【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

救う為声に出す

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桃香に聖女ルチアは存在そのものを食われている、表現の仕方がそれしか浮かばない為、そう仮定した上で改めて水晶を見ると、僅かに中央の微かな光が外側に向けて引っ張られるようにクモの巣状に広がっているのが確認できた

一つの体に異なる魔力と魂が入り込んで片方を食うとか本当に可能な事なんだろうか…?
おれと同じ前世で普通の一般市民だった桃香がそんな事が出来る理由はなんだ?考えれば考えるほど根拠は無い、おれの想像でしかない…

でもよく考えたら、おれだって悪役令嬢の兄として乙女ゲームっぽい世界に生まれ変わってるって事自体が既に常識とか、根拠のある説明が出来る問題を超えてるんだ
今更、何が真実だとかは後回しでいい




一つだけ分かることは、あまり時間がないって事だけ



ジェイス第二王子の愛した聖女ルチアはこのままだと本当に消えてしまうだろう…一刻も早くルチアから桃香を引き離さないと不味い

想定している方法が上手くいくか脳内で思い返してみる
ラッジ先生から提案された救い方…それは合同魔法演習で課題になったていたという分離魔法を使用する方法
騎士科の生徒が学ぶ野営の基本、安全な食料、水とか入手の為に学ぶ魔法…合同魔法演習では木箱の中身をどうやったら取り出せるかを考え、分離させるって方法を導き出すというのが課題の内容だったらしい

基本は物に使用する魔法だが、おれが聖光魔法に近しい力を使えるなら上手く応用できないか?って…教えてくれた
女神様の祝福と言われる力は特別な奇跡を起こせると…



おれはその可能性に掛けたい
これはおれにしか出来ない事だから


桃香はこの世界で何になりたいと願っている?答えはヒロインだ
けど、今現状でヒロインは攻略対象から嫌われている桃香ではない、前に思ったけどポジション的には、たぶんおれが一番近い位置にいると思う

……………桃香はおれを消して自分がヒロインとして愛される事を望んでいる…………違う、おれの全てを奪ってヒロインになりたいと、おれがいるこのポジションが自分のものだと信じ込んでいる…
そこに、おれが聖光魔法みたいな魔力を使える存在だと桃香が知ったらどうする?


『なんでお兄ちゃんが聖女みたいなポジションでヒロインなのよ!!!おかしい!その場所はあたしのものなんだから!返してよお兄ちゃん!!!』


って、奪いに来るはずだ

今までの情報から聖女ルチアを乗っ取っているが、桃香自身に肉体は無いと考えていい…
だとしたら、少しでも聖女ルチアから桃香を分離させ、おれの中に桃香を取り込めれば…完全に聖女の身体から桃香を引き剥がす事ができる

それに…




…………頭の中で考えてるだけじゃ駄目だ、一人で悩んだって意味がない…声に出さなければいけないことが多いって皆から学んだだろう?



「…………大司教様…お願いがあります…おれの魔力をもう一度見て貰えませんか?
そして、皆さんにも大切な話があります…聖女ルチアを救えるかもしれない方法、聞いて貰えますか…?」



大丈夫…皆は信じてくれる、リジャール王妃も大司教様もきっと信じてくれる…変わった子ねくらいで留めてくれる…学園長はちょっと分からないが何とかなる

おれは皆が幸せになる未来が来て欲しいんだ…桃香のせいでジェイス第二王子や聖女ルチアが不幸になるのも止めないといけない
だから、おれという存在について話そう、理解を得よう







……………………
………………
…………





おれが大司教様達に声を掛けると、レオはおれがしたい事の想像が出来ているみたいだった
急に手を握られ、「大丈夫だ」って耳元で応援してくれた

大司教様はその光景と、おれの真剣な顔に何かを感じて下さったのか…懐からもう一つ魔力判定用の水晶を取り出し、儀を行って下さった

痛みや不快感など全くなく儀式は直に終わる
結果は10歳の頃と同じ、しかし前よりも色濃く現れた土と水、そして闇の魔力が水晶を彩っている


「ルディヴィス、これでよいですか?
しっかりと自身の魔力を理解し鍛錬している…素晴らしい結果が出ています…しかし、特にこれと言っておかしな部分も何も変わった所はありませんが…」


そう、確かになんの見た目は変哲もない普通の魔力…けど、マイズやイグニスが調べてくれたからそうじゃないって事が分かってる


「大司教様、この見た目はなんの変哲おれの魔力…理由はわかりませんが聖光魔法と同等の近しい力があるそうなんです…
この事は本当に親しい人物にしか話していませんでした、力を誇示しようとか、力を使い人を助けた事もありません…聖女ルチアがおられる中で混乱や火種となる可能性も考え心に留めていました
確実におれに聖光魔法のような力がある…皆さん、それを踏まえておれの秘密を聞いて貰えませんか?そして決して誰にも口外しないと約束して欲しいんです
………………おれなら聖女ルチアを救える可能性があります…何を言ってるだと思われるかもしれませんが、おれだからこそ救える可能性が高いんです…」


「…………………わかりました
この国の王妃として約束しましょう、この場で話す内容全ては秘匿とし口頭文書問わず外へ漏れ出る事を許しません…それを守れない者はこの場で私が記憶を消し、退室させます
ルディヴィス、秘密でも何でも話してください…私は貴方が何を話そうが味方です…安心してお話しなさい」



おれの言葉にリジャール王妃は優しく味方だと言ってくれた…しかもこの場での話を秘匿だと王妃が言ってくれるなんて…どれだけ心強いか…
正直、あの取り乱し方の学園長がいるこの場で話すのは不安だった…なんとなく出てって下さいとも言えないし


「お祖父様…ルディヴィスに聖光魔法のような力があると考え、それを研究し伝えたのは私とイグニスなんです…彼には本当に力があります…
しかし、研究をしたのは聖教会としての考えを否定するためではありません…何かしら女神様からの意思を感じたからです
お願いします…どうかルディヴィスを信じて下さい」

「…………心配しなくていい、マイズ
もちろん信じるとも…ルディヴィスに不思議な力があると幼い頃から私に報告をしていた事を忘れたのかい?大丈夫だ、ルディヴィスが信頼に値する存在だとちゃんと分かっているよ…本当に何か考えがあるんだろう、聖女ルチアを救う手立てがあるなら教えて欲しい
現大司教ロドイも、王妃殿下に誓い秘匿を守り、ルディヴィス達の味方をすると宣言しましょう」


大司教様はマイズの頭を撫でながら、おれを見て微笑んでくれた
どうしよう…正直嬉しい…



学園長がどんな顔をしていたか知らないが、おれは目頭が熱くなるのを感じつつ、おれの秘密…生前の記憶がある事…聖女ルチアに潜む前世の妹の事
前世の妹が相手だからこそおれにしか対応出来ないって事、おれの体に桃香引き入れ聖女ルチアを救う方法を説明した









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