【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

異様な見た目の魔力

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大司教様が机に置いた水晶を全員で確認する

身に覚えのある水晶…懐かしい思い出の中で見たことのある水晶…おれも皆も知っている十歳の頃魔力判定の儀で自分の魔力を視覚的に見せてもらったあの水晶だ


 でも…………なんだあれ……………?

魔力を色で表す水晶が、魔力判定って儀式の結界に対して素人のおれたちから見ても、あまりにも不可解な色をしている
 全体的に気味の悪い異様さ…遠目からみたらこれが水晶だとわからない見た目に、よく見ようと皆少し前のめりになった

しっかりと目視してやっと見ることができる、水晶の中央に今にも消えそうな…ほんの僅かに灯る光り…?それが立体的なクモの巣のように薄っすら広がっている…色的にたぶんこれは光の魔力だろう…
それを取り囲むように水晶全体が汚い黄色と言うのだろうか…?汚れた靄のようなものが水槽の苔みたいに覆っている様に見える
 色で魔力を表すはずなのに、どう見ても色ですらない靄…まるで中央の光りを隠すみたいに水晶が汚れてるんじゃないのかって錯覚してしまう…そんな気味の悪い状態が水晶に映し出されていた


「なんですのあれは…」「あんな…汚れ…穢のような魔力なんてあるのか?」「うわぁ、気持ち悪い…!掃除したくなる…」とシャルティやレオ達の呟く声が耳に入る


 掃除はちょっとわからないが、概ねおれだって同じ気持ちだ…
幼い頃、初めて魔力に触れた日…その感動とも言える自分の魔力が水晶に映し出された光景を皆覚えているから…その美しさを覚えているからこそ感じる、違和感…見たこともない気味の悪い結果に理解が追いつかない

 どういう事なんだ?ジェイス第二王子の話から聖女ルチアに桃香が侵入した可能性が高いことを考えると、どう見てもこの気味の悪い部分は桃香だと思う…だが…
おかしい、桃香は桃香でヒロインとしてこの世界に存在しているはずなのに、なんでこんな見た目なんだ?あいつは聖光魔法を使っていたのに…この気味の悪い見た目の魔力があいつの聖光魔法だって言うのか?
どう見ても人を救う魔力の見た目をしていない…これで人を救えると思わない


それに、ほんの僅かに輝く光の部分が本当の聖女ルチアだとしたら…これは手遅れなんじゃないのか?
そう、考えてしまう程、殆ど存在してない程弱々しい…糸の様な光りは見ていて不安になる



「………皆さん、これが結果です
…………………驚かれるのも無理は無いでしょう、私も始めてこの様な異様で不可解とも言える結果を見て混乱しています
 本来、魔物憑きの症状が現れた場合は全体に闇が混じ、撹拌され元の魔力と合わさり斑に見えるのが特徴…
 しかし、これはどう見ても斑でも無ければ闇でもない…普通の判定結果ですらない…
 中央の微かな光りは明らかに聖光の魔力で間違いないのに…何故こんなにも弱々しく、今にも消えそうなのか…糸の様に見える理由は?この靄に見える淀みのような状態なんなのか…私はこれまで見たことがありません…」

「……………まさかこのような結果になるなんて…私の考えは甘かったのかもしれませんね…レオンハルトやルディヴィス達から聞いていた話ではどこか魔物憑きに近い症状だと思っていました…
もしも、魔物憑きであれば浄化魔法を繰り返せば元の人格は戻る…けど、私の目にもこれは魔物憑きでは無いとはっきりとわかります
ごめんなさい…こんなはずじゃ…」



大司教様はそこまで話すと、自分の知識ではお手上げですと悲しそうな顔をされた、リジャール王妃も想像と違う結果に動揺を隠せない様子だ
多くの人の魔力判定を行ってきた大司教様でも知らない現象…
…………どうしよう…まさかこんな結果になるなんて思わなかった…
おれの考える聖女ルチアを救う方法が有効なのかも分からない、言い出して良いもの…分からない…
あの濁った目のように魔力と聖女ルチアの魔力が混ざり合ってるんじゃないのか?ルチアの身体に桃香が居座ってるって思ったのに…
何か別の力を桃香は持ってるのか…?それでルチアを乗っ取って居るのかもしれない…?



想像を超える結果に誰も何も言えず、その禍々しい水晶を皆で見つめる
場が沈黙に包まれそうになった時



「……………な、なんと悍ましいのです?…!!魔物憑き以前の問題だ!そ、それが本当に聖女の魔力だと言うのですか?大司教様…!嘘だと言ってくだい…!!

消え入りそうな光では人ひとり救えない!!なら、今まで聖女が人を救ってきたあの力はなんなんですか!?こんな…汚れた水槽のような!まるで女神様から与えられた光が食い荒らされたような見た目の魔力でどう救ったと言うのです!?
嘘だ…これが聖女なわけない!!!私の妻も聖女に治癒されているのですよ…!?!一体、何が妻を治癒したのだというのですか!?」




 学園長の放った一言で場が凍りつく
リジャール王妃の隣で眠る側妃様始め多くの貴族が重い病を既に聖女の力によって癒されてる
聖光魔法だと信じてその身を預けているのに、実はこんな得体のしれない力で治癒されていたのだとしたら…今後、身体どんな影響があるか想像もつかない…
学園長の言葉で最悪の事態が頭を過るのは当然だ





皆が動揺する中、おれだけ違う意味で学園長の言葉に反応していた

『光が食われている』
その発言が何かと繋がりそうな気がして…







……………よく考えろ、桃香はどんなクソ妹だった?どんな思考回路をしていた? 

おれのものを何でも欲しい、自分のものだと思い込んでる、自分は愛されて当然と宣う常識が理解できない性格だった
そんな存在が乙女ゲームの世界に現れたらどうする?ヒロインになりたい、全てから愛されたいと思う筈だ
現に聖女ルチアの肉体に桃香が入り込んでいる…それを踏まえてもう一度考えろ…!







汚れのように覆い尽くす魔力…
クモの巣の様に引き伸ばされて消えそうな魔力…

………………どうして引き伸ばされているように見えるんだ?






「あたしの中に誰かいるの」




…っ、わかった気がする
…………そうか、聖女ルチアが言っていたこの言葉を意味に繋がるんだ…
水晶に映し出された異質な結末…小さな光り覆う汚れた霞の意味がこれなら説明できる



どうして小さな光りはクモの巣のように広がっているのか…
それは桃香が聖女ルチアを内側から食っているから…その魔力ごと…聖女ルチアという内側から喰らい、自らがヒロインになろうとしているからだ






















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