400字以内のダメ人間ショートショート

悲壮感ありすぎて出世できない男

　矢島俊也は、なぜかずっと平社員だ。
　これでも一流大学卒業である。
　矢島はいつも物悲しそうな顔をしていて、それが場の雰囲気に悪影響を与えている。
　オフィスだけでなく、取引先、パーティー会場、レストランなど。
　矢島の周りは異常な負のオーラが漂っていて、誰でも感づいてしまうぐらいだ。

　しかし矢島は努力熱心なようだ。
　これまで簿記1級、FP2級、そして中小企業診断士の資格も取っている。
　私は診断士としての独立をすすめたが、矢島は「自信がないから……」と消え入りそうな声で断ってしまう。

　彼は大学を卒業してから、この会社に15年務めている。
　納期はちゃんと守るし、何ならそれより2日早く仕上げることが多い。
　上司や社長はこぞって彼の仕事ぶり自体は評価している。
　それでも彼のたたずまいには、悲壮感がありすぎる。
　だから誰も彼を出世させたがらない。

　やっぱりどんな人も、見た目は大切なんだな。