短編小説 過去作品

るい

文字の大きさ
9 / 14

私は、仲良くあり続けることができない。

しおりを挟む
 
 
登場人物
 
河合 琳 (女子高生)
 
田中 圭一 (男子校生) 
 
安藤 香苗 (女子高生)
 
 
ーーーーー
 
 
「なあ、女子から見て、安藤ってどうなの?」
 
 
新学期に行われた席替えで、
隣になった田中が、何気ない感じで聞いてきた。
 
そういう質問自体が、地雷というのがわかっていないのか。
いや、わかっていないから聞いてくるのだろう。
 
 
「どうって?」
「なんつーかさ、鼻についたりしないん?」
 
 
彼が言っている安藤というのは、
クラスカースト上位にいる美人、安藤香苗のことだ。
 
カースト下位にいる私は、彼女と必要最低限の会話しかしたことがない。
 
 
「特に気にしたことはないかな」
 
 
そもそもなぜ、私にそれを聞いたのだ。
 
 
「俺の彼女がさぁ。安藤のことあんま好きじゃないらしくて」
「へぇ、あんた自身はどう思ってるの」
「えー、可愛いなぁ、美人だなぁ、って」
「それ、彼女の前で言うんじゃないよ」
 
 
ってか、お前がそう言ったから、
彼女さんは、安藤さんのことが気に入らないのでは?
 
 
「なんで?」
「じゃあ、あんたは彼女が自分以外の男をかっこいいって言っていたら、どう思うの?」
「んー。嫌かも」
「その男のこと、どう思う?」
「気に入らないかも」
「そういうことだよ」
 
 
田中は、やっと自分がしてしまったことの重大さに気づいたらしい。
 
 
「やばい、俺、謝るべき?」
「謝ったら逆効果だろ。誠心誠意尽くしなよ」
「えー、めんどくさい」
「そんなことを言われる私の方がめんどくさいよ」
 
 
なんだよー、と拗ねる男から視線を外して、外を見た。
 
 
「お前、友達いないから、俺がおしゃべりに付き合ってるのに」
「そういうところも、彼女に嫌がられるんじゃないかな?」
「大丈夫だって、お前のことは兄貴の彼女って言ってあるから」
 
 
まじかよ。
言ったのかよ。
 
こっちは、彼氏持ちなこと隠しているのに。
 
 
「ってか、お前が俺の兄貴と付き合ってるの、みんな知ってるぞ」
「なぜ?」
 
 
SNSもやってないし、
友達もいないから、話したこともないのに。
 
 
「いや、お前ら、よく目撃されてるから、その度に俺が聞かれる」
「まじで?」
 
 
田中は、呆れた顔をする。
 
 
「最近で言うと、パンケーキ屋、映画館、喫茶店、ショッピングモールだな」
 
 
なぜ、そんなことになっているのだ。
 
 
「兄貴も目立つけど、お前も目立つからなぁ」
「いや、私らオシャレさんなわけじゃないし、地味だし」
 
 
いつもシンプルでラフな服装だし、
どう見てもモブだろう。
 
目立つわけがない。
 
 
「いや、オーラがあるのよ」
「なんだそれは」
「歩き方っていうか。お前ら剣道やってるからか、姿勢が綺麗なんだよ」
 
 
そんなに目立つのか。
 
 
「で、お前に友達がいないから、全員が俺に聞きに来るってわけ」
「そう、対応ありがとう」
「うん、お前、友達作れよ」
「友達は、作るものではないよ。できるものだよ」
「それ、作る気ないだろ」
 
 
昔から、集団でいるのが苦手で、
友達を作ろうと頑張った時もあったが、
めんどくさくなって、やめた。
 
そしたら、気持ちが晴れやかになった。
 
 
友達はいないが、
剣道仲間ならいる。
 
 
ちなみに、部活には入っていない。
近所の道場に通っている。
 
 
「お前と、仲良くなりたい奴は、たくさんいるんだよ」
 
 
田中には、そう言われたけれど、
曖昧に笑っておいた。
 
 
仲良くなったとしても、
どうせ長続きしないのだ。
 
私には、それに関する胆力がない。
 
 
「君と、こうやって話すのは、君が彼氏の弟だから、だよ」
 
 
そう告げれば、彼は「わかってるよ」と小さく呟いた。
 
 
    
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...