不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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また夢を見た
フワフワした夢…口の中にまた…とろりとした何かが入ってきて…甘くてすごくいい匂いがして…もっと欲しいって強請ったら誰が喜んでるみたいな…そんな夢

あったかくて…居心地のいい夢…
それに、なんだろう…?僕にはもったいないくらい温かい何かに包まれてるみたいな…抱き締められてる…ような…


抱き締め…られてる…?




何となく大切な事を忘れてると思って、目を開けると…目の前物凄く男前な顔が僕を優しく見つめていた
……………そうだ…僕、賠償で嫁いできたんだ…
雨の中、誰からも祝福されずにルドレッド公爵家に嫁いできて…なんでかお風呂に連れてかれて、あったかいご飯食べさせて貰って…それで、おやすみってふかふかのベッドで………
全部思い出した…美味しくなるために飼われてるって現実で覚めた…大変だ…ルドレッド公爵…いや、ご、ご主人様?に挨拶もせず本気で寝て夢見てるじゃないか僕??


「……………お、おはようございます…?ご、ご…ご主人様…?」

「ぐふっ…!!!………………………ん゙ん゙っ……おはようアレン、よく眠れたか?昨日より顔色がいい気がするな
挨拶は大事だが、俺の事はご主人様ではなくフレイズと呼べ…お前は俺に嫁いできたんだろう?」

「……………あ、はい…すいません…フレイズ様…」



餌にご主人様と呼ばれた事がショックだったのか、少しむせてしまったフレイズ様は僕がちゃんとお名前を呼べたのを聞くと、いい子だって嬉しそうに頭を撫でてくれる
昨日の事もそうだけど、本当に優しく餌を育てたい方なんだろう…お名前も呼ばせてくれるなんてなんて心が広い方なんだ…
早く抱き心地良くなって、フレイズ様に食べて頂けるようにならなければ嫁いできた意味がない
ベゼル侯爵様への賠償…本当の妻ではないから結婚式も披露宴も無いのは事前に分かってたけど、初夜すらも無いのは確実に僕が骨と皮で気味の悪い身体をしているからだ
餌になれないのはわかるけど、一応サージェス伯爵家を救ってくれた恩人の慰み者にすら現状なれないのは…ちょっと悲しい



人外だと人を食らっている化け物だと昔から噂されるルドレッド公爵家…その現当主人食い公爵…フレイズ.ルドレッド様…一体どんな化け物なのだろう…?好きな肉質とかあるのかな…?
ここで生活させて頂ける間、少しでも情報収集をするのもありかもしれない



「アレン、今日は今後不便が無いように、予定通り屋敷の中を簡単に案内しよう
それが終わったらこの部屋でゆっくり休むんだ、先ずは身体の怪我を治す事に専念して欲しい」

「…………はい、わかりました」


僕が答えると、フレイズ様は何故か嬉しそうにおでこにキスをしてくれた…驚いたけど、少し嬉しいと感じるのは何故だろう?
そしてそのまま、着替えを手伝ってもらい、昨日みたいに抱っこされ僕は運ばれる…自分で普通に歩けるけど、フレイズ様的には運びたい理由でもあるのかもしれない
たぶん、逃げないようにって考えだとは思うけど…


その考えを裏付けるかのように…着替えの時、僕のいたこの部屋はただの部屋じゃないと理解する

よく見ると、使い込まれているのが何となく分かる美しい落ち着いた色合いの調度品、男二人で寝ても全く問題ない程広いベッド…
そして触れたことも無いほど手触りがいい寝具…そのどれもが明らかに高級品で…休めとと言われたこの部屋はどう考えたってフレイズ様の部屋だと言われなくても分かってしまう…逃さぬよう近くに置きたいんだと思うけど

それでも、今日ももしかしたら僕を抱き締めて眠ってくれるのかな?って考えると何故か嬉しいと感じる自分がいる
フレイズ様に抱き締められると、本当にどこか懐かしい心地良い気持ちになるから…







………………………
…………………
……………



「アレン、屋敷を案内する前に注意点がある…俺の屋敷には10名程使用人がいるが、表には出てこない者達ばかりだ、既に通達はしてある為お前に接触をしてくる事はない
だからお前からも無闇に接触しようと思うな、いいか?何かあれば俺に直接言うか家令とメイド長を頼るように
後、来客が来ても一人で部屋から出てはいけない、これから紹介するが必ず俺か家令、メイド長と行動を共にするんだ」

「……………はい、分かりました」


物理的にも精神的にも逃さない為なのか…そんな忠告を受けつつ、フレイズ様に連れられて向かった食堂には2人の人?が待っていた
1人は優しそうなメガネを掛けたおじさん、もう1人は昨日フレイズ様の隣にいたメイドのお姉さん…
フレイズ様と抱きかかえられた僕に礼をし、自己紹介をしてくれるらしい
こんなに大きなお屋敷なのに使用人が10名くらいしか居ないのも不思議だけど、表には出てこないってどう言う意味だろう?接触するなって言われてるし…何か秘密があるのだろうか…?

気にならない訳じゃないけど、僕には関係ない事なんだろう…僕は人食い公爵であるフレイズ様に食べて頂くまでこの家で飼われるだけの存在だから


「アレン様、この度はご成婚おめでとうございます
私は家令のヤジェと申します
何かご不便等あればご相談下さいませ」

「おめでとうございます、アレン様
私はメイド長を務めますアデリナと申します
アレン様の侍女に任命されました、これからよろしくお願い致します
他にもメイドはおりますが、アレン様のお世話を行うのは私が担当致しますので何かあれば私までお声がけ下さいませ」

「…………あ、はい…ご丁寧に………僕はアレンです
これから?よろしくお願い致します」



フレイズ様に抱っこされたままの挨拶って常識的にどうなのかわからないが、ヤジェさんとアデリナさんどちらも優しい顔で微笑んでくれていて…怒って無いことが分かった
僕の家にいた使用人のみんな…母様に仕えていてくれたみんなは優しかったけど、他の大勢の使用人は表情から何から冷たかったから…微笑んでくれる事が新鮮で嬉しい

そのままフレイズ様の指示で朝食が始まり、昨日と一緒でフレイズ様に給餌されながら食事を摂る姿をヤジェさんとアデリナさんに見られるという微妙に恥ずかしい体験もした
朝食もとても温かくて美味しい…


食事が終わったら屋敷を案内してくれるそうだからちょっと楽しみだ













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