クールな幼なじみが本気になったら

中小路かほ

文字の大きさ
21 / 23
文化祭で愛を誓ったら

3P

しおりを挟む
りっくんは、黙ってわたしを引っ張っていく。


「急に…どうしたの、りっくん!」


なにも語らない背中に呼びかけてみるけど、りっくんからの返事が返ってくることはない。



連れてこられたのは、体育館。


この時間、体育館では文化祭の最も人気のイベントが開催されていた。


その名も、『愛の告白大会』。


参加者が1人ずつステージに立ち、自分が想いを寄せている好きな人の名前を叫ぶ。

呼ばれた相手はステージへ上がり、参加者からの告白を受け入れるかどうかを決めるのだ。


『愛の告白大会』は文化祭の一大イベントで、ほとんどの在校生がそれを観に、この時間この体育館に集まっている。


大勢の前で告白するのには勇気がいるし、見事この場で成就することができたら、そのカップルは永遠に結ばれると言われている。


また、すでに付き合っているカップルでも、ここでありったけの愛を叫ぶこともできる。


そんなイベントの場に、どうしてわたしを…?



「りっくんって、こういうイベント好きだっけ?」

「いや、そうじゃないけど」


そうだよね。

他人の恋愛話とかあまり興味なさそうだし。


「とにかく、しずくはここで待ってて」


りっくんはそれだけ言うと、わたしをその場に残してどこかへ行ってしまった。


言われた通り、りっくんの帰りを待ちながら、参加者たちの熱い告白を遠くから眺めていた。


想いが通じて付き合う人。

その逆に、フラれてしまう人。


わたしだったら自分から告白なんかできないし、みんなの注目を浴びるあのステージに立つことすら無理だ。

名前を呼ばれたほうもステージに上がらなきゃいけないし、控えめなわたしには無縁のイベント。


――そう思っていたら。



〈な…なんと!次は飛び込み参加で、あの人が登場しますっ!!〉


司会の人が興奮しているのか、マイクを通した声のボリュームに、キーンとハウリングが起こっている。


〈この場にいる女子のみなさん!あのイケメンに告白されるのは、あなたかもしれませんよっ!?〉


司会の人が、女の子の期待を煽っている。


…ということは、今から出てくるのは男の子。


この学校でイケメンで有名で、彼女がいない人って、だれがいたっけ?


3年生の生徒会長…?

それとも、サッカー部のエースの人?


でも確か、どちらも彼女がいたような。


司会の人がああ言うからには、女の子に人気のイケメンであるには違いない。


だけど、他にイケメンって言ったら――。


りっくんの顔が頭に浮かんだ。


…そりゃりっくんはかっこいいけど、そんなはずない。

だって、りっくんがこんな人前で愛を叫ぶなんて想像できない。


それに、わたしたちのお付き合いはヒミツだから、あのステージにりっくんが立つことはない。


だからその数秒後、あまりの驚きに心臓が止まるかと思った。


だって、全校生徒のほとんどが集まるこの『愛の告白大会』のイベントのステージに――。


わたしがよく知る、黒髪の長身のイケメンが現れたんだから。


そう。

それは、紛れもなく…りっくんだった!



「キャーーーーー!!律希くんだー!」

「ウソ!?マジ!?あの律希が、告白するの!?」


体育館内の女の子たちのボルテージは最高潮に。


モデルの律希の好きな人が、この学校にいるという驚き。

そして、告白されるのは自分かも知れないという期待で、女の子たちは盛り上がっていた。


わたしは、違う意味で驚いている。


どうして、りっくんがあの場所にっ…。


なんだか悪い予感が頭を過ぎる。


もしかしてりっくん、実はわたしに愛想を尽かして、この場で違う女の子に告白するんじゃ…。

実はわたしたちって、付き合ってなかった…とか!?


