【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【第1章】 君に教わる恋のルール

2.迷う心に触れる手

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「……嘘だろ」
「嘘じゃないよ。一目惚れってやつ」
「会ったばっかりじゃん……」
「だから?  時間は関係ないよ」

慧の手が、俺の髪をそっと撫でた。

「京介。俺と、付き合ってみない?」

その問いに、俺は何も答えられなかった。
ただ、胸が苦しくて、顔が熱い……。

「……慧は何の仕事してんの?」

話題を変えようと、咄嗟に聞いた。

「企業経営。まぁ、色々大変でさ」

慧が少し疲れたように笑った。

「京介は?」
「音楽関係だけど」
「へぇ、いいね」

それ以上は聞かず、聞かれず。
なんとなく今は仕事の話より、この空気を壊したくなかったのかもしれない。

「……京介、さっきの答えは?」
「……わかんねぇよ」
「じゃあ、考える時間あげる」

そう言って、慧は少し離れた。

「でも京介。その部下の人には、ちゃんと答えを出してあげて。曖昧なまま引きずるのはお互いによくないから」

その優しい言葉に、俺は頷いた。

「……わかった」

頭の中が混乱する。
部下の告白に悩んで、帰り道では絡まれて。
おまけに助けてくれた男に告白されて。

……人生、こんなに急展開するものなのか。

「俺だって寂しいときは寂しいし、傷つくときは傷つく。今日だって、恋人にふられて落ち込んでた」
「……ああ」
「そんな俺を、京介は普通に接してくれた。それがすごく嬉しかったんだ」

慧の手が、テーブル越しに伸びてくる。

「だから俺、京介のこと……本気で好きになっちゃった」

その言葉に、心臓がドキッと跳ねた。
俺は思わず視線を逸らす。

「……慧」
「ん?」
「なんで、そんな簡単に言えるんだよ」
「簡単?」

だって、今日初めて会ったばかりだ。
酒の勢いはあったにしても、ここまで踏み込まれるなんて想像していなかった。

慧は首を傾げて、にこっと笑う。

「簡単じゃないよ。すごく勇気いった」
「でも、会ったばっかりで……」
「時間じゃないって、さっきも言ったでしょ」

慧はそっと俺の手を握った。

「俺ね、ずっと人に本音を言えなかったんだ」
「え?」

握られた手が、少し震えていた。

「京介と一緒にいると、素の自分でいられる気がするんだ」
「慧……」
「重い?」
「……いや」

俺は、慧の手を握り返した。

「ちょっと、驚いてるだけ」
「うん。そうだよね、急すぎるよね」
「でも……嫌じゃない……かも」

その言葉に、慧の目が見開かれた。

「俺も、慧といると……なんか、落ち着くっていうか……いや、よくわかんねえけど」

照れくさくて、視線を逸らす。

「……悪い気はしない」

慧は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、もう少し一緒にいてくれる?」
「……ああ」

俺はソファに座ったまま、夜景を眺めた。
窓の外の夜景が、きらきらと輝いている。

「綺麗だな」
「俺、毎日見てるから慣れちゃった」
「贅沢な悩みだな」
「かもね」

慧がくすっと笑う。

「でも今日は、いつもより綺麗に見える」
「なんで?」
「京介がいるから」

またそうやって、さらっと言う。

「……慧、キザすぎ」
「キザでもいいじゃん、本当のことだし。なぁ京介」
「ん?」
「俺と付き合うの、嫌?」

その問いに、俺は少し考えた。

「……嫌っていうか」
「うん」
「男同士で付き合うって、よくわかんなくて」

正直に答えた。

「何するのか、どう接すればいいのか」
「じゃあ、教えてあげる」
「……え?」
「まず、好きな人と一緒にいる」
「……今みたいに?」
「そう。こうやって、近くにいる」

慧の手が、俺の手に重なる。

「手を繋いだり」
「……うん」
「名前を呼んだり」

慧の顔が近づいてくる。

「キスしたり」

その言葉に、息が止まった。

「ちょ、待って……」
「京介の一番の不安は何?」

慧が真剣な目で聞いてきた。
俺は視線を逸らしながら、ぽつりと答える。

「やっぱ怖いじゃん」
「怖い?」
「ほら付き合ったりしたら、その……そういう事するだろ?」
「ん? なに、Hのこと?」
「……ぅ、げほっ、ゲホっ……」

盛大にむせた。慧が背中をさすってくれる。

「ま、そうなんだけどさ! ちょっと怖くて。俺……今日もそれで逃げてきたし」

言った瞬間、慧にぎゅっと抱きしめられた。
突然のことに身体が固まる。
でも、この腕は優しくて温かくて。

「どう? 怖い?」
「いや怖くは……ないけど、なんかドキドキする……」
「あはっ、京介ってかわいいね」
「可愛いってなんだよ、俺は……」

言葉が途切れる。慧の指が、そっと俺の唇に触れたから。

「んん……なに……」

ふにふにと唇をなぞる指先。
くすぐったいのに、妙にドキドキする。

「なぁ、キスしてみよう」
「は?」
 
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