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光と記憶〜毒家族の野望、愛がすべてを覆す〜
2.愛が運んだ縁
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リビングのテーブルには、拓実のお母さんの手料理が次々と並んでいった。
彩り鮮やかなサラダ、香ばしいローストチキン、そして大きな器に盛られたスープ。
「わぁ……すごい」
まるでホームパーティーのようで、思わず感嘆の息が漏れる。
「ニューヨークで覚えたレシピも混じってるの。口に合うといいんだけど」
お母さんが照れたように笑い、お父さんがワインを開けている。
自分がこうして食卓に招かれるなんて、少し前まで想像もできなかった。
「さ、遥くんも座って」
「はい」
促されて椅子に腰掛けると、隣には拓実。
自然に手が触れそうなくらいの距離感に、緊張と安堵が入り混じる。
「いただきます」
四人で声を合わせると、お母さんがにこにこと話しかけてきた。
「遥くんは、神谷メディアでどんなお仕事してるの?」
「編集の仕事です。まだまだ至らないことばかりで……」
「でも拓実が、いつも“助けてもらってる”って言ってるのよ」
「母さん」
またしても拓実が少し照れたように声を低くする。その顔を見た瞬間、思わずこちらも笑ってしまった。
お父さんがグラスを傾けながら、穏やかな声を落とす。
「拓実が社長をやると聞いたとき、最初は心配だった。でもね……今はもう大丈夫だって思えるよ」
その視線がまっすぐ自分に向けられて、胸の奥が熱くなる。
「本当に、私も驚いたわ。でもおばあちゃまもいらっしゃるし、遥くんも支えてくれるから」
――支えている、なんて。
むしろ自分のほうが何度も救われてきたのに。
「ほんと、遥に助けられてばかりだよ」
隣で拓実がさらりと口にした。
「た、拓実……」
不意打ちのように名前を呼ばれて、思わず顔が赤くなる。両親の前で、そんなふうに言うなんて。
「拓実は一人っ子だから、私も息子が増えたみたいで嬉しいの」
「なら、改めて乾杯しよう。拓実を支えてくれる遥くんに」
「そんな……」
戸惑う自分の手を、拓実がそっと握ってくれる。
「いいから。ほら、家族なんだから」
低い声で囁かれて、胸が大きく跳ねた。
その言葉はまだ少し照れくさくて、でも確かに心に沁み込んでいく。
ワイングラスが軽く鳴り合う音の中で、俺はようやく小さく息をついた。
お母さんが取り分けてくれたチキンにフォークを刺しながら、恐る恐る口に運ぶ。
……柔らかくて、ほんのりスパイスが香る。
「わあ、すっごく美味しいです」
「良かった。ニューヨークのお友達から習ったレシピなの」
お母さんが嬉しそうに微笑むと、お父さんが頷いてワインを一口。
「うん、美味いな」
少しずつ緊張が解けていく。
食卓を囲むだけで、こんなに温かくなるものなんだ――そう思っていたとき。
「遥くん」
お父さんに名前を呼ばれて、背筋が伸びた。
「はい」
「拓実は子供の頃から頑固でね。思い込むと真っ直ぐ突き進むタイプだったんだ。……苦労してないか?」
思わず隣を見ると、拓実がむっとしたように小さく口を尖らせていた。
「おい、父さん」
その顔が可笑しくて、つい笑ってしまう。
「いえ、苦労どころか……むしろ、いつも助けてもらってばかりです」
そう答えると、お父さんは笑いながら頷き、拓実は少し照れたように視線を逸らした。
「小さい頃ね、拓実がまだ五歳くらいだったかな」
今度はお母さんが懐かしそうに話し始める。
「動物園で迷子になった子を見つけて、『泣かないで』って自分のお菓子を分けてあげたことがあるのよ。あのときから、人を放っておけない子だったわ」
「あの、母さん……そういう昔話はいいから」
拓実が苦笑しながら止めようとするけれど、お母さんは楽しそうに続ける。
「だから今日こうして遥くんに会えて、本当に安心したのよ」
「安心……ですか?」
思わず聞き返すと、お母さんは穏やかな目でこちらを見つめた。
「ええ。拓実は強そうに見えるけど、心の奥ではきっと誰かを必要としてる。だから遥くんがそばにいてくれるなら、私たちも安心できるの」
胸がいっぱいになって、言葉が喉に詰まる。
