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【第一章】その夜の出会いが、全てを変えた
1.運命の誕生日
そして、今日はちょっと切ない誕生日になった。
恋人の……翔太に別れを告げられた。
「……ごめん、慧。好きな人ができた」
言われた瞬間、胸がキュッとなったけど、同時に何かがすーっと抜けた気もした。
でも、言葉が出てこなかった。
怒る気持ちも引き止めたい気持ちも、どこか遠くに置いてきてしまったみたいに。
「……そっか」
それだけ、口から出た。
本当は、「どうして?」とか、「待ってよ」とか言いたかった。
でも全部胸の奥で押し込めた。
「慧は仕事ばっかりで、全然会えないし……」
翔太が続ける。
うん、そうだな。
最近は本当に忙しかった。
仕事に追われて、気づけば半年以上まともにデートもしてなかった。
「そうだよな」
寂しかったんだろうな。きっと、翔太は――。
「……悪かった」
それしか言えなかった。
「慧は悪くない。俺が――」
……違う。
悪いのは、ただ……仕方なくすれ違ってしまった二人の時間。それだけだ。
翔太は自分を責めるように、頭を少し下げて謝る。
「……翔太」
……心のどこかが痛いのに、どうしてだろう。
「その人と、幸せになってね」
自分の声に、わずかに震えが混じっていた気がする。
それを隠すように立ち上がった。
「え、もう?」
「うん。誕生日ケーキ、一人で食べるのも微妙だし」
冗談っぽく言えば、翔太が困ったような顔をした。
「慧……、俺……」
「ありがとう」
そう言って、料理もケーキも食べずにレストランを出た。
胸の奥はなんとも言えない空っぽな感じ。
夜風が冷たい。冷たいはずなのに、心の奥は妙に熱い。
ぶらぶら歩いてると、何やら揉めてるような声がした。
ふと目をやると――若い男二人が、綺麗な男に絡んでいた。
これは……まずいな。
「何してんの」
咄嗟に割り込む。体が勝手に動いた。
「悪い。この人、俺の連れなんだけど。離してくんないかな」
落ち着いた低い声が自然に出てた。
これはもう、習慣みたいなものだ。
仕事で鍛えた交渉術。
「誰だよテメェ」
「彼氏って言ったら、帰してくれる?」
男たちは舌打ちして去っていった。
ほっと胸をなでおろす。
「あ、ありがとな」
その瞬間、目の前の人を見た。
……綺麗だ。
キラキラした瞳、整った鼻筋、少し困ったような表情。
なんだ、この顔。
心臓が跳ねすぎてやばい。
不思議だ。
初対面なのに、なんでこんなにドキドキするんだ?
「ただ、彼氏ってさぁ……」
「咄嗟だから、許して? でも怪我がなくてよかった」
笑顔を見せる。
……はぁ、心臓うるさい。
触れたわけでもないのに、胸がぎゅっとなる。
目の前の綺麗な人はため息をついて、何かを抱えてるような……そんな表情をした。
「なぁ、もしかして何か悩んでる?」
思わず聞いてた。
余計なお世話だってわかってる。
なのに、何か言いたげで少し寂しそうに見えたから――どうしてもほっとけなかった。
「え……?」
「よかったら、話聞くよ?」
そう言ったら、今度は苦笑が消えて困ったような表情になる。
ごめん。そんな顔してほしかったわけじゃない。
「でも、なんか浮かない顔してるじゃん」
「あんたには関係ないだろ」
「たしかに関係ないかも。でも君にはそんな顔してほしくないな」
「何言ってんだよ、キザか……」
キザで結構。本音だったから。
「君、名前は?」
「はぁ?」
「俺の誕生日に君と出会ったんだし、記念に名前くらい教えて?」
「いや何言ってんだ、あんた」
「俺は慧。君は?」
彼はため息を一つ吐いて答えてくれた。
「瀬戸京介」
……京介。
「じゃあ、京介って呼ぶよ」
そして、京介は話してくれた。
職場の部下に告白されたこと。しかも相手は男性だってこと。迷ってること。
……優しいな、この人。
相手を傷つけたくなくて悩んでるんだ。
「じゃあ、良かったら……俺んち来ない?」
京介は少し驚いた顔。でも、最終的に頷いてくれた。
「今日、京介に会えたの……結構嬉しい誕生日プレゼントだ」
そっと手首を掴む。
冷たい夜風の中で、手のぬくもりが少し伝わる。
なんだろう。
初めて会ったはずなのに、会うべくして会った、みたいな不思議な感じがした。
