【完結】運命の人が敵対企業の専務だったので、ビジネスも恋も全部奪いました

砂原紗藍

文字の大きさ
9 / 15
【第二章】ビジネスは敵、恋は本気

2.CEOを脱いだら、ただの恋人

しおりを挟む
懇親会が終わり、帰りのタクシーの中。
窓の外の景色を眺めながら京介のことを考えてたら、ECHOのスタッフから電話がかかってきた。

「名波さん、今日のプレゼン、お疲れ様でした」
「ああ。ありがとう」
「Kファンドの反応、どうでしたか?」
「……まだわからない。でも、手応えはあった」

本当にわからないんだよな。
投資家たちの表情は読めなかった。

「明日、技術部で打ち合わせお願いします」
「わかった」

電話を切る。
京介のことで頭がいっぱいだ。

――会いたい。

マンションに着いて、部屋に入る。
冷蔵庫を開けてビールを取り出して、一口。

この前、ここであいつと――。

スマホを見る。
京介にメッセージを送るべきか。
指が震えてる。

『京介、今夜時間ある?』

送信。
既読がつくまでの数秒が、やけに長い。

『あるけど』
『会いたい』
『……どこで?』
『俺んち。話したいことがある』
『わかった、行く』

よし。京介が来る。
俺は、ほんの少しだけ口元を緩めた。

部屋を見回して散らかってないか確認する。

……何やってんだ、俺。

二十分後、インターホンが鳴った。
ドアを開けると、京介が立っていた。

会いたかった。
マジで会いたかった。

「京介」

部屋に入った瞬間、我慢できなくて抱きしめた。

「っ……慧」

京介の身体が、少し強張る。
でも、すぐに力が抜けて、俺の腕の中に収まった。
張り詰めていた何かがゆっくりと解けていく。

「やっと、二人きりになれた」

限界だった。
ずっと京介に触れたくて、たまらなかった。

「今日、京介がいるって知らなくて……びっくりした」

まさか、あんな形で再会するなんて。

「プレゼン、すごかったな」
「京介に見られてると思ったら、めちゃくちゃ緊張した」
「そうは見えなかったけど」
「演技。内心、ドキドキだった」

京介を抱きしめたまま、少し笑った。

「あの夜、仕事の話より……京介と一緒にいることの方が、大事だったから」

嘘じゃない。
あの時は、ただ京介といたかった。
仕事のことなんて忘れて、ただ京介を感じていたかった。

途中から、ビジネスの話になった。
共同でやらないかという京介の提案。

「俺は……そんなつもりで、ECHOを立て直したんじゃない」

声が震える。
ECHOは俺の夢そのもの。

「なんでそこまで音楽に……ECHOに、こだわるんだよ」

京介の問いに、17歳の頃の話をした。

「音楽に救われたから。音楽を届けたいんだ」

京介が、静かに聞いてくれている。

「……いい目標だと思う。でも、甘い部分もあるけどな」

京介が現実を突きつけてくる。
俺だって、そのくらいはわかってる。

「京介は、俺の敵なの?」
「……ライバルだからな」
「そうだね。これは勝負だ」

その顔を見つめ続ける俺に、京介はふと口を閉じた。

――それならば。

「仕事の話はもういいでしょ。今は、恋人だよね?」

その言葉に、京介の顔が赤くなった。

「……まだ、そうとは……」
「じゃあ今から恋人になろう」

京介を抱きしめた。

「仕事の敵でも、ライバルでもいい。でも今は……京介のこと、好きな男でいさせて」

努力とか根性だけでうまくいくほど甘いもんじゃない、分かってるつもりだ。
でも、この人となら。もしかしたら。

「俺、慧に会いたいって思うし、一緒にいると楽しい」

京介の告白。

「慧のこと……好きだと思う」

喉の奥が熱くなった。
京介の気持ちが何より嬉しい。

「俺と、付き合ってくれる?」
「……今さら聞くなよ」
「京介は、俺のもの」
「……ああ」

笑う横顔に照れが見えた。

キスはした。抱きしめ合った。
京介の鼓動が俺の胸に伝わってくる。

落ち着いてきたころ。

「……慧は?」

京介が小さな声で聞いてきた。

「俺?」
「お前は……いいのか?」

京介が顔を上げて俺を見た。
本当に優しい人だ。
自分が気持ちよくなった後なのに、俺のことを心配してくれる。

「ありがとう」

京介の額にキスを落とす。

「でも、今日は京介だけで十分」

本当は俺も限界だ。
でも。

「京介の気持ちいい顔見られたから」

その言葉に、京介の顔が真っ赤になった。

「……っ、ばか」

京介が恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋める。
可愛い。

「京介」
「……ん?」
「好き」

その言葉に、京介が少し驚いた顔をした。
そして。

「……俺も」

小さく、でもはっきりと。

「好き」

その言葉を聞いて、俺は京介を強く抱きしめた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら

音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。 しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい…… ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが…… だって第三王子には前世の記憶があったから! といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。 濡れ場回にはタイトルに※をいれています おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。 この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。

神子は再召喚される

田舎
BL
??×神子(召喚者)。 平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。 そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。 受けはかなり可哀そうです。

色欲も時代には勝てないらしい

ちき
BL
前世で恋人だった運命の人に、今世では捨てられてしまった祐樹。前世で愛してくれた人は彼以外誰もいないのだから、今後僕を愛してくれる人は現れないだろう。その事を裏付けるように、その後付き合う人はみんな酷い人ばかりで…………。 攻めがクズでノンケです。 攻め・受け共に、以外とのキスや行為を仄めかす表現があります。 元クズ後溺愛×前世の記憶持ち

嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!

海野(サブ)
BL
騎士の【ライアン】は指名手配されていた男が作り出した魔術にで作り出した○○しないと出れない部屋に自分が嫌っている【シリウス】と一緒に閉じ込められた。

かわいい王子の残像

芽吹鹿
BL
 王子の家庭教師を務めるアリア・マキュベリー男爵の思い出語り。天使のようにかわいい幼い王子が成長するにつれて立派な男になっていく。その育成に10年間を尽くして貢献した家庭教師が、最終的に主に押し倒されちゃう話。

婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま
BL
オメガ男子の小島史(ふみ)は、ネットを中心に展開している中小広告代理店の経理部に勤めている。会社が国の補助金が入る婚活アプリ開発に関わる事になった。テスト版には、自社の未婚で番のいないアルファとオメガはもちろん未婚のベータも必ず登録して動作確認をするようにと業務命令が下された。史が仕方なく登録すると社長の辰巳皇成(こうせい)からマッチング希望が…

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

処理中です...