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光と記憶〜毒家族の野望、愛がすべてを覆す〜
4.欠けていたピース
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拓実の両親が親戚の家へ挨拶に出かけているあいだ、俺と拓実がユウトの世話を任されることになった。
ユウトが俺の膝の上で色鉛筆を握って絵を描いている。
拓実は少し離れた場所でその様子を眺めていた。
「ユウト君、何色使う?」
「あか!」
「はい、どうぞ」
俺が赤い色鉛筆を渡すと、ユウトは嬉しそうに笑う。
「はるお兄ちゃん、だいすき!」
そんなユウトの言葉に、拓実の顔がみるみる曇っていく。
「俺のことは好きじゃないのか?」
拓実が少し拗ねたような声でユウトに聞くと、ユウトは首をかしげた。
「たくみ? たくみは……」
しばらく考えて、ユウトは小さく呟いた。
「ふつう」
俺は思わず吹き出してしまう。
「普通って何だよ」
拓実がぶつぶつと文句を言っているのが可愛くて、つい頬が緩んでしまう。
「ユウト君、上手に描けたね」
俺がユウトの絵を褒めると、ユウトは嬉しそうに頷いた。
色鉛筆で描かれた家族の絵には、大きなお父さんとお母さん、そして小さな子供が手を繋いでいる。
「これ、パパとママとユウト?」
「うん! みんなでおてて、つないでる!」
ユウトの無邪気な笑顔を見ていると、胸の奥が少しちくりと痛んだ。
俺の子供の頃には、こんな風に家族みんなで手を繋いだ記憶がほとんどない。
「仲良しだね」
俺は心からそう思いながら、ユウトの頭を優しく撫でた。
自分が子供の頃に欲しかったものを、この小さな子には当たり前のようにある。
それがとても羨ましくて、同時に嬉しくもあった。
「はるお兄ちゃんも、かぞく、いる?」
「うん、いるよ」
俺は拓実の方をちらりと見る。今の俺にとって、拓実こそが一番大切な家族だった。
「なかよし?」
ユウトの純粋な質問に、俺は少し困ってしまう。
拓実の家族とは仲が良いが、俺の実家との関係は複雑だった。
「……そうだね」
俺が曖昧に答えると、ユウトは首をかしげた。
「はるお兄ちゃん、かなしい?」
「え?」
ユウトの鋭い観察力に驚く。子供は大人が思っている以上に、相手の感情を敏感に感じ取るものだ。
「だいじょうぶだよ、ユウト君」
俺はユウトを優しく抱き寄せた。この温かさを、俺も子供の頃に感じていたかった。
でも今、ユウトに与えることで、何か満たされるような気持ちになる。
「ユウト君がいると、お兄ちゃん嬉しいし、悲しくないよ」
「ほんと?」
「本当だよ」
拓実がその様子をじっと見ていることに気づく。
「遥って、やっぱり優しいよな」
拓実の声には、いつもとは違う何かが込められていた。
「子供には優しくしたいんだ」
きっと拓実にも、俺の気持ちが伝わったのだろう。
「うん。ユウト、すっかり懐いてるもんな」
拓実の言葉に、俺は少し考えてから答えた。
「俺、子供の頃にしてもらいたかったことを、ユウト君にしてあげたいんだよ」
俺の言葉に、拓実の表情が少し曇る。
「遥、お前……」
「ユウト君みたいに素直で可愛い子を見てると、大切にしてあげたくなる」
拓実は黙って俺の手を握った。その温かさが、胸に染みた。
夕方、ユウトがうたた寝から目覚めると、真っ先に俺を探した。
「はるお兄ちゃん、どこ?」
「ここにいるよ」
俺の姿を見つけると、ユウトは嬉しそうに駆け寄ってきて俺に抱きついた。
その様子を見ていた拓実が、小さく舌打ちする。
