400字以内のダメ人間ショートショート

ただの中学生がメデューサににらまれて動かなくなったんですが

　杉並区のとある住宅街で、中学生の晴太が石のように固まり、動かなくなった。
　彼の目の前には、メデューサらしき少女がいた。
　メデューサの頭でうごめく何匹ものヘビを見ると、石になるという言い伝えがある。晴太も例外ではなかったというのか。

「おい、晴太！」
　いきなり友人の翔也が、背後から晴太の肩を叩く。晴太は思わずバランスを崩して二、三歩バタバタと進み、翔也の方を振り向いた。

「お前、何やってんの？」
「だって、メデューサがいたから」
　晴太が指差した先には、まだメデューサらしき姿の少女が真顔で立っていた。それを見て翔也は呆れた顔をする。
「お前、ここは異世界じゃなくて杉並区の住宅街だぞ。あんなメデューサみたいなやつににらまれても、現実世界じゃ誰も石にならねえよ」