【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【第2章】最悪で最高のライバル

1.再会は、敵の顔をして

俺は息を呑んだ。

慧はプロジェクターの前に立って、落ち着いた表情でマイクを握っている。

俺が知ってる“あの日の甘い慧”とは違う。
今の慧は――CEOの顔をしていた。

「皆さん、音楽業界が死にかけてるって、ご存知ですよね?」

おっと、いきなり挑発から入るのか。
会場がざわつく。投資家たちが顔を見合わせる。

「CDはもう売れません。ダウンロードも頭打ち。サブスク全盛の今、アーティストはライブでしか稼げないと言われていますけど――」

画面に市場規模のグラフが映る。

「ライブもここ5年で横ばいです。もう限界なんですよ、箱もの興行は」

投資家の一人が腕を組み、別の一人はメモを取り始めた。

……引き込まれてる。
慧は、確実に場の空気を掴んでいる。

「じゃあ、どうするか。答えは簡単です――配信ライブ」

次のスライド。
世界中のライブ配信市場の推移が映る。

「数年前、一気に広まった配信ライブ、でも今はもう下火だって? 違います。まだ本当のポテンシャルが発揮されてないだけ」

これは……単なるプレゼンじゃない。
慧の“本気”だ。

「画質が悪い、音質が悪い、ラグがひどい。既存のプラットフォームはどれもライブに特化してないから、技術が追いついてないんです」

慧はリアルタイム配信の弱点を、的確に指摘してる。

「ECHOは違います。最初から、ライブ配信専用に設計されたプラットフォームです。4K映像、ハイレゾ音源、遅延0.3秒以下。この技術があれば――」

次のスライドには、SONIC WAVEのロゴ。

「日本最大の音楽フェスを、世界中に届けられる。しかも、リアルタイムで」

会場の空気が変わった。
投資家たちが、前のめりになっている。

「10万人しか入れない会場を、100万人が、1000万人が、同時に体験できる。チケット代は現地の半額。それでも、売上は現地を超える。なぜなら――規模が桁違いだからです」

理論は正しい。数字も説得力がある。
問題は――本当にその技術があるのか、だけどな。

「配信チケットを3000円で売れば、100万人で30億円。原価はほぼゼロ。利益率は、現地開催の比じゃない。しかも――」

画面が切り替わり、ECHOの機能紹介が映る。

「ECHOには、インタラクティブ機能がある。視聴者がリアルタイムでアーティストにリクエストや投げ銭ができる。これは、ただの配信じゃない。新しい音楽体験です」

投資家たちが、さらに身を乗り出している。
慧は画面を見ずに、投資家たちの顔を一人一人見ながら話している。

……プレゼンの技術としては、すごく上手い。

「だから、SONIC WAVEの独占配信権は――私たちECHOが取るべきなんです。技術も情熱も、ビジョンも全部揃ってる。あとは、資金だけ」

慧が会場をゆっくりと見回す。

そして――慧の視線が、俺とぶつかった。

一瞬、動きが止まる。

その目が、少しだけ驚いているのがわかった。
俺は無表情を装いながらも、心臓がバクバクしてる。

慧はふっと笑って、何事もなかったかのようにプレゼンを続けた。

「――以上です。ご清聴、ありがとうございました」

会場に拍手が起こる。

……悪くない。いや、かなり良かった。
あいつの理論も情熱も、間違いなく本物だった。 

ただ――実績がない。信用もない。

でも ステラこっちには、数字と実績、ブランド力がある。
投資家たちは最終的にうちの会社ステラを選ぶだろう。

……それが、この世界の現実。

中堅企業の順番が流れ、刺激のないプレゼンが続く。

そして、次はいよいよ――俺の番だ。

「次は、ステラレコードの瀬戸専務です」

立ち上がり、壇上に向かう。
背筋を伸ばし、プロジェクターにステラのロゴを映し出す。

感情は表に出さない。
俺は、数字だけで勝負する。

「ステラレコードは国内シェア35%、所属アーティスト300組。年間売上500億円――」

投資家たちの目が俺に集中する。
当然だ。ステラは業界最大手。
実績も資金力も、他とは比べ物にならない。

「SONIC WAVEの配信を任せていただければ、ステラ所属の全アーティストを動員できます。独占楽曲も提供可能です。既存の配信ネットワークも活用できる――リスクは、ほぼゼロです」

リスクゼロ。
それだけで、投資家は安心する。

慧には悪いけど、理屈も情熱も説得力も、数字の前では無力だ。

「――以上です」

会場が静まったあと、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
さっきの慧のプレゼンよりも明らかに大きい。

当然だろ。
これが、ブランド力というものだ。

壇上を降りると、慧の姿が視界の端に映った。

――あいつはステラの最大の“ライバル”だ。

次に会うときは、ただの京介としてじゃ、もう済まされない気がした。

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