悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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既視感の世界

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「リナルド!貴様は私の可愛いソラトをまた苛めたそうだな?何故やさしくしてやれない!彼はこの国を救う神子なのだぞ?
 まったく何故、お前が私の婚約者なのだ…ソラトの様に少しでも可愛げがあれば…」


おれの婚約者であるロベール様は、可愛らしい見た目の神子様と呼ばれる男子を抱きしめおれを睨む



ああ
この風景も見たことがある…何を発言しても変わらない決められた流れの様な光景…
その神子様を苛めた証拠はあるんですか?
何故、おれが神子様を苛めなければいけないんですか?…………おれは好きであなたの婚約者になったわけではないですよ…?王太子殿下








 ここは、カレリナ国という国だ
 500年前に長きに渡り国を守り、繁栄させてきた闇の聖獣と守り人が天へ召された事が伝説となっている、人と精霊、魔獣の住む穏やかな国
 その国の筆頭公爵家の三男として生まれた、リナルド.アークランド、それがおれだ…
闇の魔法を司り、家族にも恵まれ、何不自由なく暮らす普通の令息、そのはずだった


 しかし、おれの人生はずっと灰色に染まっている
 何故なら既視感の連続だったから…


 初めての気が付いたのは3歳の誕生日、父のセリフからサプライズの内容まで一度見たことがある違和感、既視感で溢れていた
 それから気づく、日々ちょっとしたことまでも全て…見たことのある風景、見たことのある出来事…
初めての見るはずなのに結果が何となくわかってしまう違和感、それは全くの新鮮味を持たず出来事をただ確認するだけの作業…
そんな世界で幼い頃から過ごせばどうなるだろう…?結果は簡単なことだった
 おれに見える世界だけが灰色だ、新しい…楽しいと思える物が何も無い、全てはまるで一度体験したことがあるような…何かを警告するような既視感の中で無意味に生きている


 そんなおれの中の一番の既視感であり警告は『王太子の婚約者になってはならない』だった


 5歳の頃…
 父様が、国王陛下からの縁談の話を持ってきた瞬間…おれは背筋が凍った
 この国を支える最も栄誉ある者の隣に立つなと、全身が震え、何度も見たことがある光景のように…既視感の世界がおれに警告をしているようだった
 
しかし、5歳の子供に何ができる?
 今までに感じたことの無い違和感の前に怯えて声も出せないおれを、父様は喜びと勘違いしたのだろう…気がつけばおれは王太子の婚約者になっていた
 灰色の世界が更に淀んた色に見え始めた瞬間だ



この国では男も女も孕むことも孕ませることも出来る、しかし王家はここ数百年女性を娶っている…なのに、何故、男のおれが婚約者なのか…

 それは故に公爵家の人間で、尚且つ闇の魔力を保有するから…だと父様は言った
はるか昔この国の繁栄、発展させた人ではない王と王妃、そして闇の聖獣がいた伝説に習い求められた婚約
光と同様に希少価値の高い、特に闇の聖獣にあやかり闇の魔力を持つものは王家に嫁ぐ…そんな風潮になっていた


おれに縁談が来るのは当然のことだったのか…今となってはそう思うが、5歳の頃のおれは3日ほど理由もわからず泣き腫らした…
全身を蝕む既視感と警告に心が砕けそうになっていたんだ



改めて目の前の婚約者を見る…

カレリナ国、次期王
王太子…ロベール.カレリナ.ヴァージルド、整った顔と身体、金髪碧眼の王子様といった出で立ち目の前の彼が、おれのなってはならないはずの婚約者、見た目だけは最高に王子だ


彼との婚約は全く幸せではなかった…
幼いながらに交流や親睦を深めようとしたが、おれからはちゃんと婚約者としての義務を嫌でも全うしていたのに…彼は、古い風潮を嫌っていたのかおれを罵倒し、拒絶し、誕生日のプレゼントやエスコートすら断る
おれを視界に入れることを拒むのに…どう見ても好かれていない事が分かる、父様に幼いおれは泣きつき国王陛下へ一度婚約解消の話を申し入れるも、何故か婚約はそのままだった



婚約者のまま早10年
おれは、目の前の一度見たことがある光景を日々見せつけられ、心が荒みきっている

異世界から舞い降りた光の魔力を保有するソラトとかいう男の肩を抱き、毎日のように、おれにソラトを苛めるな、なんて可愛げがないんだと言う婚約者…
異世界から来たこの男も見たことがある、王太子と共におれを見ているだけで背筋がゾクゾクと知らない記憶が嫌悪感を吐き出す


もちろんおれは苛めるどころか、接触すらしていない、嫌悪感を抱く相手に好き好んで向かう阿呆ではない…なのにおれがソラトを苛めているらしい


「リナルド様、ぼく…ぼくがロベール様に優しくされるのが悪いんです!でも…知らない国に来たぼくを気遣ってくれてるだけなのに…どうして酷いことをするんですか…?そんなのって………酷いっ」

「ああ、泣くなソラト…!!私が付いている、リナルドにしっかり言って聞かせたから、もう大丈夫だ」



おれは何も発言していない…そう、おれはただいるだけなんだ…2人の見たことがある先の決まった光景をただ見ているだけ
面前に放置して話を進め、2人は抱きしめ合う…愛を囁きあうその姿…知っている…見たことがある…これも…
おれには一度も見せたことのない甘い表情、優しい声…何を見せつけられていんるだろう…

おれは可愛げもなく、エスコートすら嫌がられる嫌いな存在、そこまで言うなら婚約解消して欲しい…おれだってお前のこと好きじゃないよ



何も答える事さえ許されず、立ち尽くすおれを放置し、2人は自分達の世界へ旅立つ…一応婚約者のおれを前に最近はキスまで見せつけてくるのだ
浮気じゃないのか…?これは…もう2人で付き合えばいいのに…おれのため息はこの2人には届かない



記録石にこっそりと今回も映像と音声を記録する…既視感のある身体の警告を理解してからのおれの防衛策
なってはならない王太子の婚約者、それはきっと良くない事が起きるのだろう…今のうちに自分を守る証拠を集めておいて何が悪い?



気がつけば王太子と異世界の男はキスをしながらどこかへ立ち去っていた…ロベール殿下、その異世界人と婚姻すればいいんじゃないですか…?
脳内では不敬と取られる内容を想像してしまう
それだけ、これまでの彼の行動は耐え難い苦痛なのだから…



「もう少し、記録石が集まったら父様に報告しよう…解消してくれるといいけど…」



胸ポケットに記録石を仕舞う、これで15個目
まだ、足りない…そんな気持ちになる…
代わり映えのしないまるで誰かが見た後の世界で、おれは必死に生きているのに…
色のある世界が見たい…自由が欲しい…



知らずにため息が零れる
ああ、午後からの講義は今日ない…あの2人の相手をするのは本当に心が疲れる…

少し休みたい…
そう思いその場を立ち去るおれを1人の男が見ていたなんて知らなかった










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