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【第二章】ビジネスは敵、恋は本気
5.大好きだよ、って伝えたくて
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数日後、京介から連絡が来た。
『島崎さんに会った。共同でやる提案が出そうだ』
スマホの画面を見つめる。
『本番で、ECHOが第三ステージを担当する可能性がある』
第三ステージ……!
メインじゃない。でも、ECHOが配信できるチャンスなんだ。
『京介。ありがとう。俺、やるよ』
返信を送った瞬間、手が震えた。
これからが本当の戦いだ。
*
そして、三者協議が開かれた。
都内の高層ビル。
無機質な会議室に入った瞬間、空気が切り替わるのを感じた。
テーブルの向こうには、島崎プロデューサー。
その隣にステラの取締役たちと、京介の父。
……そして京介本人。
こちら側には、俺と秘書、ECHOの技術担当。
逃げ場はない。
ここが勝負どころだ。
「では、始めよう」
島崎さんが口を開いた。
「今回の提案は、ステラとECHOの共同体制だ。SONIC WAVE本番において、第三ステージの配信をECHOが担当する」
資料が配られる。
スケジュール、技術仕様、契約条件。
「ステラは全体統括とメインステージを担当。ECHOは第三ステージを独自技術で配信する」
島崎さんの視線が、まっすぐこちらに向いた。
「失敗した場合、翌年以降の配信権はステラ単独。成功した場合のみ、来年以降、主配信の座を競う権利をECHOに与える。さらに、技術トラブルが発生した場合の責任は、ECHOが全て負う」
……重い。
技術トラブルの全責任。
それがどれだけのリスクか、わかってる。
失敗すれば、未来はない。
一瞬、会議室が静まり返る。
「……わかりました。ただし、一つ条件があります」
自分の声で、空気が変わるのがわかった。
「条件とは?」
「第三ステージの配信について、完全な裁量権をECHOに与えてください」
「完全な裁量権?」
京介の父が眉をひそめる。
「技術仕様、演出、カメラワーク。全てをECHOの判断で行わせてほしい」
ざわ、と会議室が揺れた。
「それはリスクが高すぎる」
「ステラのブランドを背負うんだぞ」
重なる取締役たちの声。
それでも、目は逸らさない。
「承知しています。だからこそ、中途半端な妥協はしません。ECHOの技術を最大限に活かせなければ意味がないんです。ECHOの全てを、ここに賭けます」
沈黙。
その中で、島崎さんが小さく笑った。
「……面白い」
「島崎さん?」
「いいだろう。完全な裁量権を認める。ただし、リハーサル段階でステラとSONIC WAVE運営の承認を得ること」
「……ありがとうございます」
思わず、息をつく。
顔を上げると、京介の父がゆっくり頷いた。
「その条件で、ステラも合意する」
「ECHO側も合意します」
「では、正式契約に向けて詰めていこう」
会議終了後、エレベーターホール。
「京介」
背中を見つけて、呼び止める。
「ありがとう」
そう言うと、京介は首を振った。
「礼は早いよ。ここからが本番だろ」
「わかってるよ」
「でもさ。完全な裁量権なんて、リスク高すぎるだろ」
「それがECHOの戦い方だよ。中途半端に守って勝てるなら、最初から挑まない」
覚悟を込めて言うと、京介が一瞬黙った。
「……わかった。なら、俺も全力で支える」
「京介」
「ステラの専務としてじゃない。お前の恋人として」
俺にだけ向けられている笑顔に癒される。
エレベーターが到着し、ドアが開く。
「ありがとう。じゃあ、また」
本当はもっと、「慧」と呼ぶ声が聞きたい。
俺の目を見てほしい。
――抱きしめたい欲望と戦う。
ドアが閉まりかけた、その瞬間。
「京介。大好きだよ」
低く、はっきり言った。
返事を聞く前に、ドアが閉まる。
照れてる顔、可愛かったな。
抱きしめられなかったけど、あの表情を見られただけで十分だった。
『島崎さんに会った。共同でやる提案が出そうだ』
スマホの画面を見つめる。
『本番で、ECHOが第三ステージを担当する可能性がある』
第三ステージ……!
