5 / 139
冷遇妻編
ヌメリと水風呂
しおりを挟む「お客様、入浴の準備が整いましたので、どうぞご自由に」
夕飯まだかなと、部屋から出てもいいのかわからず暇すぎて備え付けの本棚にあった書物を読み漁っていたおれにメイドの方から声をかけてきた
入浴?早くない?え、獣人の国って夕方に入るもんなの?てか、どうぞご自由にっておれ一人で入れって事なのか…!?
質問したい事はあったがうさ耳メイドの動きは早い、流石ウサギといった素早さでおれの部屋から退室していった
なぁ…うさ耳メイドよ…せめて浴室の場所くらい教えてくれない?そんなおれの心の叫びは届かないのだ…
………………
…………
……
「別館…だったのか…ここ」
誰も教えてくれないので意を決して廊下の外へ出てみると人気もなく、とても薄暗かった
おれの部屋からは見えなかったが廊下の向いには大きな屋敷が見える…つまりここは別館と言うことになる
外が曇りなのではなく、おれの部屋から見えるのが森だったから普通に薄暗いだけだった事にも気付いた
見る感じ埃っぽくはないから掃除はしていると信じたい…しかし明かりもついていない別館の廊下…正直、キレイな建物ではあるが余りにも人気が無いと肝試ししている気持ちになる
いやいや、怖いって!夜とかここに一人きりだったの!?怖いって!!
しかし誰の気配も無いんだから誰にも聞くに聞けない…うさ耳メイド含め、皆本館と思われるあのでかい屋敷に居るのだろう…
心霊的冷遇は聞いてないって…!!!
あまりにも一人、本当に一人、薄暗い廊下を移動するのが怖すぎてとりあえず光魔法で廊下を明るくし、急いで入浴を済まねて自室に引きこもる事にした
昨日、丹念に塗られた香油の匂いが残ってるからお風呂には正直入りたいんだよ!
………………
………
…
しばらく廊下を進むと一箇所だけ明かりが漏れている部屋を発見し、お目当ての浴室だとわかった時のおれの心境は、お化け屋敷で出口を見つけた瞬間のそれだった
うさ耳メイドよ、浴室の明かりだけでもつけてってくれたのは感謝する…いや廊下も全部つけておいて欲しかったけど…
それは贅沢な望みなのかもしれないな…冷遇生活1日目、風呂の場所が分かっただけでも良いとしよう
さっさと風呂に入って部屋に籠もる!心霊的な冷遇は受け付けておりません!
普通だったらドレスの令嬢も貴族の男も一人で風呂に入るなんて貴族育ちでは出来ない、それこそ酷い扱いを受けてると痛感する場面だろう
しかし、しかしおれは磯野司の記憶を持つ転生人、一人で風呂に入る事こそが普通だったあの日の生活を思い出せばなんて事ない
そう、例え入った浴室に準備されていた湯が水でも、どうやったらここまで汚くなるのかってくらいヘドロのようなヌメリがあったとしても…
叫び声一つ上げることなど無いのだ
「汚ねぇ!!!!」
無理、無理です、ここに誰もいないって分かったら声出ちゃった!無理、無理無理無理!
ゴミ屋敷の風呂じゃん???なにこの触ってないのにわかるヌメリー!!
湯気なしだから水風呂なのはわかる、それはいいよ、別に水風呂でもいいよ!?!しかし汚いのは許せない
おま、風呂だぞ?風呂、身体をキレイに磨き上げる場所を汚してどうする?水垢黄ばみどころの話じゃない夏前の掃除してないプール並に汚い!
うぇぇ…無理、これは流石にちょっと心に刺さる…冷遇ってレベルじゃない…いじめだってこれ
いや、獣人の国がどういう感じなのか知らないけどね?これはない…おれじゃなかったら気絶してると思うくらい汚い…
ちくしょう…おのれ、掃除すれば良いんだろ?