いつもクールな無表情に近いりっくんからは、今なにを考えているのかは読み取れない…。


そこへ――。


「うわぁ~、すごい人気っ!さすが、一大イベントなだけあるね~」


わたしのすぐそばで声がして、振り返ってみると、そこにいたのはミュウちゃんだった。

撮影が終わったからか、文化祭を見てまわっているようだ。


ミュウちゃんがこの体育館にやってきたということは…。


ますます胸騒ぎがする。



なにも、告白する相手が同じ学校の生徒じゃないとダメだというルールはない。


他校やそれ以外であっても、『愛の告白大会』のときに相手がこの体育館にいればいいのだから。



今日のりっくんとミュウちゃんの撮影…。

とっても息がピッタリに見えた。


まるで本当の彼氏彼女みたいで。

やっぱりりっくんには、ああいうかわいくてオシャレな女の子がお似合いなんだな…。


なんて、改めて思い知らされた。


ちょっとメイクしてみて芽依に褒められたけど、わたしもミュウちゃんみたいにもっとかわいかったら…。


うらやましげに、横目でミュウちゃんのことを見ていると――。


「…あーっ!もしかして、さっきのフランクフルト屋さん!?」


ミュウちゃんがわたしを指さした。

とっさに顔を背けたけど、時すでに遅し…。


「やっぱりそうだ~!フランクフルト屋さんじゃん♪」

「は…はいっ。覚えててくれてたんですか…?」

「当たり前だよ~。だって、ひと目見てかわいいなって思ったから」

「わたしが…ですか!?」

「うんっ♪」


ミュウちゃんは、満面の笑みで頷いてくれた。

信じられないけど、とても嘘を言っているようには見えない。


「ここへは、どうしてこられたんですか…?」

「あ~、律希くんに言われたんだよね。この体育館にくるようにって」

「…えっ」


りっくんが、ミュウちゃんに…そんなことを。


それを聞いて、わたしはあからさまに肩を落としてしまった。

りっくんからミュウちゃんを誘ったということは、…決定的だ。


この大勢の集まる場で、ミュウちゃんに告白するに違いない。



〈それでは遠野律希さん。愛の告白をする相手を、このマイクに向かってどうぞっ!〉


このままじゃ、りっくんがミュウちゃんに告白する場に居合わせてしまうっ…。


そんなの…聞きたくないよ。


「あれ?帰っちゃうの?」


ステージに背中を向けて、体育館を出ていこうとするわたしをミュウちゃんが呼び止める。


「…はいっ。もういいんです」


わたしは、唇を噛みしめる。


だって、今すぐにでもここから逃げ出したい気持ちでいっぱいなんだから。


そんなわたしに、ミュウちゃんは首を傾げる。


「なんで帰っちゃうの?残された律希くんがかわいそうじゃんっ」

「そんなこと言ったって、りっくんはわたしのことなんか――」

「なに、落ち込んでるの~。だってあなたって、律希くんの彼女なんでしょっ?」


思わぬミュウちゃんの言葉に、わたしは振り返る。


どうして、ミュウちゃんがそのことを…。


という心の声が顔に出ていたのか、わたしを見てミュウちゃんがクスッと笑う。


「さっき律希くんが教えてくれたの。フランクフルトを売ってたのが、俺の彼女だって」


りっくんが…そんなことを!?


「律希くんって、恋愛とかオープンにしないタイプだと思ったからびっくりしちゃって~。『ウソだ~』って茶化してみたら、『じゃあ、俺の本気を見せてやるよ』って言われてさっ」


それで、この体育館にくるように言われたんだそう。


「だから、あなたは帰っちゃダメだよ。だって――」

〈しずく、こいよ〉


ミュウちゃんと話していたら、突然体育館内にマイクを通してわたしの名前が響いた。


その声は、りっくんのもの。


見ると、ステージの上でマイクを握るりっくんが、まっすぐにわたしを見つめていた。


そのりっくんの視線を追うように、体育館内にいた他の生徒の視線も一斉に浴びることに。


…みんながわたしを見ている。


それだけで、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまった。


「ほらほら♪愛しのカレがお呼びだよ~♪」


緊張で固まるわたしの背中をミュウちゃんが押した。


みんなの視線が痛いくらいに刺さる中、わたしは人混みをかき分けてステージへ。


「しずくって、…あの隣のクラスの?」

「あのコって、律希くんと同じ小学校ってだけの仲じゃなかったの…!?」

「…え、ヤダ。信じらんないっ。あんなコに負けたの…!?」


口々に聞こえるそんな声。


顔もよくて、頭もよくて、運動神経も抜群で、おまけにモデルの仕事をしている完璧なりっくんの相手が…まさかわたしだなんて。


周りの女の子たちは、信じられないという顔をしていた。


その途中、だれかに足を引っ掛けられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

処理中です...