メインじゃない。でも、ECHOが配信できるチャンスなんだ。
『京介。ありがとう。俺、やるよ』
返信を送った瞬間、手が震えた。
これからが本当の戦いだ。
*
そして、三者協議が開かれた。
都内の高層ビル。
無機質な会議室に入った瞬間、空気が切り替わるのを感じた。
テーブルの向こうには、島崎プロデューサー。
その隣にステラの取締役たちと、京介の父。
……そして京介本人。
こちら側には、俺と秘書、ECHOの技術担当。
逃げ場はない。
ここが勝負どころだ。
「では、始めよう」
島崎さんが口を開いた。
「今回の提案は、ステラとECHOの共同体制だ。SONIC WAVE本番において、第三ステージの配信をECHOが担当する」
資料が配られる。
スケジュール、技術仕様、契約条件。
「ステラは全体統括とメインステージを担当。ECHOは第三ステージを独自技術で配信する」
島崎さんの視線が、まっすぐこちらに向いた。
「失敗した場合、翌年以降の配信権はステラ単独。成功した場合のみ、来年以降、主配信の座を競う権利をECHOに与える。さらに、技術トラブルが発生した場合の責任は、ECHOが全て負う」
……重い。
技術トラブルの全責任。
それがどれだけのリスクか、わかってる。
失敗すれば、未来はない。
一瞬、会議室が静まり返る。
「……わかりました。ただし、一つ条件があります」
自分の声で、空気が変わるのがわかった。
「条件とは?」
「第三ステージの配信について、完全な裁量権をECHOに与えてください」
「完全な裁量権?」
京介の父が眉をひそめる。
「技術仕様、演出、カメラワーク。全てをECHOの判断で行わせてほしい」
ざわ、と会議室が揺れた。
「それはリスクが高すぎる」
「ステラのブランドを背負うんだぞ」
重なる取締役たちの声。
それでも、目は逸らさない。
「承知しています。だからこそ、中途半端な妥協はしません。ECHOの技術を最大限に活かせなければ意味がないんです。ECHOの全てを、ここに賭けます」
沈黙。
その中で、島崎さんが小さく笑った。
「……面白い」
「島崎さん?」
「いいだろう。完全な裁量権を認める。ただし、リハーサル段階でステラとSONIC WAVE運営の承認を得ること」
「……ありがとうございます」
思わず、息をつく。
顔を上げると、京介の父がゆっくり頷いた。
「その条件で、ステラも合意する」
「ECHO側も合意します」
「では、正式契約に向けて詰めていこう」
会議終了後、エレベーターホール。
「京介」
背中を見つけて、呼び止める。
「ありがとう」
そう言うと、京介は首を振った。
「礼は早いよ。ここからが本番だろ」
「わかってるよ」
「でもさ。完全な裁量権なんて、リスク高すぎるだろ」
「それがECHOの戦い方だよ。中途半端に守って勝てるなら、最初から挑まない」
覚悟を込めて言うと、京介が一瞬黙った。
「……わかった。なら、俺も全力で支える」
「京介」
「ステラの専務としてじゃない。お前の恋人として」
俺にだけ向けられている笑顔に癒される。
エレベーターが到着し、ドアが開く。
「ありがとう。じゃあ、また」
本当はもっと、「慧」と呼ぶ声が聞きたい。
俺の目を見てほしい。
――抱きしめたい欲望と戦う。
ドアが閉まりかけた、その瞬間。
「京介。大好きだよ」
低く、はっきり言った。
返事を聞く前に、ドアが閉まる。
照れてる顔、可愛かったな。
抱きしめられなかったけど、あの表情を見られただけで十分だった。
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