【完結】運命の人が敵対企業の専務だったので、ビジネスも恋も全部奪いました

砂原紗藍

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【第一章】その夜の出会いが、全てを変えた

2.抑えきれない想い

マンションに着いて、京介を部屋に招き入れた。
エレベーターで最上階へ。
京介が少し驚いた顔をしている。

「ここって……」
「どうかした?」
「いや、だってここ、家賃めちゃくちゃ高いよな……」

やっぱり、そこは気になるだろうな。

「まぁね。親が『住むところだけは確保しろ』って……まあ、そういう家なんだ」

適当に誤魔化しておいた。
細かい話はしたくない。今はただ、この人と一緒にいたい。

部屋に入ると、京介が少し戸惑ったような顔をした。

「座ってて。飲み物取ってくる」

キッチンに向かいながら、深呼吸する。
こんなにドキドキするなんて、らしくないな。

缶ビールを二つ持って戻る。京介がソファに座っている。

「……あんまり物、ないんだな」

京介が部屋を見回して言った。

「うん。あんまり家にいないから」

仕事ばっかりだからな。
翔太にもそれを指摘されて、別れたわけで。
でも今は、翔太のことより……京介のことで頭がいっぱいだ。

「仕事忙しいの?」
「まぁね。今ちょっと大きなプロジェクト抱えてて」

ソファに座り、京介の隣に缶ビールを置いた。

「でも今日は休み」
「……そっか。そういえば、慧って何歳?」

ふいに、京介が聞いてくる。

「27」
「俺より年下じゃん」

京介が少し驚いた顔をした。
29歳か。2歳上。
でも、そんなのはまったく気にならない。

「俺も普通の人間だよ。今日だってふられたし」

京介の表情が、少し柔らかくなった。

「今すごい寂しいんだ。だから京介がいてくれて、ほんと助かってる」

本当のことだ。今、一人になりたくなかった。
京介と話していると心が落ち着く。なんでだろう。

「なぁ京介。さっきの話、もっと聞かせて」

京介の悩み。男性の部下に告白されたこと。
話を聞きながら、俺は思った。
京介は優しすぎるんだ。相手を傷つけたくなくて、自分が我慢してる。

「好きじゃないなら、ちゃんと断ってあげて。それが優しさだから」

そう言うと、京介は少し考えて――。

「……俺、どうすればいいんだよ」

その声が切なそうで。
さっきのドキドキが舞い戻り、どうしてもこの人が欲しくなってきた。

「でも、男と付き合うのが不安なだけなら……」

思わず、言葉が出ていた。

「試してみるのもありじゃない?」
「試すって……」
「俺と」

京介の目が見開かれた。
やばい。言ってしまった。でも、止まらない。

「京介、男と付き合うのが怖いんでしょ? だったら俺と、練習してみない?」

京介の手に、自分の手を重ねた。
この人の手は温かい。

「……け、慧……」

名前を呼ばれただけで、胸が高鳴る。

「うん。いい声」

京介が真っ赤になった。すげえ可愛い。

「京介。俺、今日誕生日なんだ」
「……うん」
「だからさ、わがまま言ってもいい?」
「……何?」

手を伸ばして、京介の頬に触れた。柔らかい。

「今日だけ、俺のものになってくれない?」

京介の息が止まった。

「……は?」
「誕生日プレゼント。京介が欲しい」

本心だった。この人が欲しい。

「ちょ、待って……」
「嫌なら断っていいよ。でも……」

顔を近づける。
京介の瞳が、揺れている。

「俺、京介のこと……好きになっちゃったみたい」

一目惚れなんて信じてなかった。
でも、これがそうなんだろう。
会った瞬間から、心を奪われた。

「……嘘だろ」

京介の声が震えている。

「嘘じゃないよ。一目惚れってやつ」
「会ったばっかりじゃん……」
「だから? 時間は関係ないよ」

京介の髪をそっと撫でた。サラサラしていて、気持ちいい。

「京介。俺と、付き合ってみない?」

京介は答えられないでいた。
でも嫌がってはいない。それがわかった。

――チャンスはある。
この人を、絶対に、俺のものにする。

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