【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【第3章】恋人で、敵で。それでも惹かれ合う

2.革命は実績に勝てない

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それから数日が過ぎた。
久々に予定のない夜。自宅のソファに身を沈めながら、ぼんやりとスマホを眺めている。

……こういう時間、逆に落ち着かないんだよな。

手持ち無沙汰に業界ニュースを流し読みしていると、ある見出しが目に飛び込んできた。

『ECHO、SONIC WAVE【新人枠テスト配信】を担当へ』

……は? 
テスト配信?

ECHOが?

思わず動きが止まる。
もう一度見直してから、記事を開いた。
短いけれど、書いてある内容ははっきりしていた。

“音楽配信プラットフォームECHOが、
SONIC WAVE新人アーティスト枠のテスト配信を担当することが決定。
島崎プロデューサーは「技術的な検証価値が高いと判断した」とコメント。”

……なるほど。
島崎さんは、慧にチャンスを出したってことか。

もちろん、テスト配信はあくまで試験段階。
成功したからといって本番が確約されるわけじゃない。

スマホが震える。慧からの着信だった。

「京介、聞いて。テスト配信が決まった」

開口一番、興奮を抑えきれない声が飛び込んでくる。

「ここで結果を出せば、本番の交渉に参加できる。絶対にSONIC WAVEの配信権を勝ち取る」

……ほんとブレないな、こいつ。

強気で、一直線で。
声だけで表情まで見えてくる。
俺は少しだけ間を置いてから、口を開いた。

「テスト配信はチャンスだけど、保証じゃないからな」

まず、そこから釘を刺す。

「わかってるよ」

慧は即答した。

「だから完璧にやる。ECHOの技術なら、必ずやれるから」
「……島崎さんは基本的にステラ寄りだからな。今回のテスト配信も、様子見の意味合いが強いし」
「それでも結果を出せば、無視はできないはず。俺は情熱と技術で道を開く。それ以外に方法はない」

その声があまりに真っ直ぐで、俺は何も言い返せなかった。​​​​​​​​​​​​​​​​



三週間後。
SONIC WAVEのテスト配信当日。

自宅のデスクで、ECHOの配信画面を立ち上げる。

……想像以上だった。

4K映像の鮮明さ。音の一つ一つが際立っていて、まるで会場にいるような臨場感。
コメント欄が猛スピードで流れていく。

『画質すごい! めっちゃ綺麗!』
『現地で見るより良くない?』
『ECHO最高じゃん!』

視聴者数がみるみる増えていく。

5万人、10万人――

配信が終わって、視聴者数は最終的に20万人を超えた。
テスト配信で、これだけの数字。

業界紙のニュースがすぐに出た。

『ECHOのテスト配信、大成功。視聴者数20万人超え』
『業界関係者「新人枠の配信で、ここまでの没入感は前例がない。これは革命」』

慧が――やり遂げた。


翌日、ステラ本社。

父に呼ばれ、会議室で資料を渡された。
表紙には、SONIC WAVE本番配信の検討資料。

「ECHOのテスト配信は見た。技術は確かだ」

淡々とした口調。
評価はしている。でも、それ以上でも以下でもない。

一拍置いて、父は続けた。

「だが、SONIC WAVEの本番配信は、技術力だけで決まる話じゃない」

資料をめくりながら、指で項目を示す。

「安定運用、資金力、アーティストとの関係性、トラブル対応力。主催者が重視するのはそこだ」

……要するに。
華々しい成功より、“失敗しない保証”。

「その全てにおいて、ステラは条件を満たしている」

父は別の資料を開いた。

「昨日、島崎とも話をした。ECHOのテスト配信は高く評価していたが……」

俺の心臓が、嫌な音を立てた。

「本番では桁が違う。新人枠は20万人だったが、メインステージは100万人以上。サーバーへの負荷は5倍を超える」
「……はい」
「それだけじゃない。本番は3日間の連続配信。トラブルが起きた時、ECHOにはバックアップ体制がない」

父は冷静に、事実だけを並べていく。

「ステラには、過去5年で30回以上の大型配信実績がある。トラブル発生率0.3%。万が一の時も、24時間体制のサポートチームと予備サーバーが稼働する」

資料には、ステラの実績が一覧で並んでいた。

国内最大級の音楽フェス。
海外アーティストの独占配信。政府主催のイベント。
どれも、失敗が許されない案件ばかりだ。

「技術的な優位性だけでは、リスクを上回れない」

父は資料を閉じた。

「来週、優先交渉権を獲得する。そのまま正式契約へ進める」

決定事項のように告げられる。
島崎さんの考えも、おそらく同じなんだろう。

つまり―― ECHOは、技術で勝った。
視聴者の反応も、業界の評価も得た。
それでも、“本番の重圧に耐えられる保証”がない。

どれだけ優れた技術を持っていても大型案件では、“実績”と”安心”が優先される。

恐らく、SONIC WAVE本番の配信権はステラで確定。
ECHOが入り込む余地はほとんどない。

このままだと、慧の道は……ほぼ閉ざされる。

「慧……」

胸の奥に、重たいものが沈んだ。



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