不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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夢を現実に

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 商人さんが来られた日、フレイズ様は沢山の物を僕へプレゼントだと買って下さり、それを置くためだと寝室の隣にあるお部屋を開けて下さった
 フレイズ様のお部屋と室内から行き来できる扉があって…内装も誰かの為に準備していたのかな?と思う程美しく落ち着いた家具が配置されたホコリ一つない綺麗な部屋


 この綺麗な部屋を何か作業をしたい時、いつでも使っていいと…解放してくれた
 寝る時やフレイズ様と過ごす時は戻ってくるようにって条件付き?ではあるけど…実質この部屋を僕に下さるらしい


 家畜にこんな素敵な部屋を下さるとかフレイズ様って本当にお優しい方なんだって改めて思い、申し訳なさと感謝の気持ちが溢れてくる
 家畜がこんな気持ちを持っていいかわからないけど、正直一人で寝るのは寂しいし…フレイズ様と一緒に過ごす時間が温かくて幸せだからこの部屋は夢を現実にする作業だけで使おう…
 そう思いつつ、早速明日からフレイズ様が執務中に作業を始めようと考えていた



 ……………………




 そんな訳で翌日
 フレイズ様と朝ご飯を食べた後、執務室に向かわれるのをお見送りしてから僕は新しく頂いた部屋で作業を開始した
 目を閉じ、夢の中で見た作りたいものの形を再度思い出し、今回買って頂いた紙とペンで設計図?を描いてみる
 絵も文字も書くのは久々だなって思いつつ、丁寧になるべく紙を無駄にしないように書き進めた


 今回作ってみたいのは夢の中で僕視点の誰かが使っていた野営の道具と肌に塗るクリームだ
 フレイズ様に何をプレゼントしたらいいかなって考えたら、仕事で使えるものがやっぱり実用的だと思うからこれを選んでみた
 あとヤジェやアデリナにもプレゼントを渡したい…手荒れとかたぶん気になるかな?って思うから手荒れ改善?クリームも作りたい…あ、刺繍はもっと練習してからハンカチとかをフレイズ様にプレゼントできたらいいと思う…!


 とりあえずは先ず、一つ作り完成出来るかやってみてからだ
設計図を描きつつ野営と夢の違いを考える
僕の夢の中で見える野営はたぶん戦場や魔獣討伐の現場じゃない…気軽に楽しくテントを張って、冷たいお酒?を飲みながらお肉を食べて笑ってる…そんな夢
違う世界の景色だと分かっていても屋敷で食べるような美味しそうな食事を外であんなに簡単に作ってる事は素直に凄いと思う


戦場では拠点を作るのも場所によっては魔獣の群れが襲ってくる事もあり大変で、尚且つシェフを連れていける訳じゃないから大人数の食事を野営中に作るのは中々難しい…だから基本は干し肉とかの保存食を食べると聞いたことがあるから余計に凄いと感じるんだ…

もしも、フレイズ様も戦場でそんな辛い思いをおららるなら…そう思うとやっぱり野営道具がプレゼントとして最適な気がする
温かいものも冷たいものも手軽に食べれてテントの設営も簡単…ついでに敵や魔獣にも発見されにくい細工をした野営用具を作って差し上げたい!


それに…今までの僕なら無理かもと諦めてた気がするのに…何故か作れる気がする…僕なら完成できる、昨日買って頂いた材料で確実に作れる…そんな不思議な自身に満ち溢れているんだ…

最初から大きいテントは作れないから、とりあえず持ち運びできる焚き火?を作ってみよう
この箱さえあれば薪を集める手間も、火を起こす時に出る煙も無くて便利だと思うし…




夢の中で見た光景を現実にするにはどうしたらいい?同じ材質の素材は無い…完全に同じ物は作れないけど、近しい物を作るにはどんな魔法と加工が必要になるだろう?

この世界に無いものを生み出すことは出来ない、けど代用して近しい物にする事はできる…
火の付く目に見えない空気?はどうやったら代用できる?僕の魔力とこの材料でどうしたら生み出せる?
考えれば考える程、楽しいのに頭の中が熱い…脳みそが沸騰するみたいに熱い…楽しい、でも熱い…ワクワクする…目の前がキラキラしてる…


サージェス伯爵家に居た頃はせめて清潔を保ちたいって気持ちで洗浄魔法くらいしか使って無かったから気付かなかったけど、僕…そこそこ魔力が多いみたいだ
僕が脳内で新しく考えた魔法陣を構築し、実際に使えるもの物体に書き込み発動時してみる
さらに僕の魔力を動力源に出来ないかってクズ魔石に流し込み続けても…全然魔力が減らない

むしろ満ちてくるような不思議な感じがする…!



楽しい…楽しい…何かを作るってこんなに楽しいんだ…知らなかった…!












……………………
………………
…………





「で、できた…………!
やった…!ちゃんと動く!動いてる!!よかった…僕にもちゃんと出来ることあったんだ…!」



どれくらい時間が経ったかわからない
全然減らないって思ってた魔力もスッカラカンになる頃?僕は始めて自分に出来ることをやきりった

僕の手の中にあるのは大きめの本サイズの箱
防火防熱を箱の周りに施して、中央には蓋があり、開けると鍋とかを置ける円形の場所がある、一見するとただの薄い箱に見える物体
けど、これは温かい食事を火起こし無しに食べれる立派な野営道具だ!


動力源はクズ魔石に火炎魔法を術式で流し込んだものを用意したから燃料費用的にはパン1個よりも安い
使い方も簡単!蓋を開けて円形のくぼみにクズ魔石を埋め込んでから魔法陣で囲まれた先にあるつまみを回すと火が付くって仕様
火加減は流す魔力で調節できて、少ない魔力で着火が可能!これなら戦闘で疲弊してても魔力の残滓で着火できる!
しかも煙も嫌な臭いも出ない!更には箱を伸ばしたら簡易的な焚き火にも使えるようにちょっと工夫を凝らしてみた…!

これなら敵にバレるってことも無く使える筈…!!!




完成できた事が嬉しくて嬉しくて、早くフレイズ様にお見せしたいと部屋を出ようとする…と、心配そうな?今にも泣きそうな…?嬉しそうな…?
なんて言ったらいいかわからない顔をしたフレイズ様とアデリナ…ヤジェの3人が扉の前に立ち、僕を見ていた…
ついでに今気づいたけど、辺りが真っ暗になってる…僕の持ってる箱と、開いた扉から差し込む光だけが部屋をぼんやり照らしてる状況…


え、いつからそこにいらっしゃったの…?ですか?
なんでこんなに暗いの…?




とりあえずフレイズ様に夜のご挨拶をしよう、そう思い…口を開こうとするけど……………
声を出す前にフレイズに強く抱き締められて、僕は話すことが出来なかった









アレンが作ったのは箱と石で作られたカセットコンロ擬きです!
この世界観的には見たことも無い野営道具が生まれた事になります




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