【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

文字の大きさ
8 / 23
【第2章】最悪で最高のライバル

1.再会は、敵の顔をして

しおりを挟む
俺は息を呑んだ。

慧はプロジェクターの前に立って、落ち着いた表情でマイクを握っている。

俺が知ってる“あの日の甘い慧”とは違う。
今の慧は――CEOの顔をしていた。

「皆さん、音楽業界が死にかけてるって、ご存知ですよね?」

おっと、いきなり挑発から入るのか。
会場がざわつく。投資家たちが顔を見合わせる。

「CDはもう売れません。ダウンロードも頭打ち。サブスク全盛の今、アーティストはライブでしか稼げないと言われていますけど――」

画面に市場規模のグラフが映る。

「ライブもここ5年で横ばいです。もう限界なんですよ、箱もの興行は」

投資家の一人が腕を組み、別の一人はメモを取り始めた。

……引き込まれてる。
慧は、確実に場の空気を掴んでいる。

「じゃあ、どうするか。答えは簡単です――配信ライブ」

次のスライド。
世界中のライブ配信市場の推移が映る。

「数年前、一気に広まった配信ライブ、でも今はもう下火だって? 違います。まだ本当のポテンシャルが発揮されてないだけ」

これは……単なるプレゼンじゃない。
慧の“本気”だ。

「画質が悪い、音質が悪い、ラグがひどい。既存のプラットフォームはどれもライブに特化してないから、技術が追いついてないんです」

慧はリアルタイム配信の弱点を、的確に指摘してる。

「ECHOは違います。最初から、ライブ配信専用に設計されたプラットフォームです。4K映像、ハイレゾ音源、遅延0.3秒以下。この技術があれば――」

次のスライドには、SONIC WAVEのロゴ。

「日本最大の音楽フェスを、世界中に届けられる。しかも、リアルタイムで」

会場の空気が変わった。
投資家たちが、前のめりになっている。

「10万人しか入れない会場を、100万人が、1000万人が、同時に体験できる。チケット代は現地の半額。それでも、売上は現地を超える。なぜなら――規模が桁違いだからです」

理論は正しい。数字も説得力がある。
問題は――本当にその技術があるのか、だけどな。

「配信チケットを3000円で売れば、100万人で30億円。原価はほぼゼロ。利益率は、現地開催の比じゃない。しかも――」

画面が切り替わり、ECHOの機能紹介が映る。

「ECHOには、インタラクティブ機能がある。視聴者がリアルタイムでアーティストにリクエストや投げ銭ができる。これは、ただの配信じゃない。新しい音楽体験です」

投資家たちが、さらに身を乗り出している。
慧は画面を見ずに、投資家たちの顔を一人一人見ながら話している。

……プレゼンの技術としては、すごく上手い。

「だから、SONIC WAVEの独占配信権は――私たちECHOが取るべきなんです。技術も情熱も、ビジョンも全部揃ってる。あとは、資金だけ」

慧が会場をゆっくりと見回す。

そして――慧の視線が、俺とぶつかった。

一瞬、動きが止まる。

その目が、少しだけ驚いているのがわかった。
俺は無表情を装いながらも、心臓がバクバクしてる。

慧はふっと笑って、何事もなかったかのようにプレゼンを続けた。

「――以上です。ご清聴、ありがとうございました」

会場に拍手が起こる。

……悪くない。いや、かなり良かった。
あいつの理論も情熱も、間違いなく本物だった。 

ただ――実績がない。信用もない。

でも ステラこっちには、数字と実績、ブランド力がある。
投資家たちは最終的にうちの会社ステラを選ぶだろう。

……それが、この世界の現実。

中堅企業の順番が流れ、刺激のないプレゼンが続く。

そして、次はいよいよ――俺の番だ。

「次は、ステラレコードの瀬戸専務です」

立ち上がり、壇上に向かう。
背筋を伸ばし、プロジェクターにステラのロゴを映し出す。

感情は表に出さない。
俺は、数字だけで勝負する。

「ステラレコードは国内シェア35%、所属アーティスト300組。年間売上500億円――」

投資家たちの目が俺に集中する。
当然だ。ステラは業界最大手。
実績も資金力も、他とは比べ物にならない。

「SONIC WAVEの配信を任せていただければ、ステラ所属の全アーティストを動員できます。独占楽曲も提供可能です。既存の配信ネットワークも活用できる――リスクは、ほぼゼロです」

リスクゼロ。
それだけで、投資家は安心する。

慧には悪いけど、理屈も情熱も説得力も、数字の前では無力だ。

「――以上です」

会場が静まったあと、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
さっきの慧のプレゼンよりも明らかに大きい。

当然だろ。
これが、ブランド力というものだ。

壇上を降りると、慧の姿が視界の端に映った。

――あいつはステラの最大の“ライバル”だ。

次に会うときは、ただの京介としてじゃ、もう済まされない気がした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ワンナイトした男がハイスペ弁護士だったので付き合ってみることにした

おもちDX
BL
弁護士なのに未成年とシちゃった……!?と焦りつつ好きになったので突き進む攻めと、嘘をついて付き合ってみたら本気になっちゃってこじれる受けのお話。 初めてワンナイトした相手に即落ちした純情男 × 誰とも深い関係にならない遊び人の大学生

処理中です...