悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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それぞれの休暇④

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side ラドラ




「お戻りでしたか!ラドラ様お元気そうで何よりです」

「はい、長期休暇となりましたので…大司教様へまずは挨拶をしてまいります
私が不在の間何か変わったことはありましたか?」


闇の聖獣様を祀る大聖堂は王宮に近い場所にある
私達が通う学院も王都に近くはあるが、郊外だ
移動に時間が掛かるため、学院から頻繁に来れる訳では無い、普段は学院に近い街にある教会で祈りを捧げるのが通常

長期休暇が始まった事もあり私は大聖堂のある王都中央区へ来ている…とりあえずは現大司教様にご挨拶をし、情報収集をするために…
それに、ヒロイン♂と呼ばれているソラトからなるべく早く遠ざかり生活したい気持ちもあった
ここまで何人か高位の神官である男と会話をしてきているが…女神ガレリナという言葉は聞かれない…

居ないはずなのに、存在してしまう女神ガレリナはいつから居たのだろうか…




美しい大理石の廊下を奥に進み、目的地である現大司教様の部屋を目指す
リナルド様とエア様は公爵領で過ごすと言っていた…ソラトとの接触の可能性がある催し物など教えてくれた事がありがたい…
そして闇の聖獣様の守り人と思われる、大蜘蛛から頂いたという闇の魔石…こんなにも貴重な物を私に貸して下さる優しさが嬉しい

聖教会へも報告したい所だが私が実際見たわけではないしこれが本当にそうなのか…私の中では本物でも他者から見れば違う可能性もある
報告するのであれば確実な証拠が必要だ


そんな事を考えている間に目的地に到着していた
ノックをすると自動的に開く扉…大司教様に仕える精霊の力だろう…


「失礼します…大司教様、只今戻りました」

「ああ、お帰りラドラ…お前が帰ってくるのを待っていたよ」


部屋の奥、窓際に佇む高齢の男性こそ、我が国の聖教会、現大司教様であるノヴロ.グリード様だ
穏やかな声と優しい顔つきの老人…幼い頃から精霊に好かれたという大司教様は遥か昔、精霊の守り人の出生に近しい家柄と噂されている

そう言えば大司教様は女神ガレリナについて一度も声を上げた事が無いような……


「ラドラ…少し心配していたのだよ…だが、少し見ない内にとても素晴らしい縁に恵まれたのだね…
今ならお前にも我が国で起きている一部の異変…それがわかるだろうか…」


大司教様は優しい顔で私にそう告げる…
素晴らしい縁…それはリナルド様達の事だろう…一部の異変…それはまさか…


「………………異変とは、女神ガレリナとその神子………についてでしょうか…?」


静かに頷く大司教様の目はとても優しく私を見据える…バタンと背後で音がするのは扉を精霊が閉めたからだろう
沈黙の中で大司教様は机の中からあるものを取り出してきた…キレイにラッピングされた菓子の入った袋、私はそれに見覚えがある…

そうだ…あれはソラトと出会い彼の優しさに触れていく中で聖教会を、大聖堂を案内した日に…皆へと差し入れとして持参した菓子

ゾクリと背を汗が伝う…

もうだいぶ前になるというのに大司教様なぜそれを持っているんだ…?なぜその菓子を見ると背筋が凍る気持ちになるんだ…?


「その反応を見てラドラ、お前が聡い子でよかったと思う…これはお前が前に連れてきた神子様と呼ばれる男子が神官に配っていたもの
言いしれぬ気配が今のお前にならわかるだろう…
この菓子を食べた者は皆、一様に女神ガレリナの神子様は闇の聖獣様と同等に崇めるべきと…言い始めた…王家にも声を上げるほどだ

つい最近までラドラ、お前もそちら側の人間だった事はわかっているかい?」


「………………っ、はい…………異変に気づくまで…女神ガレリナの寵愛を受ける神子様を大切にしたい気持ちに精神が塗りつぶされていました
居ないはずなのに確かにいる女神ガレリナがなんなのか解らず…それを調べるためにもと今回ここへ戻ってきたのです…」


大司教様は嬉しそうに微笑み、歩き出した…進む先は部屋の奥、そこは重要な文献が保管されている部屋だった筈…そこへ私に入室を促し手招きする

自動的に開閉する扉
手招きされるまま着いていくとこじんまりとした多くの書物が壁を埋めている書斎のような…しかし何故か下へ続く階段のある異様な部屋だった
私はまだ大司教では無いためこの部屋には入ったことが無い…何故室内に階段が…?


二人が入室すると扉が閉まり、やや薄暗い部屋に大司教様と二人、着いてくるように言われ違和感のある階段を大司教様と一緒に降りていく


「ラドラよ、女神ガレリナはこの国にはいない…しかし居るとも言える…それはお前も感じた異変だ

この国を含めこの世界は闇の聖獣様の誕生から死を迎えて尚、強い守りの力に守護されてきたが…その女神ガレリナという存在、我が国で報告されていた神子と違う神子の存在で何故がその守りが薄れていく…そんな気配を感じる

あの菓子を食した者は闇の聖獣様よりも女神ガレリナを崇拝する、しかしその原因が分からない…
あの菓子を調べても呪いなどは見当たらなかった

私は大司教だが、高齢の老いぼれだ爺に過ぎない、その異変を詳しく調べようとすれば消される可能性もあったのだ…ラドラ、お前達にな…」


冷や汗が止まらない…
私が大司教様を消す?何故?………いや、前の私なら…リナルド様を害していた私ならやりかねない…
愛おしい崇拝する存在のために、私は大司教を消し自らを大司教とすると言っていた可能性が怖い

大司教様は教えてくれる…私の目には闇の魔力が宿っているのだと、女神ガレリナを崇拝していた頃には無かった、リナルド様達に会う前にはなかった事…

ソラトを中心とした影響なのかとも考えたが何処までが女神ガレリナを崇拝する者達なのか解らず、王家の王太子殿下までもがソラトの味方となっていては迂闊に手が出せないとも話してくれた
それはそうだ…高齢の大司教様にはできない事も多い…頼むにも女神ガレリナの崇拝者がわからない…




階段を暫く降りた先で大司教様は立ち止まる

今の私なら信じられると光を照らすそれは厳重に守護の魔法が掛けられた扉だった
お守りの闇の魔石が反応している気がする…何故か心臓がドクドクと強く脈打つのは何故…?

私はこの部屋に入らなければ一生後悔する
この先に私の求める物が、者が、いる…そんな直感に目頭が熱くなる…


ゆっくりと前に進む
手を伸ばす事すらもどかしい感情が溢れていく…
厳重な守りを施された扉に触れると、何故か扉は無かった


ずるりと引き込まれる感覚に目眩を覚える…扉は無い、すり抜けた…?
ここはあの扉の中…だ



「待っていたよ、我が弟に選ばれし存在…」



心臓に脳に響く、透き通った声が聞こえた
顔を上げその声のする方を見る












襟足に掛け赤く染まる黒髪に、光を吸い込むような黒い角…赤と黒のオッドアイの瞳を持つ、美しい人ならざる男性がそこにはいた





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