ショートショート集「どうしてこうなった高校」

年貢を取り立てられている高校生

「さっさと『ねんぐ』をよこせ！」
　武士的な男が、いきなり僕に詰め寄ってきた。
「ね、ねんど……？」
「『ねんぐ』だ！　米だよ、米！」
「ああ、はい、わかりました！　こちらです」
　僕は隣の米俵を指さすと、男はそれをさっさと持っていってしまった。
　彼の背中を呆然と見つめていると、突然視界がまっくらになる。

「はい、VRゴーグルを外してください」
　ゴーグルを外すと、いつも通りの教室の風景が広がった。教壇に立つ日本史教諭は、誇らしげな様子でこう語った。 
「どうですか？　昔の時代の雰囲気を味わうことで、今の年貢が何なのかもわかったでしょう？　これがウチの高校における日本史の補習です」