悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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モブは色付く





別棟の温室、ここは本館に比べ、距離もあり綺麗な花ではなく薬草をメインで育てる温室だ
好き好んでここへ来るのは研究気質な奴か…そんな場所なここはあまり人が来ない、1人になりたい時、考え事をしたい時などによく活用している


リラクゼーション効果のある薬草の花が咲くエリアに設置されたベンチで休む…それがおれの唯一の癒しだ
温室に入ると今日も誰もいない…いつもの定位置に向かいベンチに寝そべる、思ったよりも王太子殿下とソラトの接触に心が荒みきっている…
この学園で2人が出会ったのは2年前、高等部1年の頃だ…学園の門前で転んでしまったソラトを助けたことがきっかけだと、聞いてもいないのに王太子殿下は言っていた


それから現在まで、あの2人の行動は段々とエスカレートし、おれはやってもいない苛めの主犯とされ、一応王太子殿下の婚約者でありながら、王家に不評を受けている腫れ物扱い…仲の良かった友人も離れ、他の生徒から遠巻きにされている


このままでは冤罪で裁かれる可能性もある、そう思い先生や学園長へ記録魔法の映像を見せ、苛めの事実は無いこと、無実伝えた…
その結果、一応無実とわかって貰えているが…事態は変わらなかった…
一時の気の迷い、王太子殿下は学園最後に自由な恋愛を楽しんでいる、卒業すればおれとしっかり婚姻する気なのだとなぜか周囲は誰も疑わず、決めつけ、おれが冷遇され、嫌われている等とは思わない異常な態度を見せてくる
まるでこの流れが正常なんだとでも言うように





学園の何処にも味方のいない世界

何度も家に帰りたいと思った、逃げたいと…だがそれではおれに貼られたレッテルがそのままだ…
三男のおれが…王家との婚約解消をし王太子妃にならない場合、せめて学園の卒業という素材が無ければまともな就職もできない
嫁に貰われるにしてもおれを嫌っている王太子殿下が邪魔をしてくる可能性はある

両親、兄弟共におれを心配はしてくれている…でも迷惑はかけたくない…
今も常に既視感の世界だ、何処までが決められた流れなのか…この先に何が待っているのか…せめてそれがわかるまで耐えなければ大切な家族にも影響がでるかもしれない


灰色の世界に本当にただ一人取り残された気持ちだ…悲しい、寂しいって気持ちはどんな感じだっただろう…きっと涙が出る…そんな気持ちだったはず






儚げな薬草の花の匂いを微かに感じつつ目を閉じる
せめてこの時くらいは嫌なことを忘れて眠りたい…







誰かの気配が…

「わぁっ!!やっぱり悪役令息リナルド.アークランド様だ…!!見間違いじゃなかったー!
え、推し様寝てる………??寝てるよね?
うっ………めちゃめちゃいい匂いがする…近づいてないのに推し様やばい…睫毛長すぎ唇をぷるぷる過ぎ…!!
はぁ…やばい…ずっと見ていたい…推し様の顔ほんとパーフェクト性癖…じゃん…モブに転生できてよかった…!!!ナイストラック!ナイス転生特典!
でも、この推し様一人称おれなんだよな…?うーんバグか?おれって言うのもかっこいいから好き…………………はっ!!息をするのを忘れてみてた!推し様待ち受け画面にしたい!なのにスマホはない世界!ちくしょう!
それにしてもこんな美人で綺麗な僕の推し様の未来が悲しみの連続なの許せねー!!運営馬鹿じゃねーの???
………寝顔まじで最高に最高…………あっ、…異世界転生あるある僕が推し様を助けたら…もしかして未来は変わるのかな…………」






知らない声がする
誰だ…?悪役令息?推し?悲しい未来…?お前は何を知っている…?
おれの灰色の未来が変わるってどういうことだ……………?



まだ眠りが浅く微睡んでいたおれの耳に響く声を、おれの知らない…知らない?
おれの知らない声が聞こえる…そんな、まさか?
聞いたことのない声を逃がしたくなくて無意識に手を伸ばしていた


「ひっ!!!!!」


寝ていたはずの相手に急に手首を掴まれ怯える知らない誰かは驚いているのか?
おれより少し小さい手、カサついているそれを確かめるように手のひらに指を這わせなぞる
微睡む目を開き、声の主を見る…………








灰色のはずの世界で、色のある、飾り気のない顔がそこにはいた









おれはこの場面を知らない、この男を知らない、灰色の世界に取り残されてから初めて、見たことがない出来事…
この男には色がある、灰色ではない現実の色…何故だろう…心が歓喜しているのがわかる
胸がざわつく…これは……………そうだこれは嬉しいという気持ちだ…


「ねぇ、お前…………誰?」
指同士を絡め合い男の退路を封じる、自分の方へ手を引けば眼前に色のある男の瞳まで確認できた
青色が交じる黒っぽい瞳…光に透けると青く見える不思議な黒い髪に…顔立ちは何処にでも居そうな男なのに目が離せない