「起きてすぐ遥を探すなんて」
「嫉妬してんの?」
俺がからかうと、拓実はそっぽを向いて反論した。
「嫉妬なんてしてない」
「顔に書いてあるよ」
そんなやり取りを聞いていたユウトが、不思議そうに俺たちを見上げる。
「たくみ、おこってる?」
「いや、怒ってないよ」
拓実は慌てて否定するが、その表情はどう見ても拗ねている。
「でも、かお、こわい」
ユウトの素直な指摘に、拓実はがくっと肩を落とした。
「子供って、本当に容赦ないな」
「正直者なんだよ」
俺がユウトの頭を優しく撫でると、ユウトは気持ち良さそうに目を細める。
従姉がお迎えに来た時も、拓実の嫉妬は続いていた。
「はるお兄ちゃん、またあそぼうね」
ユウトが俺にしがみつきながら聞くと、拓実がぼそっと呟いた。
「俺には言わないんだな」
「拓実も一緒だよ」
俺がフォローすると、ユウトが首をかしげる。
「たくみもいるの?」
「いたらダメ?」
拓実が少し不安そうに聞くと、ユウトはしばらく考えてから答えた。
「んー、いいよ。でも、やさしくしてね」
「優しくするよ」
拓実が約束すると、ユウトは満足そうに頷いた。
従姉の車が去った後、部屋には静寂が戻った。
テーブルの上には、ユウトが描いた家族の絵が残されている。色鉛筆で丁寧に描かれた三人が、手を繋いで笑っている絵だった。
「温かい家族だな」
拓実がぽつりと呟く。
「そうだね」
俺は絵を見つめながら答えたが、胸の奥がずきんと痛んだ。
ユウトの描く家族は、俺が子供の頃に憧れていたものそのものだった。
「遥?」
拓実が心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ごめん、ちょっと考え事を」
ユウトの無邪気な笑顔を思い出すと、胸が温かくなると同時に、どこか切ない気持ちも湧いてくる。
「俺がお前の家族だから」
「拓実が?」
「うん」
胸の奥の寂しさと、今ここにある幸せが、胸の中で複雑に絡み合っていた。
ユウトが俺の膝の上で色鉛筆を握って絵を描いている。
拓実は少し離れた場所でその様子を眺めていた。
「ユウト君、何色使う?」
「あか!」
「はい、どうぞ」
俺が赤い色鉛筆を渡すと、ユウトは嬉しそうに笑う。
「はるお兄ちゃん、だいすき!」
そんなユウトの言葉に、拓実の顔がみるみる曇っていく。
「俺のことは好きじゃないのか?」
拓実が少し拗ねたような声でユウトに聞くと、ユウトは首をかしげた。
「たくみ? たくみは……」
しばらく考えて、ユウトは小さく呟いた。
「ふつう」
俺は思わず吹き出してしまう。
「普通って何だよ」
拓実がぶつぶつと文句を言っているのが可愛くて、つい頬が緩んでしまう。
「ユウト君、上手に描けたね」
俺がユウトの絵を褒めると、ユウトは嬉しそうに頷いた。
色鉛筆で描かれた家族の絵には、大きなお父さんとお母さん、そして小さな子供が手を繋いでいる。
「これ、パパとママとユウト?」
「うん! みんなでおてて、つないでる!」
ユウトの無邪気な笑顔を見ていると、胸の奥が少しちくりと痛んだ。
俺の子供の頃には、こんな風に家族みんなで手を繋いだ記憶がほとんどない。
「仲良しだね」
俺は心からそう思いながら、ユウトの頭を優しく撫でた。
自分が子供の頃に欲しかったものを、この小さな子には当たり前のようにある。
それがとても羨ましくて、同時に嬉しくもあった。
「はるお兄ちゃんも、かぞく、いる?」
「うん、いるよ」
俺は拓実の方をちらりと見る。今の俺にとって、拓実こそが一番大切な家族だった。
「なかよし?」
ユウトの純粋な質問に、俺は少し困ってしまう。
