は気にせずスマホを置き、肩を寄せてくる。
「……拓実、覚えてるか? 俺が逃げてきたあの時、追い詰められた俺を助けてくれたのは、拓実だった」
その声に、俺は思わず顔を上げた。驚きと、少しの戸惑い。
「あ……ああ、あの時は……」
言葉が途切れ、何も言えない。
遥の目が真剣で、ほんの少し潤んでいる。
「拓実、あの時のこと、俺ずっと忘れられなかったんだ。怖くてどうしようもなかった夜、拓実が手を差し伸べてくれた」
胸の奥がじわりと熱くなる。
「そのおかげで、俺はここまでやってこれた」
その言葉に、自然と肩の力が抜ける。
俺を信じ、頼ってくれていた――それだけで、今までの疲れが少し和らぐ。
「だから、今度は俺が拓実を支えたい。どんなに疲れても、どんなに悩んでも……俺がそばにいるからな」
胸に響く言葉。涙が出そうになるのを、俺は必死で堪える。
「……遥、ありがとう」
声は小さくても、真実を込めた言葉。
遥は肩をつつき、くすっと笑った。
「まあ、拓実は元から強いけどね。俺が支えなくても、十分立ってられるんだろうけど……たまには甘えろよな」
俺の唇がわずかに緩む。
「……そうだな……たまには、な」
遥は嬉しそうに頷き、さらに茶化すように言う。
「じゃあ、今夜は俺の隣でゆっくり休めよ。明日も戦場に戻るんだからな」
その言葉に、自然と笑みがこぼれる。
「ふうん……イチャイチャさせてくれんの?」
「……っ、……ま、まあ、ちょっとだけなら……」
クスッと笑いながら、二人で寝室に向かう。
疲れた心と身体にほんの少しの甘さと温もりが染みていった。
*
翌朝、斎藤からメール通知。件名を見るだけで眉がぴくりと動く。
“前回の資料にまだ不備があります。御社の対応力に疑問を感じます”
深呼吸してイライラを抑え、資料を確認する。
昨日修正したはずだが、相手はまだ納得していない。
会議室に入ると、予想通り挑発的な空気が待っていた。威圧的な態度で座る斎藤。
「ここで妥協したら、どうなるか分かってますよね?」
「はい、承知しております」
会議は緊張のまま進んでいく。
理不尽な指摘と嘲笑に押されつつも、主導権は完全に相手に握られていた。
机の上には、クライアントから送られてきた資料のプリントが山のように積まれている。
これは入院前から始まっていた案件で、もう三度目の確認だ。
「……またか」
このクライアントは毎回、無理難題を押し付け、資料の小さなズレまで指摘してくる。
思い浮かべるだけで、あの男……“斎藤”の薄笑いにイラっとくる。
……それでも社長として、目の前の現実から逃げるわけにはいかない。
会議室に入ると、クライアントの斎藤はすでに席に座り、腕組みでこちらを見下す。
資料には目を落とさず、口元にはあざ笑う影がちらつく。
「神谷社長。御社はこの規模で本当にいけますか? 正直、前回も……期待はずれでしたね」
動揺は見せられない。俺は資料を広げ、落ち着いた声で答える。
「問題ありません。こちらの資料をご確認ください」
斎藤は鼻で軽く笑い、書類を机に叩きつける。
「いやあ、前回と今回で条件が食い違ってますね。本当に確認してますか?」
「はい、確認済みです」
「ふうん……確認済みねえ……」
資料をめくる仕草ひとつひとつが、威圧的でじわじわ神経を削る。
「誤りがあれば、即座に修正できます」
淡々と答え、視線をしっかり向ける。
背後にいる部下の緊張も伝わり、会議室の空気は張り詰める。
「……この条件で本当に成果を出せると思ってますか? 正直、期待できませんけど」
指摘は短く冷徹で、笑みを崩さない斎藤の態度にイラつきが溢れそうになる。
それでも俺は拳を握りしめ、次の一手を模索しながら応えるしかなかった。
*
玄関のドアを開けると、やっと静かな自宅の空気が広がる。
長引くクライアント戦で、身体の痛みもまだじんわり残っている。
「ただいま」
「おかえり、拓実」
「うん」
先に帰っていた遥が、シャワーを浴び終えた髪をタオルで拭きながら振り返る。
「ん? 顔、疲れてるじゃん」
