悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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真実への道

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 授業が全て終わり、放課後になった
 朝の食堂での出来事を考えると授業に集中などできる筈もなく…時々エアが現実にいるかを確かめながら時が過ぎるのを待つしかない…
 ラドラ様は何をおれたちに伝えたいのだろう…大切な話とは、今朝の事にも関係があるのか…?

 情報を共有したい、そんな気持ちもありおれとエアは急ぎ足で教会へ向かった


 何故か静まり返った学院近くの教会、普段であれば数名礼拝する者が居てもいい筈なのに誰もいない礼拝堂を抜け、ラドラ様の私室に向かう
 神官様も見かけなかった事が今朝の異様な雰囲気を増幅させるようで気味が悪い…



「お待ちしてました、リナルド様、エア様…どうぞ中へ…人払いは済んでいますので安心してください」


 ノックの音に直に返答があり、笑顔のラドラ様に室内へ招き入れられた
 人払いをしていた…教会のこの静まり返った状況はその為か…?室内には既に茶菓子と湯気の立つ紅茶が4人分準備され、まるでおれたちがくる瞬間がわかっていたようなそんな雰囲気感じた
 ………………4人分…?




「お前たちが弟の選びし闇に選ばれた子か…成る程、銀髪のお前は俺の母によく似た魔力を持っているんだな…だからこそ、か……」


 何処からか知らない声がする、エアにも聞こえているようで辺りを見回し不安そうな顔をしている、おれも、声の主を探すがどこにも居ない…
 エアを後ろに庇うように気配を探るが見つけられない…弟の選んだ闇?母?なんの話をしているんだ?


「レヴィル様…姿も現さずに私の友人を怖がらせないで下さい…」


 ラドラ様の声に反応するように、異様な魔力を感じた…どろりとラドラ様の足元が黒くどよめき、身体を這うように黒い影が彼を隠す…丁度後から抱きしめるようなそんな影がラドラ様を包み込み、その影は角の生えたオッドアイの異様に顔の整った男に変化した…


 不思議と恐怖も混乱も無い、それは大蜘蛛と出会った時の感覚…人ならざる闇に遭遇した感覚に似ている…


「俺の姿を見て怯えもしないとは…余程度胸があるのだな?人の子よ…とりあえずは座りなさい、大切な話がある」



 そう促され、誰だ貴様はなど言えず…促されるように席につく
 状況は飲み込めないが、目の前で愛おしそうにラドラ様を膝に抱き紅茶を啜る、人ではない男は敵ではないのだろう…だが、それをエアと眺めるしかない状況…どうしろと言うんだ…
 大切な話を早く教えてほしい、そう思ってしまった



「不服そうな顔をするな人の子よ、大切な話は本当にある、ただ数千年待ち望んだ番を前に本能がそちらを優先してしまうんだ…許せ
 さて、何から話そうか…何が聞きたい?」


「……………色々聞きたいことはあります、ですが始めに、貴方は何なのでしょうか?人ではないと思うのですが…」


「くくっ…見れば見るほど本当に我が母の魔力に似ているな…聞きたいこと全て教えてやろう、俺はレヴィル、聖獣の守り人の子…そう言えばわかるか?」


 ニヤリと笑った人ではない男の口には牙があった…おれもエアも動揺を隠せない顔をしていたと思う…この人ではない男が守り人の子?本当に…?

 そんなおれたちを楽しそうに見つめ、男は話を始めた


 この世界はカレリナ国で間違い無いこと
 ラドラ様から感じた違和感は守り人の子だというレヴィル様が影に住み付いたから、学園でヒロイン♂達があんな行動を取ったのはエアの掛けたモブになる魔法を更に強化し、存在をほぼ完全に消したせいだと言う
 ヒロイン♂にラドラ様を見せたくないと、愛おしそうに彼を撫でる…その目はおれのエアに対するものと似ている気がした
レヴィル様は更に教えてくれる、おれの魔力が聖獣の母に近いのだと、だからこそレヴィル様の弟…あの大蜘蛛は、おれに魔力の残りと種子を預けた…あの日大蜘蛛に触れ見たイメージは守り人の元に行く子の姿だった事もわかった


 そして重要な事実
 ヒロイン♂は異世界からこの世界に来た神子だが、良からぬ神のようなモノを宿しこの世界に来ている…その影響が学園を中心にこの国に影響を及ぼしている可能性が高いのだと
 今日、実際にその存在を見てレヴィル様も理解したのだと言う…神のようなモノ…それが女神ガレリナ…なのか…?


「あの…その神のようなものは何をしようとしてるんでしょうか…?
 この世界は僕の知ってるゲームにすごく近いんです…カレリナ国ではなくガレリナ国を舞台とするゲーム…そのシナリオに沿った事がこれまでも多くありました」


「確かにそうだ、レヴィル様…これまでずっとおれは悪役令息、ラドラ様は攻略対象としての役割を義務付けられている状況だ…それも何か関係があるのですか…?」


「………………悪いが、それについてはまだ分からない、俺も守り人の子として人ではない精霊の血筋ではあるが神ではない
実際に見て確信はした…何かをしようとしている…この世界を書き換えるような…そんな気配はあるが全てを知っているわけでは無いんだ」


おれとエアの問にレヴィル様俯きそう答える
カレリナ国を含めこの世界全てはレヴィル様の両親、そして闇の聖獣様が愛し守り抜いた世界…
その平和を崩そうとしているのがヒロイン♂とそれに宿っている神のような何かって事は確かなのか


「リナルド様、実は大司教様や国王陛下にもこの話をしたのです…しかし、何かに阻まれるように対応を考えようとすると思考を奪われると言っていました…
理由は聞かされず、卒業パーティーまで王太子殿下の調査をと依頼をされませんでしたか?
それが思考を奪われてしまった証拠です…国も手出しが出来ない存在、神のようなモノの影響なのだと思います」



ラドラ様はエアに聞いていたガレリナの箱庭がエンディングを迎えるタイミングを教会からの通告として伝えていた、しかし上手くはいかない…?だからおれに理由が曖昧な指示を陛下も父様もしていたのか?
ゲームの終わり、それを邪魔させないような力が働いている…そんな気がしてならない…

最後の断罪劇のある、卒業パーティー…その日までおれは悪役令息をしろって事か?なぁ、ヒロイン♂?



その日は門限近くまで4人で話し合った
この世界の異変に自ら気付いているのはここにいる4人だけ、他のものは知ったとしても…何かが阻害してしまう、ならおれたちがなんとかするしかない









段々と真実に近づいている…着実に








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