……絶対に堕としたい。この人を。
恋人の……翔太に別れを告げられた。
「……ごめん、慧。好きな人ができた」
言われた瞬間、胸がキュッとなったけど、同時に何かがすーっと抜けた気もした。
でも、言葉が出てこなかった。
怒る気持ちも引き止めたい気持ちも、どこか遠くに置いてきてしまったみたいに。
「……そっか」
それだけ、口から出た。
本当は、「どうして?」とか、「待ってよ」とか言いたかった。
でも全部胸の奥で押し込めた。
「慧は仕事ばっかりで、全然会えないし……」
翔太が続ける。
うん、そうだな。
最近は本当に忙しかった。
仕事に追われて、気づけば半年以上まともにデートもしてなかった。
「そうだよな」
寂しかったんだろうな。きっと、翔太は――。
「……悪かった」
それしか言えなかった。
「慧は悪くない。俺が――」
……違う。
悪いのは、ただ……仕方なくすれ違ってしまった二人の時間。それだけだ。
翔太は自分を責めるように、頭を少し下げて謝る。
「……翔太」
……心のどこかが痛いのに、どうしてだろう。
「その人と、幸せになってね」
自分の声に、わずかに震えが混じっていた気がする。
それを隠すように立ち上がった。
「え、もう?」
「うん。誕生日ケーキ、一人で食べるのも微妙だし」
冗談っぽく言えば、翔太が困ったような顔をした。
「慧……、俺……」
「ありがとう」
そう言って、料理もケーキも食べずにレストランを出た。
胸の奥はなんとも言えない空っぽな感じ。
夜風が冷たい。冷たいはずなのに、心の奥は妙に熱い。
ぶらぶら歩いてると、何やら揉めてるような声がした。
ふと目をやると――若い男二人が、綺麗な男に絡んでいた。
これは……まずいな。
「何してんの」
咄嗟に割り込む。体が勝手に動いた。
「悪い。この人、俺の連れなんだけど。離してくんないかな」
落ち着いた低い声が自然に出てた。
これはもう、習慣みたいなものだ。
仕事で鍛えた交渉術。
「誰だよテメェ」
「彼氏って言ったら、帰してくれる?」
男たちは舌打ちして去っていった。
ほっと胸をなでおろす。
「あ、ありがとな」
その瞬間、目の前の人を見た。
……綺麗だ。
キラキラした瞳、整った鼻筋、少し困ったような表情。
なんだ、この顔。
心臓が跳ねすぎてやばい。
不思議だ。
初対面なのに、なんでこんなにドキドキするんだ?
「ただ、彼氏ってさぁ……」
「咄嗟だから、許して? でも怪我がなくてよかった」
笑顔を見せる。
……はぁ、心臓うるさい。
触れたわけでもないのに、胸がぎゅっとなる。
目の前の綺麗な人はため息をついて、何かを抱えてるような……そんな表情をした。
「なぁ、もしかして何か悩んでる?」
思わず聞いてた。
余計なお世話だってわかってる。
なのに、何か言いたげで少し寂しそうに見えたから――どうしてもほっとけなかった。
「え……?」
「よかったら、話聞くよ?」
そう言ったら、今度は苦笑が消えて困ったような表情になる。
ごめん。そんな顔してほしかったわけじゃない。
「でも、なんか浮かない顔してるじゃん」
「あんたには関係ないだろ」
「たしかに関係ないかも。でも君にはそんな顔してほしくないな」
「何言ってんだよ、キザか……」
キザで結構。本音だったから。
「君、名前は?」
「はぁ?」
「俺の誕生日に君と出会ったんだし、記念に名前くらい教えて?」
「いや何言ってんだ、あんた」
「俺は慧。君は?」
彼はため息を一つ吐いて答えてくれた。
「瀬戸京介」
……京介。
「じゃあ、京介って呼ぶよ」
そして、京介は話してくれた。
職場の部下に告白されたこと。しかも相手は男性だってこと。迷ってること。
……優しいな、この人。
相手を傷つけたくなくて悩んでるんだ。
「じゃあ、良かったら……俺んち来ない?」
京介は少し驚いた顔。でも、最終的に頷いてくれた。
「今日、京介に会えたの……結構嬉しい誕生日プレゼントだ」
そっと手首を掴む。
冷たい夜風の中で、手のぬくもりが少し伝わる。
なんだろう。
初めて会ったはずなのに、会うべくして会った、みたいな不思議な感じがした。
……絶対に堕としたい。この人を。
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