【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【第3章】恋人で、敵で。それでも惹かれ合う

4.名前で呼べない場所で

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ステラ本社、役員会議室。

重たい扉が閉まる音が大きく響く。
長いテーブルの向こうに、父と取締役たちが並ぶ。

いつもの会議とは、明らかに空気が違う。

「では、SONIC WAVE配信権について、最終確認に入る」

資料が配られる。
見慣れたロゴ、ステラレコード。
その隣に、見慣れない文字――ECHO。

ざわ、と小さな動揺が空気に走る。

「島崎プロデューサーから、提案があった」

父が低く言った。

「ステラとECHOの共同体制だ。本番の第三ステージをECHOが担当し、ステラは全体統括とメインステージの配信を担う」

反対意見が即座に出る。

「新人企業と組む必要があるのか」
「本番でトラブルが起きたら、ステラの責任になる」

そりゃそうだろう、リスクが高すぎると判断されるのは想定内だ。
心臓が早鐘のように鳴ってる。

「京介、お前の意見を聞こう」

視線が一斉に俺に向く。逃げ場はない。

「……ECHOと組むべきだと思います。ECHOの技術は、本物です」

資料を一枚示す。
手が少し震えてる。でも、止めない。

「テスト配信の結果は異例でした。視聴者数、離脱率、海外からのアクセス。全て前例がないレベルです」

取締役の一人が鼻で笑う。

「感情論だな」
「違います。数字と実績に基づいた判断です」

ここで引いたら終わりだ。

「SONIC WAVEは、来年も再来年も続く。安全だけを選んでいては、先はありません」

会議室が一瞬、静まり返った。全員の視線が俺に刺さる。

「ECHOと組むことでフェスの未来を示せる。それが、ステラにとっても最善だと思います」
「……京介、お前の意見は“専務”としての意見か?」

父がゆっくりと口を開いた。
一瞬、喉が詰まる。

「いえ、音楽業界の人間としての意見です」
「わかった。いい覚悟だ」

父が、他の取締役を見回した。

「島崎プロデューサーの提案は合理的だ。リスクはあるが、リターンも大きい。来週、ECHOと三者協議の場を設ける。その結果を見て、最終判断を下す」

賛成多数で決定。
俺の胸は、緊張と希望が入り混じって震えた。



翌週。

都内の高層ビル、会議室。
三者協議の日だ。

テーブルの向こうには、島崎プロデューサー。
その隣に父とステラの取締役たち。
……そして俺。

反対側には、慧と秘書、ECHOの技術担当。

「では、始めよう」

島崎さんが口を開く。

「今回の提案は、ステラとECHOの共同体制だ。SONIC WAVE本番において、第三ステージの配信をECHOが担当する」

資料が配られる。
スケジュール、技術仕様、契約条件。

「ステラは全体統括とメインステージを担当。ECHOは第三ステージを独自技術で配信する」

島崎さんの視線が、慧に向く。

「失敗した場合、翌年以降の配信権はステラ単独。成功した場合のみ、来年以降、主配信の座を競う権利をECHOに与える。さらに、技術トラブルが発生した場合の責任は、ECHOが全て負う」

一瞬の沈黙。

技術トラブルの全責任は、ECHO。
かなり厳しくて――重い。

「……わかりました。ただし、一つ条件があります」

慧の言葉に、空気が変わった。

「条件とは?」
「第三ステージの配信について、完全な裁量権をECHOに与えてください」
「完全な裁量権?」

父が眉をひそめる。

「技術仕様、演出、カメラワーク。全てをECHOの判断で行わせてほしい」

会議室が一気にざわついた。

「それはリスクが高すぎる」
「ステラのブランドを背負うんだぞ」

取締役の声が重なる。

「承知しています」

慧は、真っ直ぐ前を見た。

「だからこそ、中途半端な妥協はしません。ECHOの技術を最大限に活かせなければ、意味がないんです。ECHOの全てを、ここに賭けます」

沈黙。
その中で、島崎さんが小さく笑った。

「……面白い」
「島崎さん?」
「いいだろう。完全な裁量権を認める。ただし、リハーサル段階でステラとSONIC WAVE運営の承認を得ること」
「……ありがとうございます」

慧が顔を上げる。
父が、ゆっくり頷いた。

「その条件で、ステラも合意する」
「ECHO側も合意します」
「では、正式契約に向けて詰めていこう」

会議はそこから三時間続いた。
技術、運営、リスク対応。
慧は一つも曖昧にせず、全て答え切った。



会議が終わった後。
エレベーターホール。

「京介」

慧が俺を呼び止めた。

「……慧」
「ありがとう」

その言葉に、俺は首を振った。

「礼は早いよ。ここからが本番だろ」

慧がにやりと笑った。

「わかってるよ」
「でもさ。完全な裁量権なんて、リスク高すぎるだろ」
「それがECHOの戦い方だよ。中途半端に守って勝てるなら、最初から挑まない」

その言葉に覚悟が滲む。

「……わかった。なら、俺も全力で支える」
「京介」
「ステラの専務としてじゃない。お前の恋人として」

エレベーターが到着し、ドアが開く。

「ありがとう。じゃあ、また」

慧が乗り込む。
ドアが閉まる直前、低い声で言った。

「京介。大好きだよ」

俺も、と言い返す前にドアが閉まった。

本当は――
ビジネスも、立場も、ライバル関係も全部忘れて。
今はただ、慧のそばにいたかった。

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