不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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迷惑な来訪者 後編

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 Side フレイズ





 アデリナが応接室の扉を開けると、甘ったるい嫌な香水の臭いが漂って来る
 まだサージェス伯爵家の奴等の顔を見てすら居ないのに、すでに不快な気持ちが溢れ…急用が出来たと自室に帰りアレンを抱き締めたくなったが、それでは逃げになってしまい意味が無い
 戦場に向かう気持ちを思い出し、とりあえずは歓迎の雰囲気で入室した


「お待たせして申し訳ない、ようこそサージェス伯爵殿、そして伯爵夫人」

「おお!お待ちしておりました!突然の来訪にお時間を作っていただき感謝いたしますルドレッド公爵殿!
 アレンの父ゲルンと申します、こちらは愛しい妻のピルメ、ルドレッド公爵殿に一度ご挨拶に伺いたいと常々思っておりましたのですよ!」



 ニヤニヤと俺を値踏みするような下品な笑みを浮かべつつ、感謝の気持ちをとりあえずは伝えてくるこの男がサージェス伯爵家現当主のゲルン…隣がその妻ピルメか…
 コチラの思惑を相手に悟られぬよう、静かに席に着きヤジェとアデリナを背後に控えさせる

 派手では無いが、ここに嫁いできた時にアレンが着ていた服とは比べ物にならない程上等な衣服に身を包むサージェス伯爵夫妻…その衣服や隠しては居るようだが胸元、腕に輝く宝飾品も確認出来た
 贅沢な生活をし始めたと情報があったが…既にこれ程贅を尽くしているのか…

 さて、急な用事と言うものを聞かせてもらおう…アレンは絶対に連れてこないがな?



「そうでしたか…一度お会いすることが出来て嬉しいですよ?まぁとりあえず、何やら急用があるとの事で…早速用件を聞きましょうか?」


 人前用の笑みを浮かべ、サージェス伯爵夫妻に問いかけてみる
 威圧を掛けない用、優しく…ベゼルのような人好きする対応で接すれば問題ないだろうか?
 人喰い公爵に会いにくる物珍しい輩等、普段居ない…来るのは俺の根まで知ってる同族ぐらいなのだ
 無駄に威圧を掛けてしまい情報が引き出せないのではこの悪臭に耐え会った意味が無い


「本当にお時間を作って頂きありがとうございます…!ルドレッド公爵殿がこんなにもお優しい方だったとは…!!
 本日来たのは我が息子アレンの事についてなのです…ルドレッド公爵家へ嫁いでから1ヶ月…社交の場であの子を見る機会も見たという情報も無く…もしやルドレッド公爵殿にご迷惑をお掛けしているのでは無いかと心配になりまして…
 ここに連れてきておられませんが、やはりアレンは何か粗相をしているのでしょうか?それなら大変だ!ルドレッド公爵殿!アレンと個別にお会いする時間を本日頂きたい!父としてアレンを管理する義務が私にはあるのです!」

「わたくしからもお願いします!アレンが希望するが故、ルドレッド公爵家へ嫁がせましたが…やはり不安で…
 継母としてアレンの現在をしっかりと確認せねばなりません!アレンはアレンは何処に居るのでしょうか!?」


 俺の目を見つめ、まるで息子をよく思っていましたと言わんばかりに意味のわからない事をサージェス伯爵とその妻は言い始める
 1ヶ月前、アレンが嫁いできた時の記憶でも失っているのか?散々暴力を振るい心を壊し、賠償の生贄として捨てるように嫁がせておいて何が管理だ?アレンの何が俺に迷惑を掛けるんだ?
 人族には言葉に裏があるとベゼルや人族をもて遊ぶ事を趣味とする同族が言っていたことを思い出しつつ、サージェス伯爵夫妻の言葉を注意深く聞く

 そしてその中で「周囲からも一度会っておいた方がいいと言われた」という言葉が引っかかった
 サージェス伯爵家は元々中立的な立場の人間だった…前当主…アレンの母の代までは国の闇に足を突っ込もう等と考えない恩恵派
 しかし、今はガレッド公爵を慕う反人外派に着いているとベゼルが言っていたな…確か



……………そういう事か……………突然アレンに会いたいと言う理由はこれか?