「ぼ、僕は…………あ、あの!!すいませんっ………勝手にリナルド様の寝顔なんてみてしまって…!ひぃぃぃ近いっ……!推しが近いやばい…!!心臓潰れちゃうので離してくださいっ…!!」


手を振り解こうとするのに全く身動き出来ていない男は少し涙目になり、おれが見つめるほど真っ赤に顔を染めていく
怒りや憤慨じゃない恥ずかしさからの赤面だ、嫌われ者のおれを見てそんな反応をするのはお前くらいじゃないのか?…………嬉しい
何故なんだろう、知らない男の溢れている涙がかわいいと感じる…震え言葉を紡ぐ唇がかわいいと……


無意識だった
灰色に見える世界で初めて知らない存在に出会えた事が嬉しかったおれは、本能だけで動く
気がつけば、男の頭をもう片方の手で抱き寄せ震える唇を舐め、啄むようにキスをしていた


「んんんっ!?!?!リナルド様!?!何を、何をー?!」


驚く男を絶対に逃がしたくない、おれに抱き寄せられ息がかかるほどの距離にいても嫌悪の気配一つ感じない、恥ずかしがる男…この、色のついた存在が欲しい…欲しい…
唇を啄み、舌でノックする、本当に嫌ではないのか強い抵抗をしてこない事が嬉しい


「っ………は、なぁ……………お前は、おれのこと嫌いじゃないの?おれは…今、無性にお前が欲しい…お前の存在を感じたい……………舌入れていいか…?口、開いて?」


王太子殿下の婚約者が何をしているんだなんて頭の片隅で僅かに思ったが、彼奴等の方が既に何度も何度もしている事だ
幸い個々にはおれと彼しかいない、おれはこの男がどうしようもなく欲しい…………欲しいんだ、お前は受け入れてくれるか?おれを…


「なぁっ!?!え?えぇっ!?リナルド様を嫌いなわけ無いじゃないですか!!!でも…僕モブなのに…こんな…こんな……………うぅ」

「………………嫌か?」

「うぅ………じゃないです……嫌じゃないです!!!」


自問自答していた男はおれを嫌いじゃないらしい
モブがよくわからないけど、おれは今すごく嬉しいんだ
怯えを残しつつ真っ赤に恥ずかしがる男は発言を止めて、唇を啄んでいたおれを受け入れようと口を開く…くちゅりと卑猥な音を立てながら歯茎を舐める

舌を侵入させただけなのに、ビクビクと震える姿がかわいい
歯茎を舌先で擦りら歯をなぞりながら男の口内へ舌を入れる、甘い…何故だろう無性に甘かった
口内へ侵入してきたおれの舌に怯え、縮こまる男の舌を優しくつつき、おいでと誘う
酷いことはされないとわかったのか素直に持ち上がる舌もかわいい…ゆっくりと愛撫するように舌同士を重ね、絡めおれの舌で扱いてやる



「んんっ……んゃ…っ…♡♡♡リナルド様っ………あむっ………んんんぁあ♡♡んむっ………んっ、んっ♡♡♡♡」

「んっ………力抜け、んっ、んんっ………♡」


くちゅくちゅ♡♡♡ちゅ、ぢゅるる♡♡♡
口内を貪るように舌を這わせ、舌全体を吸い上げる
「ん゙ぁ゙っ♡♡♡♡ぁ゙っ♡♡♡んむっ、んんんっ♡♡♡んっ…………♡」


おれとのキスで感じているのか、男はねだるように舌を突き出して甘えてくるようになっていた…弱々しく舌を絡め返してくる…かわいい
くちゅくちゅと互いの唾液が混ざり合い零れそうになると無意識なのか男はおれの唾液まで一緒に飲み干し、涙の滲んだ目を開く、青と黒の色のある不思議な瞳と目が合い、ゾワゾワとおれの心が満たされるのがわかる
ずるりと舌を抜くと、男はもどかしそうな息を吐く



「はぁ…………♡かわいい………なぁ、気持ちいい…?」


「んあっ……♡♡♡あぅ………ひゃい♡♡」



うっとりとおれを見つめる男の目には嫌悪も憎悪もない、そしておれの灰色に見える世界で唯一、髪色から瞳、全てに色が付いている不思議な存在…





……………………
……………
………


ベンチに座るおれに跨り抱きしめられるように身体を預ける男の髪を撫でる
男の腰が抜けるまで互いにキスを求め合ってしまった…悪いことをしたかもしれない
おれにもたれ掛かる男をじっと見つめる、平凡と言うべき顔なのか…特色のない顔なのに可愛く見える…不思議だ



………………ここまで来て気づいた事がある






「お前、そういえば誰なんだ…?」







名前も知らない男とキスしてたわ…おれ
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