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乙女ゲーム編
奇跡を起こす存在
しおりを挟む『………ザザ………ザ…みんなとのイベントって発生条件に悪役令嬢を絡めないといけないの超めんどい、なんでクラス違うの?意味わかんない、てかほんとルディヴィスって誰?もしかして新たな悪役ポジションだったりするのかな?…………はぁこういうバグ嫌い、早く消えてよルディヴィスって奴』
『………ザザザッ…………早く皆を攻略してヒロインのあたしが幸せになるハッピーエンドにしなくちゃ、その為には悪役令嬢にもっと虐められてもっと皆に守ってもらわないと…!あー早くあたしを階段から突き落としてくれないかなー』
かなり大きめの音声が防音魔法を掛けた室内に響く、レオンハルト殿下に借りてきた、今日の話し合いでまだ聞けていない録音の記録…
全て聖女様である少女の声らしい、そういえば…おれはまだ聖女の声すら実物を聞いたことが無かったな…?
それにしても声がデカい…これを独り言で自室にいる時に言っているのか…独り言ってレベルじゃないと思うが…隣の部屋に聞こえたりしないのか?
あまりにも音が大きく、本当はこっそりシャルティと聞くはずだったのに…早々にバレて、現在…真剣な顔をした父様や不安そうな母様、聖女が怖いらしいヘルリとマイケルが互いに寄り添うようにしながら一緒に聞いている状況だ
独り言の内容全て、一言で言うなら今日皆で聞いた物と大体は変わらず、全て自分が中心に回っている世界で早くもっと幸せになりたい
その為には、悪役令嬢シャルティがもっと仕事をしてくれないと困る…そんな内容が殆どだった
時々、ルディヴィスというモブが邪魔していてウザい、バグなら早く消えて欲しいと…そんな内容を含んでいた
音声の聖女声はひたすらには楽しそうで気味の悪い笑い声を上げている…ある意味明確な悪意を持って
あまりにも録音されていた物が多く、早送り全ての音声を確認するのに1時間ほどを要した…最後の音声を聞き終わると父様達は難しい顔をしている
「困った事になったね…いや、面倒な事になった」
…と、軽くため息をつき、父様は話し始めた
「ルディヴィス、シャルティ…この聖女様と思われる音声はレオンハルト殿下達が集めたもの…そうだね…?
それが事実だとしてもコレを使用して、我が家に対する悪意あると聖女様を捕らえる等、行動に移せる証拠には至らない…それはわかるね?」
「………わかります、ぼく達からすればこれは確実な証拠です、しかし他者からみれば法ギリギリの盗聴とも言える行為に音声の捏造をしたと言われてもおかしくない…
これを証拠に何かをすることはできないです…」
おれの返答に父様は頷き、よく学んでいると頭を撫でてくれる
今日、みんなと話し合って聖女の事実を確認し合ったがそれを元に何をするかまでは、まだ模索中だった…この国の聖女は奇跡により生まれる…唯一神に声が届く存在と言われる大切に守られるべき清き乙女…
例え市街の出身でも、異世界転生していたとしてもその根本は変わらない…音声のみのデータは危うい…
音声を捏造し聖女を陥れようとしたなんて言われる可能性もある、レオンハルト殿下発信の情報だったとしても大きな反感と第2王子、第3王子派に動きを与える事になりかねないから
「ルディヴィス、シャルティ…この聖女の音声が本当であれば映像として記録しなさい
我が家に敵意ありと確実な証拠となるように…レオンハルト殿下には影もついているだろう?彼らは護衛と見ることが仕事だが、彼らの見るを証拠にするにも映像や書面として何かしら形に残さなければいけない
私からも陛下に話は通しておこう…だが…」
父様が言葉を詰まらせる様子に母様が反応する
「二人とも、よく聞いて…
今日、聖女様が聖光の魔力を使用し病に苦しむ側妃…アデリーナ様をお救いになったの…第2王子の母であり、この国のもう一つの公爵家とその派閥が後ろ盾となっているアデリーナ様を…それだけじゃない、これまでに何度か貴族の病を癒している…」
「この音声だけを考えるにとんでもない性格の持ち主である事は確かだ…だがこの国女神様に選ばれ、嘘偽りない聖光の魔力で苦しむ人々を救う姿もまた事実…
今後、教会経由で癒しの奇跡を市民へ届ける可能性もある…既に高位貴族の一部で今代の聖女様は素晴らしいと声が上がっているんだ」
「学園ではあまり聖女様の活躍を聞く場面はありませんでした…そのような事になっていたなんて…
そんな奇跡の聖女様を急に陥れようとするかのような音声を公開しても私達が悪者になってしまいますわね…」
成人するまでは聖女としての活躍は伏せられがちなのだと父様は言う、魔力の扱いを学ぶのが大切だから…聖女様がどの程度、聖女として働きたいかを決める期間でもあるから…と
今回、聖女は人前であの音声の内容を言った訳じゃない…全て独り言だ
「しかし、彼女は既にヘルリに対して非道な行いをした事もまた事実…
音声から見える性格を考えても猫をかぶっているんだろう、ならば化けの皮が剥がれる瞬間を公然の場所で映像に収め証拠としようか
私は可愛い子供達が、我が家に仕えてくれる者たちが危害を加えられそうになっているなら、例え相手が聖女だったとしても許せない」
「父様…………」
明日、レオンハルト殿下やこの件を知ってる者を屋敷に呼びなさい…そう言った父様の顔は異世界転生漫画とかでみた腹黒い宰相様みたいなかっこよさがあった
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