「………………大変申し訳ない、アレンは今動けるような状態出はないのです…この場に連れてくることすらも出来ない程、弱っているんだ…」


現実は全く弱って無くむしろ元気になり始めた段階だが…探りを入れるべく、頭を抱え思い悩む姿を見せ、サージェス伯爵夫妻へそう伝える
するとゴクリと大きく唾を飲み込む音が聞こえ、待っていましたとばかりに必死な声で俺の発言に対し、机から身を乗り出して訴えてて来た


「………………そ、それは一体…一体どういう事ですか!?あ、アレンに!アレンに一体何があったのですか!?
ここへ連れてこれないと言うなら会わせてくだされ!アレンはアレンは何処にっ………!!」

「……………あ、あの子に何かあったのです!?ルドレッド公爵様!教えて下さいまし!!!」



その余りにも必死な反応に来訪の理由を確信する
なる程…そうか……こいつらはアレンが既に人喰い公爵に食われたかどうかを確認したかったんだな…?
親として子を心配するのでは無く、差し出した生贄が俺に食われた証拠が欲しかった…その為にこの屋敷に乗り込んで来た…

ガレッド公爵家と関わりがあるなら尚更俺の考えは正しいと言える…
計画でもしているスジ書き的にはこうだろう
アレンを失いその悲しみを乗り越えて失ったアレンに心配を掛けないように、元の…いや、これまでよりも贅沢な生活を送る為
更にはガレッド公爵に自分の息子が嫁ぐ名目で食われたと、人族があたかも被害に遭ったという状況を証明したい、その証拠が欲しい…そんな所だろうな?

何をしにこの屋敷に来たと警戒したが…馬鹿が訪れただけだったか…人は愚かな生き物だとわかっては居た…しかし、ここまで心が腐った者たちもいるんだなと呆れてしまう
言葉を濁しつつ、サージェス伯爵夫妻の反応をじっくり観察する、そして…



「………………すまない…アレンは……もう……………」



トドメとばかりに言葉に含みを入れ、辛そうな顔で俺が伝えると、サージェス伯爵夫妻は自分の良い方に受け取ったようで「そんなっ!!!あんまりだ!!!」と泣き崩れ暫く抱き合って泣き喚いた

ついでに今思い出したというように賠償の契約で自分たちはあの子に会えないと言い出し、「息子の最期にも会わせて貰えないのか!?賠償とは言え酷すぎる!!」等、俺は何も言ってないのに自問自答するような様子を見せ、「最後は人でなし!!!」と俺を罵倒し、十分悲劇を演出したと満足したのか泣く演技をしつつ足早に帰っていった



「旦那様…アレがアレン様のご家族様と言うのですか…?信じられない…」

「ああ、俺も信じたくは無かったが…そうみたいだ…まぁ、いずれ害虫駆除される存在…今は自由にさせておこう」


ヤジェもアデリナも酷い顔をしている
俺も酷い顔をしているだろう…反応を観察しつつ3時間ほど彼等と話をしたが、他国との会談筈よりも精神的に疲れた…
恐らく今夜辺りから俺に対して誹謗中傷の話題が貴族界に広がるだろうが…別に構わない、今だけ好きに騒いでればいい…時が来ればアレンに行った仕打ちを後悔し、その身を収穫される運命が待っている事に変わりは無いんだ…


もしもアレンを奪い返そう等という余計な動きがあったらと内心身構えていた為、若干損した気持ちだ…
迷惑な客が帰った事だし、アレンを可愛がって楽しもう…あの子はもう俺のモノ、誰にも渡さない…
アレンが俺の番になった時、全ての事実をひっくり返してやる…楽しい余興になると考えつつ、俺はアレンの元に急いだ





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