拓実の家族とは仲が良いが、俺の実家との関係は複雑だった。
「……そうだね」
俺が曖昧に答えると、ユウトは首をかしげた。
「はるお兄ちゃん、かなしい?」
「え?」
ユウトの鋭い観察力に驚く。子供は大人が思っている以上に、相手の感情を敏感に感じ取るものだ。
「だいじょうぶだよ、ユウト君」
俺はユウトを優しく抱き寄せた。この温かさを、俺も子供の頃に感じていたかった。
でも今、ユウトに与えることで、何か満たされるような気持ちになる。
「ユウト君がいると、お兄ちゃん嬉しいし、悲しくないよ」
「ほんと?」
「本当だよ」
拓実がその様子をじっと見ていることに気づく。
「遥って、やっぱり優しいよな」
拓実の声には、いつもとは違う何かが込められていた。
「子供には優しくしたいんだ」
きっと拓実にも、俺の気持ちが伝わったのだろう。
「うん。ユウト、すっかり懐いてるもんな」
拓実の言葉に、俺は少し考えてから答えた。
「俺、子供の頃にしてもらいたかったことを、ユウト君にしてあげたいんだよ」
俺の言葉に、拓実の表情が少し曇る。
「遥、お前……」
「ユウト君みたいに素直で可愛い子を見てると、大切にしてあげたくなる」
拓実は黙って俺の手を握った。その温かさが、胸に染みた。
夕方、ユウトがうたた寝から目覚めると、真っ先に俺を探した。
「はるお兄ちゃん、どこ?」
「ここにいるよ」
俺の姿を見つけると、ユウトは嬉しそうに駆け寄ってきて俺に抱きついた。
その様子を見ていた拓実が、小さく舌打ちする。
「起きてすぐ遥を探すなんて」
「嫉妬してんの?」
俺がからかうと、拓実はそっぽを向いて反論した。
「嫉妬なんてしてない」
「顔に書いてあるよ」
そんなやり取りを聞いていたユウトが、不思議そうに俺たちを見上げる。
「たくみ、おこってる?」
「いや、怒ってないよ」
拓実は慌てて否定するが、その表情はどう見ても拗ねている。
「でも、かお、こわい」
ユウトの素直な指摘に、拓実はがくっと肩を落とした。
「子供って、本当に容赦ないな」
「正直者なんだよ」
俺がユウトの頭を優しく撫でると、ユウトは気持ち良さそうに目を細める。
従姉がお迎えに来た時も、拓実の嫉妬は続いていた。
「はるお兄ちゃん、またあそぼうね」
ユウトが俺にしがみつきながら聞くと、拓実がぼそっと呟いた。
「俺には言わないんだな」
「拓実も一緒だよ」
俺がフォローすると、ユウトが首をかしげる。
「たくみもいるの?」
「いたらダメ?」
拓実が少し不安そうに聞くと、ユウトはしばらく考えてから答えた。
「んー、いいよ。でも、やさしくしてね」
「優しくするよ」
拓実が約束すると、ユウトは満足そうに頷いた。
従姉の車が去った後、部屋には静寂が戻った。
テーブルの上には、ユウトが描いた家族の絵が残されている。色鉛筆で丁寧に描かれた三人が、手を繋いで笑っている絵だった。
「温かい家族だな」
拓実がぽつりと呟く。
「そうだね」
俺は絵を見つめながら答えたが、胸の奥がずきんと痛んだ。
ユウトの描く家族は、俺が子供の頃に憧れていたものそのものだった。
「遥?」
拓実が心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ごめん、ちょっと考え事を」
ユウトの無邪気な笑顔を思い出すと、胸が温かくなると同時に、どこか切ない気持ちも湧いてくる。
「俺がお前の家族だから」
「拓実が?」
「うん」
胸の奥の寂しさと、今ここにある幸せが、胸の中で複雑に絡み合っていた。
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