返事をしようとしたとき――隣の拓実が、そっと俺の手の甲に触れた。
「……そういうことだよ」
低く落ち着いた声が耳に届き、心臓が大きく跳ねた。
彩り鮮やかなサラダ、香ばしいローストチキン、そして大きな器に盛られたスープ。
「わぁ……すごい」
まるでホームパーティーのようで、思わず感嘆の息が漏れる。
「ニューヨークで覚えたレシピも混じってるの。口に合うといいんだけど」
お母さんが照れたように笑い、お父さんがワインを開けている。
自分がこうして食卓に招かれるなんて、少し前まで想像もできなかった。
「さ、遥くんも座って」
「はい」
促されて椅子に腰掛けると、隣には拓実。
自然に手が触れそうなくらいの距離感に、緊張と安堵が入り混じる。
「いただきます」
四人で声を合わせると、お母さんがにこにこと話しかけてきた。
「遥くんは、神谷メディアでどんなお仕事してるの?」
「編集の仕事です。まだまだ至らないことばかりで……」
「でも拓実が、いつも“助けてもらってる”って言ってるのよ」
「母さん」
またしても拓実が少し照れたように声を低くする。その顔を見た瞬間、思わずこちらも笑ってしまった。
お父さんがグラスを傾けながら、穏やかな声を落とす。
「拓実が社長をやると聞いたとき、最初は心配だった。でもね……今はもう大丈夫だって思えるよ」
その視線がまっすぐ自分に向けられて、胸の奥が熱くなる。
「本当に、私も驚いたわ。でもおばあちゃまもいらっしゃるし、遥くんも支えてくれるから」
――支えている、なんて。
むしろ自分のほうが何度も救われてきたのに。
「ほんと、遥に助けられてばかりだよ」
隣で拓実がさらりと口にした。
「た、拓実……」
不意打ちのように名前を呼ばれて、思わず顔が赤くなる。両親の前で、そんなふうに言うなんて。
「拓実は一人っ子だから、私も息子が増えたみたいで嬉しいの」
「なら、改めて乾杯しよう。拓実を支えてくれる遥くんに」
「そんな……」
戸惑う自分の手を、拓実がそっと握ってくれる。
「いいから。ほら、家族なんだから」
低い声で囁かれて、胸が大きく跳ねた。
その言葉はまだ少し照れくさくて、でも確かに心に沁み込んでいく。
ワイングラスが軽く鳴り合う音の中で、俺はようやく小さく息をついた。
お母さんが取り分けてくれたチキンにフォークを刺しながら、恐る恐る口に運ぶ。
……柔らかくて、ほんのりスパイスが香る。
「わあ、すっごく美味しいです」
「良かった。ニューヨークのお友達から習ったレシピなの」
お母さんが嬉しそうに微笑むと、お父さんが頷いてワインを一口。
「うん、美味いな」
少しずつ緊張が解けていく。
食卓を囲むだけで、こんなに温かくなるものなんだ――そう思っていたとき。
「遥くん」
お父さんに名前を呼ばれて、背筋が伸びた。
「はい」
「拓実は子供の頃から頑固でね。思い込むと真っ直ぐ突き進むタイプだったんだ。……苦労してないか?」
思わず隣を見ると、拓実がむっとしたように小さく口を尖らせていた。
「おい、父さん」
その顔が可笑しくて、つい笑ってしまう。
「いえ、苦労どころか……むしろ、いつも助けてもらってばかりです」
そう答えると、お父さんは笑いながら頷き、拓実は少し照れたように視線を逸らした。
「小さい頃ね、拓実がまだ五歳くらいだったかな」
今度はお母さんが懐かしそうに話し始める。
「動物園で迷子になった子を見つけて、『泣かないで』って自分のお菓子を分けてあげたことがあるのよ。あのときから、人を放っておけない子だったわ」
「あの、母さん……そういう昔話はいいから」
拓実が苦笑しながら止めようとするけれど、お母さんは楽しそうに続ける。
「だから今日こうして遥くんに会えて、本当に安心したのよ」
「安心……ですか?」
思わず聞き返すと、お母さんは穏やかな目でこちらを見つめた。
「ええ。拓実は強そうに見えるけど、心の奥ではきっと誰かを必要としてる。だから遥くんがそばにいてくれるなら、私たちも安心できるの」
胸がいっぱいになって、言葉が喉に詰まる。
返事をしようとしたとき――隣の拓実が、そっと俺の手の甲に触れた。
「……そういうことだよ」
低く落ち着いた声が耳に届き、心臓が大きく跳ねた。
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