【完結】恋愛強制執行!?―俺様ホストの甘い罠―

砂原紗藍

文字の大きさ
23 / 31
最後の駆け引き

22.“契約恋人”のラスト・デート

しおりを挟む
side 陸

昨夜はそのまま眠ってしまった。
目を覚ますと、先に起きていたカイトが俺を見てにやにやしている。

「……なに見てんだよ」
「陸の寝顔。可愛かった」
「見んな」

文句を言っても、カイトは余裕の笑みを崩さない。

「今日、どこ行くんだよ」
「秘密」
「秘密って……」
「いいから、黙って俺について来りゃいいの」

カイトが嬉しそうに準備してるのを見てると、こっちまで楽しみになってくる。

「とりあえず着替えろ。カジュアルでいいから」
「わかったよ」

言われた通り、着替える。
カイトも仕事の時とは全然違う格好で、なんか新鮮だ。

「じゃあ行こうか」
「どこに?」
「だから秘密だって」

手を引かれて外に出る。電車に乗って、気がつくと海の見える街にいた。

「うわぁ……」

海に着いて、思わず声が漏れる俺を見てカイトが得意げに言う。

「やっぱりな。お前、こういうの好きそうだと思った」

実際、海は好きだ。静かで癒やされる。
でもそんなこと言った覚えはないのに。

「……なんでわかるんだよ」
「俺だから。陸のことは誰よりもわかってる」

海沿いの道を歩きながら、カイトがぽつぽつと話し始める。

「……そういえば、陸に言ってなかったことがあるんだ」
「ん?」
「カイトって源氏名だけどさ、本名は同じなんだけど、漢字は“海音”」

思わず息が止まる。海の前で、こんなふうに名前を教えてくれるなんてな。

「海音……か」
「そう。陸と海。俺たち、名前だけでも縁を感じる。運命的だよな?」
「ああ……そういうの、ちょっと恥ずかしいけど、なんか嬉しいかも」
「だろ? あのさ、俺……実は普通の恋愛とかよくわからなくて」
「え?」
「ホストだから、客を喜ばせるのは得意だけど……本気で人を好きになったことがなかったからな」

急に真面目な話になって、驚く。

「陸と一緒にいると、今まで知らなかった感情がいっぱい出てくるんだ」
「……そう」
「嫉妬もそうだし、独占したいって気持ちも。こんなに人のことを考えて過ごすなんて、初めて」

カイトの横顔が、いつもより大人っぽく見える。

「だから時々、どうしていいかわからなくなる。陸を困らせちゃうこともあるし」
「……別に困ってないよ」

小さく答える。本当は嬉しいんだ、そんなに考えてもらえてるなんて。

「ありがと。陸は優しいな」
「優しくなんかねーし」
「優しいよ。俺のわがままに付き合ってくれるし」

そう言って、カイトが俺の手を握る。

「これからもよろしく、恋人さん」
「……勝手に恋人にするなって言ってるだろ」

でも手は振りほどかない。握られた手が温かくて、離したくない。

「じゃあ改めて聞くよ。陸、俺と付き合ってください」
「は? 今更何言ってんだ」
「ちゃんと聞いたことなかったから」

カイトが真剣な顔で俺を見つめる。

「返事は?」
「……考えとく」
「えー、考えとくって何それ」
「いきなり言われても困る」

本当は嬉しくて、すぐにでも「はい」って答えたい。でも素直になれない。

「じゃあ今日一日で返事決めて」
「一日って短すぎるだろ」
「十分だよ。陸の気持ち、俺にはわかるから」

にやにや笑うカイトがムカつく。でも、その通りなんだよな。
海を眺めながら歩いてると、だんだん心が軽くなってくる。

カイトと一緒にいると、素の自分でいられる気がする。

「陸」
「……なに?」
「好きだよ」

突然言われて、心臓が跳ねる。

「……急になんだよ」
「言いたくなったから」

カイトの笑顔を見てると、こいつと一緒にいたいって気持ちが溢れてくる。

でも、まだ素直に「好き」とは言えない。
もう少し時間が必要だ。今日一日で、ちゃんと気持ちを整理しよう。​​​​​​​​​​​​​​​​





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元アイドルは現役アイドルに愛される

BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。 罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。 ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。 メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。 『奏多、会いたかった』 『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』 やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸Twitterもぜひ遊びに来てください🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結

処理中です...