「まあ、少しな。クライアントにやられてんだよ」
「朝、言いかけてたのはそれか?」
「ああ。でも帰ってお前の顔見たらちょっと救われた」
「ふーん、じゃあ今夜はもっと癒してやんなきゃな」
ソファーに腰を下ろし、遥は俺の肩に頭を預けてくる。
「ん……こういうの、落ち着く」
「そうだな。俺もお前の匂いと温度で落ち着ける」
髪をかき上げ、軽く頭を撫でてやる。
「なあ、拓実。そのクライアントってどんな奴?」
「簡単に言うと……理不尽で威圧的」
「へー……そんな奴に押されてたんだな」
肩越しに手を握り、距離を詰めて小さく笑いあう。
「まあ、遥がいるからなんとかやれてるけどな」
ソファーで軽くじゃれ合い、頭をぽんと叩いたり肩をくすぐったり。
外で溜め込んだ苛立ちが、少しずつ和らいでいく。
その時、ふと遥のスマホが光るのに気づいた。
画面を見ると、メッセージが届いたようで、遥は軽く微笑みながら確認している。
「……誰から?」と、思わず口をついて出る。
「え? ああ、今日取材した相手からだよ。たまたま仲良くなって。なんか相談があるらしくてね」
「そ、そうか……」
言葉を濁しつつ、心のどこかで小さな嫉妬とモヤモヤを感じる。
相手が誰かは知らない。ただ、遥が信頼されて、プライベートでも相談されている……それだけで、胸がざわつく。
遥の表情は自然で柔らかいのに、画面は俺からは見えない角度で操作されている。
内容も教えてはくれず、ただやり取りが続いていることだけが伝わってくる。
「まあ、拓実は心配しなくていいけどね」
軽く笑ったその顔に、少し救われつつも、モヤモヤはくすぶり続けた。
ため息が自然と漏れる。言葉にするのも難しいほど、胸が重い。
遥は気にせずスマホを置き、肩を寄せてくる。
「……拓実、覚えてるか? 俺が逃げてきたあの時、追い詰められた俺を助けてくれたのは、拓実だった」
その声に、俺は思わず顔を上げた。驚きと、少しの戸惑い。
「あ……ああ、あの時は……」
言葉が途切れ、何も言えない。
遥の目が真剣で、ほんの少し潤んでいる。
「拓実、あの時のこと、俺ずっと忘れられなかったんだ。怖くてどうしようもなかった夜、拓実が手を差し伸べてくれた」
胸の奥がじわりと熱くなる。
「そのおかげで、俺はここまでやってこれた」
その言葉に、自然と肩の力が抜ける。
俺を信じ、頼ってくれていた――それだけで、今までの疲れが少し和らぐ。
「だから、今度は俺が拓実を支えたい。どんなに疲れても、どんなに悩んでも……俺がそばにいるからな」
胸に響く言葉。涙が出そうになるのを、俺は必死で堪える。
「……遥、ありがとう」
声は小さくても、真実を込めた言葉。
遥は肩をつつき、くすっと笑った。
「まあ、拓実は元から強いけどね。俺が支えなくても、十分立ってられるんだろうけど……たまには甘えろよな」
俺の唇がわずかに緩む。
「……そうだな……たまには、な」
遥は嬉しそうに頷き、さらに茶化すように言う。
「じゃあ、今夜は俺の隣でゆっくり休めよ。明日も戦場に戻るんだからな」
その言葉に、自然と笑みがこぼれる。
「ふうん……イチャイチャさせてくれんの?」
「……っ、……ま、まあ、ちょっとだけなら……」
クスッと笑いながら、二人で寝室に向かう。
疲れた心と身体にほんの少しの甘さと温もりが染みていった。
*
翌朝、斎藤からメール通知。件名を見るだけで眉がぴくりと動く。
“前回の資料にまだ不備があります。御社の対応力に疑問を感じます”
深呼吸してイライラを抑え、資料を確認する。
昨日修正したはずだが、相手はまだ納得していない。
会議室に入ると、予想通り挑発的な空気が待っていた。威圧的な態度で座る斎藤。
「ここで妥協したら、どうなるか分かってますよね?」
「はい、承知しております」
会議は緊張のまま進んでいく。
理不尽な指摘と嘲笑に押されつつも、主導権は完全に相手に握られていた。
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