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初めてのお買い物
しおりを挟む目が覚めると、既に夜だった
薄暗い室内…窓の外には月が見える…
どれくらい時間が経ったんだろう…先程までフレイズ様が僕に癒しを求めて来られたから必死にその希望に応えようとしていたのは覚えてるけど…僕は途中で眠ってしまったのだろうか?
途中から記憶が全くない…でも、お腹が何故かぽかぽかする感じは残ってるから、きっと夢じゃない筈…
状況を確認したくても身動きが取れなくて、肌寒い筈の夜なのに温かい事にも気付く…その理由がいつもの様にフレイズ様に抱き締めてられて眠っているからだと寝ぼけた頭が理解してすごく安心した
よかった…また抱き締めて貰えてる…
フレイズ様に間違った癒しを提供して嫌われるなんて事にならなくて…本当によかった
……………どうして嫌われたくないんだろう?僕はただの餌なのに…飼育されてるだけの家畜なのに………
…………
朝になると、フレイズ様は昨日の疲れ切ったような雰囲気が夢だったかも?と思える程晴れやかな顔をされていた
寝起きから僕を膝に乗せて頭を撫でて下さって…すごく、ご機嫌な雰囲気…?
しかも、何故かヤジェもアデリナもいつもより機嫌がいい様子もあって、いつも以上に朝ごはんが豪華だった様な…気もする…
昨日、迷惑な来客というのを乗り越えて辛い仕事をこなしたって気持ちなんだろうか?
よくわからないけど、皆が楽しそうなのは見ていて嬉しい?気がする…そんな事を思ってたらフレイズ様が以外な事を仰った
「アレン、今日は商人を呼んである
昨日、本当に迷惑な来客の対応で疲れていてな…お前から素晴らしい癒しを貰ったお礼がしたいんだ
……………あと、もし可能なら毎日あの癒しを俺にくれないか…?」
「昨日の…………お礼………?あ、ありがとうございます…
えっと………毎日癒しをフレイズ様に………はい、大丈夫です…いつでも僕が提供できるなら…喜んで?」
まさかの僕が癒したいと行った犬の真似が大成功していたみたいだ…お礼まで考えてくれる程癒されて下さったのか…?だとしたら嬉しい
ヤジェさん達がご機嫌なのもフレイズ様が元気だからかな…?
毎日犬の真似を求められるならちゃんと応えよう、僕にできる仕事だと思うし…フレイズ様が嫌じゃないならいくらでもできる…と思う!
………あ、もしも本当にお礼もしてもらえるなら…昨日必死に思い出して暗記した知らない世界のモノ作りの…材料とか買ってもらえたりしないかな…?
そんな嬉しさの中、商人が来て買い物とか…初めての経験を飼育中に体験出来るなんて僕は本当に幸せ者だと思いつつ、楽しそうなフレイズ様が癒されるよういつも以上に甘えながら過ごした
そして時間は過ぎ、正午…
ルドレッド公爵家お抱えの商人だという人物が屋敷を訪れた
「お招き頂き感謝致します、フレイズ公爵殿
そしてお初お目にかかりますアレン様、わたしはルドレッド公爵領に本店を構える商家の者、名をタヤックと申します
早速ですが、本日は多様な品をご購入したいとの事で…一先ず服から宝石類に留まらず、幅広い品をお持ち致しました
ここに無いものも数日頂けましたら必ずご用意致します、じっくりとご覧下さい」
ニコニコと笑顔でフレイズ様と握手を交わし、僕に自己紹介してくれる、すごく優しそうなこのおじさんがフレイズ様の呼んだ商人らしい
自宅に商人を呼んだ時の対応なんてわからなくて固まっていると、商人のタヤックさんが目配せして使用人と思われる体格のいい男性達が綺麗に装飾された大きな箱や小さな箱を部屋に沢山運び入れ始め、蓋を開け様々な商品を見えやすく並べて準備をする?
あっという間に部屋中に様々な商品が並べられ、「では、どうぞ」とタヤックさんは僕をニコニコと見つめてくるが、どうぞとは?
どうぞって言われても正直どうしていいか分からない
声も出せずにいると、フレイズ様が「アレン、俺からのお礼だ好きな物を見て気に入った物があればいくらでも選べ、全て購入しよう」とかとんでもない事を言ってくるから余計に動揺してしまう
え、好きなだけって何?全て購入するって何?
こんな高そうな箱に入ったもの僕が買って貰っていいの…?欲しい物…確かにあったけど…
ど、どうしよう…未知の体験過ぎて言葉が出てこない…
フレイズ様とタヤックさんを交互に見比べるので精一杯だ…そもそも夢で見た奴を作りたいって思ってもその材料がどんな物で出来てるか僕、知らないじゃないか…!!
どうしよう…どうしたらいいの?そんな気持ちが頭の中を埋め尽くし、ぐるぐると色んな事を考えてしまう
何か話さないと、と思う程何も言えなくて…欲しいものを何も言わない…
そんな僕を見てフレイズ様が急に凄くいい笑顔で笑い、手短にあった服と宝石を数点手に取り僕の身体に当てて頷くと使用人?の男性に渡し始めた
え、な…何をなさってるんですか?
「アレン、こういう買い物は始めてなんだろ?なら混乱するのも無理はない
まぁ急に欲しいものを選べと言われても出てこないのもわかる、時間はあるんだゆっくり選べばいい
とりあえず俺が個人的にアレンに服や宝飾品をプレゼントしたい分を選んでるから」
「はい、商人が来るのは始めてと伺いました
ですので焦らずとも大丈夫ですアレン様、本日はルドレッド公爵殿とアレン様の為に時間をとってありますので…
フレイズ公爵殿、お美しいアレン様にはコチラの品もきっと似合うかと…是非手にとってご覧下さいませ」
「ふむ…これも素晴らしい品だな…隣国で流行っている魔蟲の糸布か?…アレンは肌が弱いからなるべく手触りが良いものが欲しいんだ、これと、あとそれも頂こう」
派手すぎない美しい刺繍の施された上着をタヤックさんが手に取り、フレイズ様に手渡すと、肌触りを確かめ僕の身体に当て…直に頷いて使用人の男の人に渡してしまう…ついでに近くにあった靴下も…
ま、まって…それも…か、買うんですか?既にシャツとかズボンとか宝飾品とか複数点買うみたいになってますよ?
家畜にそんなたくさんの衣類も宝飾品も絶対に必要ないと思うんですけど…?!今、着せてもらってる服だけでも十分なのに…
このまま僕が話さなければきっとフレイズ様はたくさん商品を買ってしまう気がした…そんなの駄目だ、いずれ食われる家畜にそんな大金使って欲しくない…!
「あ、あの…!そんなに沢山の服も宝飾品も僕にはもったいないです…欲しい物、あります…けどなんて名前の商品かわからなくて…一緒に探して貰えませんか…?」
意を決して僕はフレイズ様の衝動買い?を止める為、発言した
なんとかしてこのまま気をそらそう…!
そんな気持ちでお礼を作るのに必要な材料の見た目?近しい物を探して貰った
刺繍用の針と糸のセットはともかくとして、何に使うんだ?って物もそんな物要らないとは言われず、幾つか購入してもらえて嬉しい…
フレイズ様が最後、追加の服を僕に買ってくださろうとするのを必死に止めながら半日程、初めての商人が来てお買い物?を楽しんだ
餌の僕になんて優しいんだろう…素晴らしい体験ができて…フレイズ様には感謝しても仕切れないや…
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