たぶん掃除して使うなんて考えてないからこんなに汚いんだろうけどさ…早く出ていけこの国からって気持ちが伝わってくるよ…うさ耳メイド…
排水口を開けるとドロドロブチュゥ゙と嫌な音を響かせながらどんどん水が抜けていく…
この国の排水設備は大丈夫だろうか…何処かで溢れたりはして無いだろうかと心配になる程のヘドロとヌメリ具合だ
最後まで流し終えたのを確認し、蛇口に細工でもされてたらしんどいので自分で魔法を使って水を出す
川まで行けたらそこで水浴び出来るんだけどな…って思いつつ浴槽を魔法を駆使してキレイに磨く
魔法って便利だよな…買い忘れて掃除が出来ないとか無いんだもん…自分に備わってる属性で使えるものが違うため、一概に超便利とは言えないが、おれはとりあえずそこそこ全部使える
戦闘には物足りないけど私生活ならこれで十分な程度に…ほんと使えてよかったと感じながら、美しく輝く湯船に磨き上げ、新しく湯を貯めた
結果として2時間ほどたっぷりと湯船を堪能してしまった
いや、だってさ…自分で磨いた風呂に入ったら達成感がすごくて…なんて言う相手もいないのをいい事に、おれも全身デトックスとか言いながら半身浴したり、リンパマッサージしてたら夜でした
素晴らしくゴワッゴワのバスタオルもバスローブもしっかりとふわふわに進化させ、身に纏う
部屋に戻る時に見つけた誰もいないキッチンからティーセットを借り、湯上がり自分で紅茶を淹れてソファで一息…うん、最高
備え付けの石鹸とかまで取り払われてなくてよかった…なんかもうお肌モチモチしてる気がする
男だけど?ほら書類上妻だし?抱かれてないけど妻だしお肌気にかけてみてもいいと思う
湯上がりで一息とか普通に寝るよね…全人類
知らない間におれはソファでうたた寝してしまったのだ
3,874
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました
荷居人(にいと)
BL
第12回BL大賞奨励賞作品3/2完結。
人間嫌いと言われた公爵様に嫁いで3年。最初こそどうなるかと思ったものの自分としては公爵の妻として努力してきたつもりだ。
男同士でも結婚できる時代とはいえ、その同性愛結婚の先駆けの1人にされた僕。なんてことを言いつつも、嫌々嫁いだわけじゃなくて僕は運良く好きになった人に嫁いだので政略結婚万歳と今でも思っている。
だけど相手は人嫌いの公爵様。初夜なんて必要なことを一方的に話されただけで、翌日にどころかその日にお仕事に行ってしまうような人だ。だから使用人にも舐められるし、割と肩身は狭かった。
いくら惚れた相手と結婚できてもこれが毎日では参ってしまう。だから自分から少しでも過ごしやすい日々を送るためにそんな夫に提案したのだ。
三年間白い結婚を続けたら必ず離婚するから、三年間仕事でどうしても時間が取れない日を除いて毎日公爵様と関わる時間がほしいと。
どんなに人嫌いでも約束は守ってくれる人だと知っていたからできた提案だ。この契約のおかげで毎日辛くても頑張れた。
しかし、そんな毎日も今日で終わり。これからは好きな人から離れた生活になるのは残念なものの、同時に使用人たちからの冷遇や公爵様が好きな令嬢たちの妬みからの辛い日々から解放されるので悪い事ばかりではない。
最近は関わる時間が増えて少しは心の距離が近づけたかなとは思ったりもしたけど、元々噂されるほどの人嫌いな公爵様だから、契約のせいで無駄な時間をとらされる邪魔な僕がいなくなって内心喜んでいるかもしれない。それでもたまにはあんな奴がいたなと思い出してくれたら嬉しいなあ、なんて思っていたのに……。
「何故離婚の手続きをした?何か不満でもあるのなら直す。だから離れていかないでくれ」
「え?」
なんだか公爵様の様子がおかしい?
「誰よりも愛している。願うなら私だけの檻に閉じ込めたい」
「ふぇっ!?」
あまりの態度の変わりように僕はもうどうすればいいかわかりません!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる