400字以内のダメ人間ショートショート

行動は素早く（条件つきで）

　私、早川大紀は「行動は素早く」がモットーだ。
　幼いころから学校へ走って移動していた。クラスではいつも私が、最初に教室へ着いた。

　大人になってもその習慣は変わっていない。
　電車を降りれば走って移動、家でも寝る時間になれば、どんなときもベッドへ急行する。会社でも用事があって移動するときは、なるべく走って移動していた。

　ある日私は会社で、商品開発部の同僚から呼び止められた。
「レターパックが届いたけど、開ける道具がなくてね」
「わかった。アレ取ってくる」
　そう言って私は、自分のデスクからハサミを取る。商品開発部を目指して階段を上っていたときだった。

「きゃあああああっ！」
　あと数段のところで、反対側から降りようとしてきた女性に、ハサミの先端が当たりかけた。
　彼女は書類をぶちまけながら尻もちをつく。 
　ハサミを持っている自分に気づき、血の気が引いた。急いじゃいけないときもあると、この日は深く反省した。