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結婚したいな、しよう
7.二人の答え、三人の時間
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「遥、今週末空いてる?」
ある日、拓実が唐突に聞いてきた。
「うん、多分。でもなんで?」
「ばあちゃんがお前に会いたいって」
俺の動きが止まる。
「……潔さんが?」
「うん。元気にしてるか気になってるみたいでさ。会いたいって言ってて」
そういえば、潔さんと最近会ってないな。
会長だと知ったときは驚いたけど、あの人は気さくで話しやすい。
このマンションも潔さんのだし、悩んだ時も俺の味方をしてくれたし。
「……俺も会いたい」
「じゃあせっかくだから、三人で会おう」
拓実が笑う。でも、その笑顔の裏に何かある気がして。
「……まさか、潔さんに結婚の話とか」
「もう、とっくにしてる」
拓実があっさり認める。俺の顔が引きつった。
「ちょっと待て、まだ俺決めてないって」
「お前の気持ちはまだ決まってなくても、俺の気持ちは決まってるから」
「でもさ……」
「ちゃんとばあちゃんに報告したかったんだよ。お前との将来のこと考えてるって」
拓実がまっすぐ俺を見つめる。その目は真剣で、逃げ場がなかった。
「……分かった」
俺が小さく頷くと、拓実が嬉しそうに笑った。
「ありがとな」
拓実が安心させるように言う。でも、俺の不安は消えなかった。
そして週末。潔さんと会うことになった。
場所は、都内の高級ホテルのラウンジ。
「あれ、緊張してる?」
拓実が心配そうに聞いてくる。
「……してない」
嘘だった。めちゃくちゃ緊張している。
「緊張なんかする必要ないだろ。ばあちゃん、お前のこと気に入ってるし」
「いや、そうだとしても……」
今回は結婚の話……。そう思うと、足がすくんだ。
「遥、こっちだよ」
拓実が俺の手を引く。ラウンジの奥に、相変わらずシルクのスカーフが似合う女性の姿が見えた。
「拓実、遥くん、ごきげんよう」
潔さんが明るい声で手を振る。華やかなファッションだけど、どこか品があって、やっぱりただ者じゃない雰囲気が漂っていた。
「ばあちゃん、久しぶり。わざわざホテルまで」
「あら、大事な話なんだもの。きちんとした場所がいいでしょう? それに、ここなら遥くんも落ち着いて話せるかと思って」
このホテルは会社の商談でもよく使うらしく、潔さんは常連だった。
「遥くん、久しぶりね! 元気だった?」
潔さんが嬉しそうに俺を見る。
「はい、お久しぶりです。元気です」
俺が挨拶すると、潔さんが優雅にソファーに座った。
「さあさあ、座って座って。いろいろ話したいことがあるのよ」
潔さんが促して、俺たちは向かい合って座った。
しばらく近況報告をしたあと、潔さんがゆったりと紅茶を一口飲んでから口を開いた。
「遥くん、拓実から聞いたんだけど」
「……はい」
俺の背筋が伸びる。
「拓実はあなたと結婚したいって言ってるのよね」
その言葉に、俺の心臓が跳ねた。
「私はね、二人の関係を応援してるわ。だから、遥くんの気持ちも聞きたくて」
潔さんが優しく言う。その視線が、真剣だった。
「俺は……」
言葉を探す。何を言えばいいのか、分からなくて。
「まだ、ちゃんと考えられてなくて」
「それは当然よ」
潔さんが優しく言う。
「大きな決断だもの。じっくり考えていいのよ」
「でも……日本じゃ、俺たち結婚できないし」
その言葉に、潔さんがふっと笑った。
「遥くん、一つ聞いてもいいかしら」
「……はい」
「あなたは、拓実と一緒にいたい?」
その質問に、俺は即答した。
「はい。一緒にいたいです」
「なら、それが答えじゃないかしら」
潔さんが優しく言う。
「二人の気持ちが大事なのよ」
その言葉に、胸が熱くなった。
「それに」
潔さんが少しいたずらっぽく笑う。
「拓実には、切り札があるでしょう?」
「……え?」
切り札……?
俺が首を傾げると、潔さんが拓実を見た。
「ね、拓実」
「ばあちゃん、それ言っちゃうの?」
「だって、遥くんが知らないままじゃ可哀想でしょう」
潔さんがクスクスと笑う。
「切り札って何……?」
俺が拓実を見ると、拓実が少し困ったように笑った。
ある日、拓実が唐突に聞いてきた。
「うん、多分。でもなんで?」
「ばあちゃんがお前に会いたいって」
俺の動きが止まる。
「……潔さんが?」
「うん。元気にしてるか気になってるみたいでさ。会いたいって言ってて」
そういえば、潔さんと最近会ってないな。
会長だと知ったときは驚いたけど、あの人は気さくで話しやすい。
このマンションも潔さんのだし、悩んだ時も俺の味方をしてくれたし。
「……俺も会いたい」
「じゃあせっかくだから、三人で会おう」
拓実が笑う。でも、その笑顔の裏に何かある気がして。
「……まさか、潔さんに結婚の話とか」
「もう、とっくにしてる」
拓実があっさり認める。俺の顔が引きつった。
「ちょっと待て、まだ俺決めてないって」
「お前の気持ちはまだ決まってなくても、俺の気持ちは決まってるから」
「でもさ……」
「ちゃんとばあちゃんに報告したかったんだよ。お前との将来のこと考えてるって」
拓実がまっすぐ俺を見つめる。その目は真剣で、逃げ場がなかった。
「……分かった」
俺が小さく頷くと、拓実が嬉しそうに笑った。
「ありがとな」
拓実が安心させるように言う。でも、俺の不安は消えなかった。
そして週末。潔さんと会うことになった。
場所は、都内の高級ホテルのラウンジ。
「あれ、緊張してる?」
拓実が心配そうに聞いてくる。
「……してない」
嘘だった。めちゃくちゃ緊張している。
「緊張なんかする必要ないだろ。ばあちゃん、お前のこと気に入ってるし」
「いや、そうだとしても……」
今回は結婚の話……。そう思うと、足がすくんだ。
「遥、こっちだよ」
拓実が俺の手を引く。ラウンジの奥に、相変わらずシルクのスカーフが似合う女性の姿が見えた。
「拓実、遥くん、ごきげんよう」
潔さんが明るい声で手を振る。華やかなファッションだけど、どこか品があって、やっぱりただ者じゃない雰囲気が漂っていた。
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「遥くん、久しぶりね! 元気だった?」
潔さんが嬉しそうに俺を見る。
「はい、お久しぶりです。元気です」
俺が挨拶すると、潔さんが優雅にソファーに座った。
「さあさあ、座って座って。いろいろ話したいことがあるのよ」
潔さんが促して、俺たちは向かい合って座った。
しばらく近況報告をしたあと、潔さんがゆったりと紅茶を一口飲んでから口を開いた。
「遥くん、拓実から聞いたんだけど」
「……はい」
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「俺は……」
言葉を探す。何を言えばいいのか、分からなくて。
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「大きな決断だもの。じっくり考えていいのよ」
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「はい。一緒にいたいです」
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俺が拓実を見ると、拓実が少し困ったように笑った。
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